導師導古典を学びたいすべての人に

礼記 / 内則

后王命冢宰,降德於眾兆民。子事父母,雞初鳴,咸盥漱,櫛縰笄總,拂髦冠緌纓,端韠紳,搢笏。左右佩用,左佩紛帨、刀、礪、小觿、金燧,右佩玦、捍、管、遰、大觿、木燧,偪,屨著綦。婦事舅姑,如事父母。雞初鳴,咸盥漱,櫛縰,笄總,衣紳。左佩紛帨、刀、礪、小觿、金燧,右佩箴、管、線、纊,施縏袠,大觿、木燧、衿纓,綦屨。以適父母舅姑之所,及所,下氣怡聲,問衣燠寒,疾痛苛癢,而敬抑搔之。出入,則或先或後,而敬扶持之。進盥,少者奉盤,長者奉水,請沃盥,盥卒授巾。問所欲而敬進之,柔色以溫之,饘酏、酒醴、芼羹、菽麥、蕡稻、黍粱、秫唯所欲,棗、栗、飴、蜜以甘之,堇、荁、枌、榆、免、薧、滫、瀡以滑之,脂膏以膏之,父母舅姑必嘗之而後退。男女未冠笄者,雞初鳴,咸盥漱,櫛縰,拂髦總角,衿纓,皆佩容臭,昧爽而朝,問何食飲矣。若已食則退,若未食則佐長者視具。凡內外,雞初鳴,咸盥漱,衣服,斂枕簟,灑掃室堂及庭,布席,各從其事。孺子蚤寢晏起,唯所欲,食無時。由命士以上,父子皆異宮。

新字:后王命冢宰,降徳於衆兆民。子事父母,鶏初鳴,咸盥漱,櫛縰笄総,払髦冠緌纓,端韠紳,搢笏。左右佩用,左佩紛帨、刀、礪、小觿、金燧,右佩玦、捍、管、遰、大觿、木燧,偪,屨著綦。婦事舅姑,如事父母。鶏初鳴,咸盥漱,櫛縰,笄総,衣紳。左佩紛帨、刀、礪、小觿、金燧,右佩箴、管、線、纊,施縏袠,大觿、木燧、衿纓,綦屨。以適父母舅姑之所,及所,下気怡声,問衣燠寒,疾痛苛癢,而敬抑搔之。出入,則或先或後,而敬扶持之。進盥,少者奉盤,長者奉水,請沃盥,盥卒授巾。問所欲而敬進之,柔色以温之,饘酏、酒醴、芼羹、菽麦、蕡稲、黍粱、秫唯所欲,棗、栗、飴、蜜以甘之,堇、荁、枌、榆、免、薧、滫、瀡以滑之,脂膏以膏之,父母舅姑必嘗之而後退。男女未冠笄者,鶏初鳴,咸盥漱,櫛縰,払髦総角,衿纓,皆佩容臭,昧爽而朝,問何食飲矣。若已食則退,若未食則佐長者視具。凡内外,鶏初鳴,咸盥漱,衣服,斂枕簟,灑掃室堂及庭,布席,各従其事。孺子蚤寝晏起,唯所欲,食無時。由命士以上,父子皆異宮。

書き下し

後王(こうおう)、冢宰(ちょうさい)に命じて、徳を衆兆民に降(くだ)さしむ。子の父母に事うるには、鶏初めて鳴けば、咸(み)な盥漱(かんそう)し、櫛(くしけず)り縰(し)し笄(けい)し総(そう)し、髦(ぼう)を払い、冠して緌纓(ずいえい)し、端韠(たんひつ)紳(しん)して、笏(こつ)を搢(はさ)む。左右に用を佩(お)ぶ。左には紛帨(ふんぜい)・刀・礪(れい)・小觿(しょうけい)・金燧を佩び、右には玦(けつ)・捍(かん)・管・遰(てい)・大觿・木燧を佩び、偪(ひょく)し、屨(くつ)には綦(き)を著く。婦の舅姑(きゅうこ)に事うるは、父母に事うるが如し。鶏初めて鳴けば、咸な盥漱し、櫛り縰し、笄し総し、衣して紳す。左には紛帨・刀・礪・小觿・金燧を佩び、右には箴(しん)・管・線・纊(こう)を佩び、縏帙(はんちつ)を施し、大觿・木燧、衿纓(きんえい)、綦屨す。以て父母舅姑の所に適く。所に及べば、気を下し声を怡(やわら)げ、衣の燠寒(いくかん)、疾痛苛癢(しつつうかよう)を問いて、敬してこれを抑搔(よくそう)す。出入には、則ち或いは先んじ或いは後れて、敬してこれを扶持す。盥を進むるには、少者は槃を奉じ、長者は水を奉じ、沃盥(よくかん)せんことを請い、盥卒(お)われば巾を授く。欲する所を問いて敬してこれを進め、色を柔らげて以てこれを温む。饘酏(せんい)・酒醴・芼羹(ぼうこう)・菽麦・蕡稲(ふんとう)・黍粱・秫(じゅつ)は唯欲する所のままにし、棗・栗・飴・蜜は以てこれを甘くし、菫(きん)・荁(かん)・枌(ふん)・楡・免(ぶん)・薧(こう)・滫瀡(しゅうずい)は以てこれを滑らかにし、脂膏は以てこれを膏(うるお)す。父母舅姑必ずこれを嘗めて後に退く。男女の未だ冠笄(かんけい)せざる者は、鶏初めて鳴けば、咸な盥漱し、櫛り縰し、髦を払い総角(そうかく)し、衿纓し、皆容臭を佩び、昧爽(まいそう)にして朝し、何をか食飲せんと問う。若し已に食すれば則ち退き、若し未だ食せざれば則ち長者を佐けて具を視る。凡そ内外、鶏初めて鳴けば、咸な盥漱し、衣服し、枕簟(ちんてん)を斂め、室堂及び庭を灑掃(さいそう)し、席を布き、各々其の事に従う。孺子は蚤(はや)く寝ね晏(おそ)く起き、唯欲する所のままにし、食に時無し。命士由り以上は、父子皆宮を異にす。

