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礼記 / 楽記

土敝則草木不長,水煩則魚鱉不大,氣衰則生物不遂,世亂則禮慝而樂淫。是故其聲哀而不莊,樂而不安;慢易以犯節,流湎以忘本。廣則容奸,狹則思欲;感條暢之氣而滅平和之德。是以君子賤之也。

新字:土敝則草木不長,水煩則魚鱉不大,気衰則生物不遂,世乱則礼慝而楽淫。是故其声哀而不荘,楽而不安;慢易以犯節,流湎以忘本。広則容奸,狭則思欲;感条暢之気而滅平和之徳。是以君子賤之也。

書き下し

土敝(つか)るれば則ち草木長ぜず、水煩(わずら)わしければ則ち魚鱉(ぎょべつ)大ならず、気衰うれば則ち生物遂げず、世乱るれば則ち礼慝(とく)して楽淫す。是の故に其の声は哀しくして荘ならず、楽しくして安からず、慢易にして以て節を犯し、流湎(りゅうめん)して以て本を忘る。広ければ則ち姦を容れ、狭ければ則ち欲を思う。条暢の気を感ぜしめて、平和の徳を滅ぼす。是を以て君子之を賤しむなり。

現代語訳

土地がやせれば草木は育たず、水がしきりにかき乱されれば魚や鱉(べつ、すっぽん)は大きくならず、気が衰えれば生き物は育ちきらず、世が乱れれば礼は汚れ、楽はみだらになる。それゆえ乱世の音楽は、悲しげでありながらおごそかさがなく、楽しげでありながら落ち着きがなく、だらしなく節度を犯し、流されて溺れ根本を忘れる。調子が緩やかすぎれば邪悪を受け入れ、せわしなすぎれば欲望をかき立てる。人の伸びやかな善い気を乱して、平和の徳を滅ぼしてしまう。だから君子はそうした音楽を賤しむのである。

解説

環境が荒れれば生き物が育たないように、世が乱れれば礼楽も荒むことを述べた段である。やせた土、かき乱された水、衰えた気という自然のたとえから入り、乱世の礼は汚れ、楽はみだらになるとする。鄭玄は「慝」を穢れの意、「広」を声が緩やかすぎること、「狭」を声が急すぎることと注し、そうした音楽は人の伸びやかな善い気を動かしてその居場所を失わせると説明する。悲しいのに荘重さがなく、楽しいのに落ち着きがない音楽は、感情を整えるどころか乱してしまう。ここで言われているのは、音楽が悪いから世が乱れるという単純な話ではなく、荒れた土壌からは荒れた文化しか生まれず、それがさらに人の心を荒らすという循環である。土を肥やし水を静めるように、まず環境を整えることが先に来る。落ち着いた人を育てたいなら、落ち着ける場をつくることから始めねばならない。職場や家庭の空気づくりにも、同じことがいえる。

この章句が説くこと

礼記楽記乱世環境淫楽

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