論衡 / 『論衡』物勢篇第十四・大小より得意の型が勝負を分ける
夫物之相勝、或以筋力、或以氣勢、或以巧便。小有氣勢、口足有便、則能以小而制大;大無骨力、角翼不勁、則以大而服小。鵲食蝟皮、博勞食蛇、蝟蛇不便也。蚊虻之力不如牛馬、牛馬困於蚊虻、蚊虻乃有勢也。鹿之角足以觸犬、獼猴之手足以博鼠、然而鹿制於犬、獼猴服於鼠、角爪不利也。故十年之牛、為牧豎所驅;長仞之象、為越僮所鉤、無便故也。故夫得其便也、則以小能勝大;無其便也、則以強服於羸也。
新字:夫物之相勝、或以筋力、或以気勢、或以巧便。小有気勢、口足有便、則能以小而制大;大無骨力、角翼不勁、則以大而服小。鵲食蝟皮、博労食蛇、蝟蛇不便也。蚊虻之力不如牛馬、牛馬困於蚊虻、蚊虻乃有勢也。鹿之角足以触犬、獼猴之手足以博鼠、然而鹿制於犬、獼猴服於鼠、角爪不利也。故十年之牛、為牧豎所駆;長仞之象、為越僮所鉤、無便故也。故夫得其便也、則以小能勝大;無其便也、則以強服於羸也。
書き下し
夫れ物の相い勝つは、或いは筋力を以てし、或いは気勢を以てし、或いは巧便を以てす。小なるも気勢有り、口足に便有れば、則ち能く小を以て大を制す。大なるも骨力無く、角翼勁からざれば、則ち大を以て小に服す。鵲は蝟の皮を食い、博労は蛇を食うは、蝟と蛇の便ならざればなり。蚊虻の力は牛馬に如かざるも、牛馬の蚊虻に困しむは、蚊虻に乃ち勢い有ればなり。鹿の角は以て犬を触くに足り、獼猴の手足は以て鼠を博つに足る。然れども鹿は犬に制せられ、獼猴は鼠に服するは、角爪の利ならざればなり。故に十年の牛、牧豎の駆る所と為り、長仞の象、越僮の鉤する所と為るは、便無きが故なり。故に夫れ其の便を得れば、則ち小を以て能く大に勝ち、其の便無ければ、則ち強きを以て羸きに服するなり。
現代語訳
そもそも物が互いに勝つのは、あるいは筋力により、あるいは気勢により、あるいは巧みさと都合のよさによります。小さくても気勢があり、口や足に都合のよさがあれば、小さなものが大きなものを制することができます。大きくても骨力がなく、角や翼が強くなければ、大きなものが小さなものに服します。カササギがハリネズミの皮を食べ、モズが蛇を食べるのは、ハリネズミと蛇に都合のよさがないからです。蚊やアブの力は牛や馬に及びませんが、牛や馬が蚊やアブに悩まされるのは、蚊やアブに勢いがあるからです。鹿の角は犬を突くのに十分で、猿の手足は鼠を捕えるのに十分ですが、鹿が犬に抑えられ、猿が鼠に服するのは、角や爪が利かないからです。ですから十年も生きた牛が牛飼いの子に追い立てられ、丈高い象が越の少年に鉤で操られるのは、都合のよさがないからです。つまり、その都合のよさを得れば、小さなものが大きなものに勝てますし、それがなければ、強いものが弱いものに服するのです。
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