現代語訳

君王は冢宰(宰相)に命じて、徳の教えを万民に広めさせた。子が父母に仕えるには、鶏が初めて鳴くとみな手を洗い口をすすぎ、髪をくしけずって縰(髪包みの絹)で包み、笄(かんざし)を挿して総(髪を束ねる紐)で束ね、髦(子どもの頃の前髪を模した飾り)の塵を払い、冠をかぶって緌(冠紐の垂れ)と纓(冠紐)を結び、玄端(黒い常服)を着て韠(膝掛け)をつけ、紳(大帯)を締めて笏を挿む。左右の帯には日用の品を下げる。左には紛帨(手ふき)、小刀、砥石、小觿(小さな紐解き)、金燧(日光から火を取る金属の鏡)を下げ、右には玦(弓を引くための指輪)、捍(弓の弦を受ける籠手)、管(筆入れ)、遰(刀の鞘)、大觿(大きな紐解き)、木燧(木をこすって火を起こす道具)を下げる。脚絆を巻き、履物の紐を結ぶ。嫁が舅姑に仕えるのは、自分の父母に仕えるのと同じである。鶏が初めて鳴くとみな手を洗い口をすすぎ、髪をくしけずって包み、笄を挿して束ね、衣を着て帯を締める。左には紛帨、小刀、砥石、小觿、金燧を下げ、右には針、筆入れ、糸、綿を下げ、それらを入れる小袋を付け、大觿と木燧を下げ、衿纓(香袋の紐)を結び、履物の紐を結ぶ。こうして父母や舅姑のもとへ行く。そこに着いたら、息をひそめ声を和らげ、着物が暑すぎないか寒すぎないか、どこか痛むところやかゆいところはないかを尋ね、うやうやしく押さえたり掻いたりしてさしあげる。出入りのときは、前に立ったり後ろについたりして、うやうやしく支え助ける。手洗いの水を差し上げるときは、年少の者が水受けの盤を捧げ持ち、年長の者が水を捧げ持ち、注ぎかけさせてくださいと願い、洗い終わると手ふきを渡す。何を召し上がりたいかを尋ねて、うやうやしく差し上げ、顔色を和らげて温かく仕える。粥、酒や甘酒、野菜入りの吸い物、豆や麦、麻の実や稲、黍や粱、もち粟など、望むままのものを差し上げ、棗、栗、飴、蜂蜜で甘みを添え、菫、荁、楡や白楡の若葉、新しいものや乾いたものの野草、米のとぎ汁などで口当たりを滑らかにし、脂で潤いを加える。父母や舅姑が必ずそれを口にされてから退く。まだ冠や笄の儀を終えていない男女の子どもは、鶏が初めて鳴くとみな手を洗い口をすすぎ、髪をくしけずって包み、髦の塵を払って総角(あげまき)に結い、香袋の紐を結び、みな匂い袋を下げて、夜明け前に父母のもとへ朝の挨拶に行き、何を召し上がりますかと尋ねる。もう食べ終えていれば退き、まだであれば年長者を手伝って食膳の支度を見る。およそ家の内と外で働く者は、鶏が初めて鳴くとみな手を洗い口をすすぎ、衣服を着て、枕や敷物を片づけ、部屋と堂と庭を水を撒いて掃き清め、座席を敷き、それぞれ自分の仕事にかかる。幼い子どもは早く寝て遅く起き、望むままにさせ、食事の時間も定めない。命士(君から命を受けた士)以上の家では、父と子はそれぞれ別の建物に住む。

解説

内則篇の冒頭で、家の中の礼、とくに子と嫁が父母・舅姑に仕える朝の作法を細かく描く。鶏鳴とともに起きて身支度を整え、帯には刀や砥石、火を起こす道具、針や糸といった日用の品を下げて、いつでも用を足せるようにする。親のもとでは声を和らげ、暑さ寒さや痛みかゆみを尋ね、手洗いの水を差し出し、食べたいものを尋ねて出す。孝が抽象的な徳目ではなく、朝の一つひとつの動作として書かれているのがこの篇の特色である。論語為政篇で子夏が孝を問うたとき、孔子は「色難し」と答えた。ここでも「色を柔らげて以てこれを温む」と、表情の和らぎが求められている。子どもは寝起きも食事も自由にさせるという一文には、年齢に応じて礼を課す配慮が見える。介護や子育てのように、相手の体調を気づかう日々の細かな手間の中に、敬と愛が形をとることを教えている。

この章句が説くこと

礼記内則孝家族朝の礼

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る