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論語と算盤 / 実業と士道・功利学の弊を芟除すべし

商業道徳の骨髄にして、国家的、寧ろ世界的に直接至大の影響ある、信の威力を闡揚し、我が商業家の総てをして、信は万事の本にして、一信能く万事に敵するの力あることを理解せしめ、以て経済界の根幹を堅固にするは、緊要中の緊要事である。

書き下し

商業道徳の骨髄にして、国家的、むしろ世界的に直接至大の影響ある、信の威力を闡揚し、我が商業家のすべてをして、信は万事の本にして、一信よく万事に敵するの力あることを理解せしめ、もって経済界の根幹を堅固にするは、緊要中の緊要事である。

現代語訳

商業道徳の骨髄であり、国家的に、いやむしろ世界的に直接、最大の影響を持つもの——それが信である。この信の威力を明らかにし、我が国の商業家のすべてに、信は万事の根本であり、一つの信がよく万事に匹敵する力を持つのだと理解させ、それによって経済界の根幹を堅固にすること。これこそ緊要中の緊要事である。

解説

渋沢は商業道徳の欠如を、商人個人の資質ではなく教育の歴史に帰す。朱子学が「民は之に由らしむべし、知らしむべからず」を掲げ、林家の学がそれを濃くした結果、農工商は道徳の外に置かれ、自分でも道義に縛られる必要はないと感じるようになった、と。そこへ欧米から功利の学が入り、道義の空白のまま利の技術だけが歓迎された——薪に油を注いだ、と彼は書く。会社に尽くしているように見える人物も、動機が自分の取り分だけなら、会社を潰したほうが得な局面では潰しかねない。そこまで見たうえで処方は一字に絞られる。信である。「一信能く万事に敵する」。信用こそが経済の根幹だという、彼の生涯の結論がここにある。

この章句が説くこと

信は万事の本一信能く万事に敵す功利の学民可使由之誠実さ信

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