礼記 / 祭義
「古者天子、諸侯,必有公桑、蠶室,近川而為之。築宮仞有三尺,棘牆而外閉之。及大昕之朝,君皮弁素積,卜三宮之夫人、世婦之吉者,使入蠶於蠶室,奉種浴於川;桑於公桑,風戾以食之。歲既殫矣,世婦卒蠶,奉繭以示於君,遂獻繭於夫人。夫人曰:『此所以為君服與?』遂副褘而受之,因少牢以禮之。古之獻繭者,其率用此與?及良日,夫人繅,三盆手,遂布於三宮夫人世婦之吉者,使繅。遂朱綠之,玄黃之,以為黼黻文章。服既成,君服以祀先王先公,敬之至也。」
新字:「古者天子、諸侯,必有公桑、蠶室,近川而為之。築宮仞有三尺,棘牆而外閉之。及大昕之朝,君皮弁素積,卜三宮之夫人、世婦之吉者,使入蠶於蠶室,奉種浴於川;桑於公桑,風戻以食之。歳既殫矣,世婦卒蠶,奉繭以示於君,遂献繭於夫人。夫人曰:『此所以為君服与?』遂副褘而受之,因少牢以礼之。古之献繭者,其率用此与?及良日,夫人繅,三盆手,遂布於三宮夫人世婦之吉者,使繅。遂朱緑之,玄黄之,以為黼黻文章。服既成,君服以祀先王先公,敬之至也。」
書き下し
「古者天子・諸侯は、必ず公桑・蚕室有り、川に近くしてこれを為る。宮を築くこと仞有三尺、棘牆(きょくしょう)にして外よりこれを閉ず。大昕(たいきん)の朝に及び、君は皮弁素積し、三宮の夫人・世婦の吉なる者を卜し、入りて蚕室に蚕せしめ、種を奉じて川に浴せしむ。公桑に桑つみ、風戻(ふうれい)して以てこれに食わしむ。歳既に殫(つ)くれば、世婦蚕を卒え、繭を奉じて以て君に示し、遂に繭を夫人に献ず。夫人曰く、『此れ君の服を為る所以か』と。遂に副褘(ふくき)してこれを受け、少牢に因りて以てこれを礼す。古の繭を献ずる者は、その率(おおむ)ね此れを用いしか。良日に及び、夫人繰(そう)し、三たび手を盆にし、遂に三宮の夫人・世婦の吉なる者に布(し)き、繰らしむ。遂にこれを朱緑にし、これを玄黄にし、以て黼黻文章(ほふつぶんしょう)を為る。服既に成れば、君は服して以て先王・先公を祀る。敬の至りなり」と。
現代語訳
(孔子の答えの続き)「昔、天子や諸侯は必ず公の桑畑と蚕室を持ち、川の近くにこれを設けた。宮(養蚕の建物)を築き、その囲いの高さは一仞三尺、いばらを植えた塀で外から閉ざした。三月の朔日(大昕)の朝になると、君は皮弁に素積の服を着て、三つの宮の夫人・世婦のうち卜って吉と出た者を選び、蚕室に入って蚕を飼わせ、蚕の種(卵)を捧げ持って川で浴させた。公の桑畑で桑の葉を摘み、風に当てて乾かしてから蚕に食べさせた。春の季節が尽きると、世婦たちは養蚕を終え、繭を捧げ持って君に示し、それから繭を夫人に献じた。夫人は『これで君のお召し物を作るのでしょうか』と言い、首飾りをつけ褘衣(きい、夫人の最上の礼服)を着てこれを受け、少牢(羊と豚)の供応で世婦たちをねぎらった。昔、繭を献じた人々は、おおむねこのようにしたのであろう。吉日になると、夫人は自ら繭から糸を繰り、三度手を盆の湯に浸して糸を引き、それから三つの宮の夫人・世婦のうち吉と出た者たちに配って糸を繰らせた。その糸を朱や緑に染め、黒や黄に染めて、礼服の刺繍の模様(黼黻文章)を作った。礼服ができあがると、君はそれを着て先王・先公を祭った。敬いの極みである」。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『呻吟語』内篇・談道・敬は人を擇ばず、事を擇ばず、時を擇ばず或ひと敬の道を問ふ。曰く、「外面整齊嚴肅、内面齊莊中正なるは、是れ靜時涵養底の敬なり。書を讀めば則ち心讀む所に在り、事を治むれば則ち心治むる所に在るは、是れ主一無適底の敬なり。門を出づれば大賓を見るがごとく、民を使ふには大祭を承くるがごとくなるは、是れ隨事小心底の敬なり」と。或ひと曰く、「若し笑談歌詠、宴息造次の時ならば、恐らくは是くのごとくんば則ち矜持して泰然ならざらん」と。曰く、「敬は端嚴を以て體と為し、虛活を以て用と為し、正を離れざるを以て主と為す。齋日に衣冠して寢ぬるは、祭る所の者を夢寐すればなり。齋せざるの寢は、則ち衣を解き冕を脫ぐ。未だ衣冕を釋きて敬を持する者有らず。然り而して心邪僻に流れず、事道義に詭らざれば、則ち其の敬為るを害せず。君若し專ら端嚴の上に去きて敬を求めば、則ち鋤を荷ひ畚を負ひ、轡を執り車を御し、鄙事賤役、古の聖賢も皆之を為せり。豈に能く日日手容恭しく足容重からんや。又孔子の肱を曲げ掌を指し、及び居るに容らざる、點の沂に浴するがごときも、何ぞ其の敬為るを害せんや。大端心と正と依り、事と道と合へば、端嚴に拘拘たらずと雖も、其の敬為るを害せず。苟くも心千里に游び、意百欲を逐ひて、此の身は卻つて兀然として端嚴に此に在らば、這れは敬なりや否や。譬へば謹んで避け深く藏れ、燭を秉り珮を鳴らし、緩やかに步み輕く聲するは、女教の『内則』原と是くのごとし。貞信を養ふ所以なり。若し饁婦汲妻及び顛沛奔走の際に當たらば、自ら是れ迴避し得ず。然り而して貞信の守は深藏謹避する者と同じ。是れ何ぞ其の女教為るを害せんや。是の故に敬は人を擇ばず、敬は事を擇ばず、敬は時を擇ばず、敬は地を擇ばず。只だ個の心と正と依り、事と道と合ふを要するのみ」と。
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『呻吟語』内篇・修身・苟を反して敬と為す敬なる者は、苟せざるの謂ひなり。故に苟を反して敬と為す。
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『呻吟語』内篇・存心・只だ敬と怠の兩字に系る天下國家の存亡、身の生死は、只だ「敬」「怠」の兩字に系る。敬すれば則ち慎み、慎めば則ち百務脩まり舉がる。怠れば則ち苟くもし、苟くもすれば則ち萬事隳れ頹る。天子より以て庶人に至るまで、此くのごとくならざるは莫し。此れ千古の聖賢の兢兢たる所にして、世人の必ず由る所なり。
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尚書・太甲下惟れ天は親しむこと無く、克く敬する惟れ親しむ。民は常に懐くこと罔く、仁有るに懐く。
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『呻吟語』内篇・談道・敬肆は死生の關敬肆は死生の關なり。
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『呻吟語』内篇・修身・勤慎は敬の謂ひなり甚麼か此の字を降伏し得ん。曰く勤慎なり。勤慎なる者は、敬の謂ひなり。
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