論語と算盤 / 立志と学問・大正維新の覚悟
青年時代は血気時代であるから、其の血気を善用して後日の幸福の基となることであれば、飽くまで之を発揮して、兎角保守に流れ、因循に陥り易い老人をして、危険を感ぜしむる位に活動して貰ひたいのである、
書き下し
青年時代は血気時代であるから、その血気を善用して後日の幸福の基となることであれば、あくまでこれを発揮して、とかく保守に流れ、因循に陥りやすい老人をして、危険を感ぜしむるくらいに活動してもらいたいのである。
現代語訳
青年時代は血気盛んな時代であるから、その血気をうまく使って、のちの幸福の土台となることであれば、あくまでそれを発揮して、とかく保守に流れ、ぐずぐずと古いやり方に陥りがちな老人たちに、危なっかしいと感じさせるくらいに活動してほしいのである。
解説
短いが、渋沢の青年論の芯がよく出た一句である。血気を抑えよとは言わない。善用せよ、と言う。条件は「後日の幸福の基となること」、つまり一時の興奮ではなく先につながる働きに使うことだ。そのうえで、老人に危険を感じさせるくらいやれ、とまで言う。これを語ったとき渋沢は七十代半ば、実業界から身を引いたばかりの、まさに「老人」の側にいた。自分たちの世代を因循に流れやすいと認め、若い者に向かって、我々を驚かせろと言っているのである。二十代で倒幕の挙兵を企て、一橋家に仕え、パリへ渡った渋沢自身の青年期を思えば、この言葉は空論ではない。上の世代が若手に遠慮を求める職場への、率直な注文として読める。
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