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驢鞍橋 / 卷中

○示同人書。夫れ佛道修行萬行ありといへとも、今時の体を見るに、行脚第一なるべし。殊に女人何たる殊勝を用ゆるとも、業障盡すへからす。捨身の心を守りて、行脚を以て業障を盡すべし。然る間、觀音を信仰し奉り、滅除煩惱、滅除業障の大誓願を發して、西國三十三所を迴り札を打つこと尤なり。踈にして菩提心發るへからす。心得のため一つ書にいたし越し申し候。一、家を出るより觀音を念し、佛を先立奉り、跡に付て行くへし。一人あるきする事大なる錯也。念じつめて行くへし。必す守護し給ふへし。一、道を行く時は、守り佛を頸にかけ、經と珠數を手に持て、經を讀みて行くへし。さなくして讀むは功德少し、必す手を離すべし。

新字:○示同人書。夫れ仏道修行万行ありといへとも、今時の体を見るに、行脚第一なるべし。殊に女人何たる殊勝を用ゆるとも、業障尽すへからす。捨身の心を守りて、行脚を以て業障を尽すべし。然る間、観音を信仰し奉り、滅除煩悩、滅除業障の大誓願を発して、西国三十三所を迴り札を打つこと尤なり。疎にして菩提心発るへからす。心得のため一つ書にいたし越し申し候。一、家を出るより観音を念し、仏を先立奉り、跡に付て行くへし。一人あるきする事大なる錯也。念じつめて行くへし。必す守護し給ふへし。一、道を行く時は、守り仏を頸にかけ、経と珠数を手に持て、経を読みて行くへし。さなくして読むは功徳少し、必す手を離すべし。

書き下し

○示同人書。夫れ仏道修行万行ありといへとも、今時の体を見るに、行脚第一なるべし。殊に女人何たる殊勝を用ゆるとも、業障尽すへからす。捨身の心を守りて、行脚を以て業障を尽すべし。然る間、観音を信仰し奉り、滅除煩悩、滅除業障の大誓願を発して、西国三十三所を迴り札を打つこと尤なり。疎にして菩提心発るへからす。心得のため一つ書にいたし越し申し候。一、家を出るより観音を念し、仏を先立奉り、跡に付て行くへし。一人あるきする事大なる錯也。念じつめて行くへし。必す守護し給ふへし。一、道を行く時は、守り仏を頸にかけ、経と珠数を手に持て、経を読みて行くへし。さなくして読むは功徳少し、必す手を離すべし。

現代語訳

同じ人に示した書。そもそも仏道修行には数多くの行があるけれども、今の時世の様子を見ると、行脚が第一であろう。とりわけ女性は、どれほど殊勝な行を用いても、業障を尽くすことはできない。捨身の心を守って、行脚によって業障を尽くしなさい。それゆえ観音を信仰し、煩悩を滅し業障を除くという大誓願を起こして、西国三十三所をめぐり札を打つのはもっともなことである。いい加減では菩提心は起こらない。心得のために箇条書きにして送る。一、家を出るときから観音を念じ、仏を先に立てて、その後について行きなさい。一人で歩いていると思うのは大きな誤りである。念じつめて行きなさい。必ず守護してくださるだろう。一、道を行くときは、守り仏を首にかけ、経と数珠を手に持って、経を読みながら行きなさい。そうせずに読むのは功徳が少ない。必ず手を離しなさい(原文のまま)。

解説

同じ尼に、西国三十三所の巡礼に出る心得を箇条書きで与えた書である。正三は、今の時代には行脚こそ第一の修行だとし、捨身の心で歩けば業障も尽くせると励ます。女性は業障が深いという当時の仏教観に立った言い方も含まれるが、要点は歩くこと自体を修行に変える工夫にある。仏を先に立ててその後について行き、一人で歩いていると思うなと説く。日々の通勤や移動の時間も、心の持ち方しだいで自分を鍛える場になりうる。

この章句が説くこと

行脚巡礼観音捨身修行業障

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