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論衡 / 『論衡』死偽篇第六十三・病の言より正気の遺言に従う

初、魏武子有嬖妾、無子、武子疾、命顆曰:「必嫁是妾。」病困、則更曰:「必以是為殉。」及武子卒、顆不殉妾。人或難之、顆曰:「疾病則亂、吾從其治也。」

新字:初、魏武子有嬖妾、無子、武子疾、命顆曰:「必嫁是妾。」病困、則更曰:「必以是為殉。」及武子卒、顆不殉妾。人或難之、顆曰:「疾病則乱、吾従其治也。」

書き下し

初め、魏武子に嬖妾有り、子無し。武子疾み、顆に命じて曰く、「必ず是の妾を嫁がせよ」と。病困しむに、則ち更めて曰く、「必ず是を以て殉と為せ」と。武子卒するに及び、顆は妾を殉にせず。人或いは之を難ずれば、顆曰く、「疾病なれば則ち乱る。吾は其の治に従うなり」と。

現代語訳

以前、魏武子には寵愛する妾がいましたが、子はありませんでした。武子が病んだとき、息子の顆に命じて、「必ずこの妾を嫁がせよ」と言いました。病が重くなると、改めて、「必ずこの妾を殉死させよ」と言いました。武子が亡くなると、顆は妾を殉死させませんでした。ある人がこれを咎めると、顆は、「病が重ければ心は乱れる。私は、乱れていないときの命に従ったのだ」と答えました。

解説

魏顆の逸話は『春秋左氏伝』に見え、『論衡』は死後の霊の報いという解釈を疑う文脈でこれを引きます。その解釈は別として、顆の判断は上に立つ人の参考になります。同じ人の指示が状況や体調で食い違ったとき、どちらを本来の意思とするか。「疾病なれば則ち乱る」という言葉は、焦りや疲れの中で出した指示を、冷静なときの方針に照らして見直す発想に通じます。なお殉死は成立当時の習俗で、現代の感覚とは異なります。
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この章句が説くこと

疾病則乱遺命魏顆判断冷静殉

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