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礼記 / 郷飲酒義

鄉飲酒之禮,六十者坐,五十者立侍,以聽政役,所以明尊長也。六十者三豆,七十者四豆,八十者五豆,九十者六豆,所以明養老也。民知尊長養老,而後乃能入孝弟。民入孝弟,出尊長養老,而後成敎,成敎而後國可安也。君子之所謂孝者,非家至而日見之也,合諸鄉射,敎之鄉飲酒之禮,而孝弟之行立矣。

新字:郷飲酒之礼,六十者坐,五十者立侍,以聴政役,所以明尊長也。六十者三豆,七十者四豆,八十者五豆,九十者六豆,所以明養老也。民知尊長養老,而後乃能入孝弟。民入孝弟,出尊長養老,而後成教,成教而後国可安也。君子之所謂孝者,非家至而日見之也,合諸郷射,教之郷飲酒之礼,而孝弟之行立矣。

書き下し

郷飲酒の礼は、六十の者は坐し、五十の者は立ちて侍し、以て政役を聴くは、長を尊ぶことを明らかにする所以なり。六十の者は三豆(さんとう)、七十の者は四豆、八十の者は五豆、九十の者は六豆なるは、老を養うことを明らかにする所以なり。民、長を尊び老を養うことを知りて、而る後に乃ち能く入りて孝弟なり。民、入りて孝弟、出でて長を尊び老を養い、而る後に教え成る。教え成りて而る後に国安んずべきなり。君子の所謂(いわゆる)孝なる者は、家ごとに至りて日々にこれを見るに非ざるなり。諸(これ)を郷射に合わせ、これに郷飲酒の礼を教えて、孝弟の行い立つ。

現代語訳

郷飲酒の礼では、六十歳の者は座り、五十歳の者は立ってそばに控え、指図や役目を承る。これは年長者を尊ぶことを明らかにするためである。六十歳の者には豆(とう、料理を盛る高坏)を三つ、七十歳の者には四つ、八十歳の者には五つ、九十歳の者には六つ供する。これは老人を養うことを明らかにするためである。民が年長者を尊び老人を養うことを知ってこそ、家に入っては孝行と兄弟の和順を尽くすことができる。民が家に入っては孝弟を尽くし、外に出ては年長者を尊び老人を養うようになってこそ、教化が成り立つ。教化が成り立ってこそ、国は安らかになる。君子のいう孝とは、一軒一軒の家を訪ねて毎日見て回ることではない。郷射の礼の場に人々を集め、郷飲酒の礼を教えることで、孝弟の行いが立つのである。

解説

郷飲酒の礼が年齢による序列を具体的に示す段である。六十歳以上は座り五十歳は立って控え、料理の豆の数も六十で三つ、九十で六つと年齢に応じて増える。尊長と養老を、座り方と皿の数という目に見える形で示しているのである。そこから、民が外で年長者を尊ぶことを学べば家で孝弟を尽くし、それが教化の完成となり国の安定につながると論じる。最後の一文は重要で、君子の教える孝とは一軒ずつ訪ね歩いて説くことではなく、人々が集まる郷の礼の場で年長者を敬う姿を示すことで自然に広がるものだとする。個人への説教より、場の仕組みで人を育てるという発想である。年長者の座る席、料理の順番といった場の設計が、言葉よりも雄弁に価値観を伝えるという点は、職場の文化づくりにもそのまま当てはまる。

この章句が説くこと

礼記郷飲酒義養老孝弟教化

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