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論語と算盤 / 理想と迷信・廓清の急務なる所以

各人各業が此域に達すれば、そこで廓清は遂げられたのである。

書き下し

各人各業がこの域に達すれば、そこで廓清は遂げられたのである。

現代語訳

一人ひとりが、それぞれの業においてこの境地に達するなら、そのときこそ廓清は成し遂げられたのである。

解説

章を締めくくる一文である。前段までで渋沢は、腐敗の原因を道徳を欠いた実業教育と富の追求に求め、攻撃と禁止だけの浄化を退け、仁義道徳と生産殖利の一致を説き、公益を旨とする基準を示した。そのうえで、廓清が成るのは法令や取り締まりによってではなく、「各人各業」が自らその域に達したときだ、と結ぶ。浄化の主体を外部の監視ではなく、一人ひとりの働き手とそれぞれの業種に置いているのが要点である。渋沢は商業会議所や銀行集会所を組織し、業界ごとの自律を重んじた。上から一律の規則で縛るより、それぞれの商売の現場で道理を守る人が増えることを本当の改革と考えた。コンプライアンスを規程の整備で終わらせず、各部署、各人の判断にまで下ろせているか、という問いにつながる。

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