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礼記 / 楽記

夫民有血氣心知之性,而無哀樂喜怒之常,應感起物而動,然後心術形焉。是故志微噍殺之音作,而民思憂。嘽諧慢易、繁文簡節之音作,而民康樂。粗厲猛起、奮末廣賁之音作,而民剛毅。廉直、勁正、莊誠之音作,而民肅敬。寬裕肉好、順成和動之音作,而民慈愛。流辟邪散、狄成滌濫之音作,而民淫亂。

新字:夫民有血気心知之性,而無哀楽喜怒之常,応感起物而動,然後心術形焉。是故志微噍殺之音作,而民思憂。嘽諧慢易、繁文簡節之音作,而民康楽。粗厲猛起、奮末広賁之音作,而民剛毅。廉直、勁正、荘誠之音作,而民粛敬。寛裕肉好、順成和動之音作,而民慈愛。流辟邪散、狄成滌濫之音作,而民淫乱。

書き下し

夫れ民は血気心知の性有りて、哀楽喜怒の常無し。感に応じて物に起こりて動き、然る後に心術形る。是の故に志微にして噍殺(しょうさい)の音作(おこ)りて、民思い憂う。嘽諧(たんかい)慢易、繁文簡節の音作りて、民康楽す。粗厲猛起、奮末広賁(こうふん)の音作りて、民剛毅なり。廉直勁正、荘誠の音作りて、民粛敬す。寛裕肉好(にくこう)、順成和動の音作りて、民慈愛す。流辟(りゅうへき)邪散、狄成(てきせい)滌濫(できらん)の音作りて、民淫乱す。

現代語訳

そもそも民には血気と心知という生まれつきの性はあるが、哀しみ・楽しみ・喜び・怒りに一定の常はない。外の物事に感じ、それに応じて心が動き、そうしてはじめて心の向かう道筋が現れる。それゆえ、細くかすかで、せき込むように衰えていく音が起これば、民は思い沈み憂える。ゆったりと和らぎ、のびやかで、飾りが多く節の簡単な音が起これば、民は安らぎ楽しむ。荒々しく激しく、勢いよく起こり、手足を奮い立たせ怒気のみなぎる音が起これば、民は剛く猛々しくなる。角があってまっすぐで、力強く正しく、おごそかで誠実な音が起これば、民は引き締まって敬う。ゆったりと豊かで、潤いがあってよく、滑らかに調い和やかに動く音が起これば、民は慈しみ愛する。流れ偏り、よこしまで散漫で、せわしなく往来し、節度を欠いてあふれる音が起これば、民はみだらに乱れる。

解説

音楽の性質と、それが民の心に及ぼす作用を六つに分けて描いた段である。冒頭で、民は血気と心知をもつが、喜怒哀楽には常がなく、外に感じて初めて心の向かう道が現れるとする。鄭玄は「心術」の術を心の由る所と注する。続く六種の音と民の反応の対応は、細やかな観察に基づいている。鄭玄は「志微」を意の細やかなこととし、呉の公子季札が『鄭風』を聞いて、細かすぎて民が堪えられまいと言った話を引く。「奮末」は四肢を動かすこと、「広賁」の賁は憤で怒気が満ちること、「肉好」の肉は豊かさ、「狄滌」はせわしく往来するさまと説明し、最後に、これはみな民の心に常がないことの表れだと結ぶ。つまり、どんな音に囲まれるかで人の気分は変わる。聞く音楽で気分が変わるのは誰もが経験することで、店や職場の音環境を整えることも、この段の延長にあるといえる。

この章句が説くこと

礼記楽記心術音楽感情

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