史記 / 五帝本紀
堯乃賜舜絺衣與琴,爲筑倉廩,予牛羊。瞽叟尚復欲殺之,使舜上塗廩,瞽叟從下縱火焚廩。舜乃以兩笠自扞而下,去,得不死。後瞽叟又使舜穿井,舜穿井爲匿空旁出。舜既入深,瞽叟與象共下土實井,舜從匿空出,去。瞽叟、象喜,以舜爲已死。
新字:堯乃賜舜絺衣与琴,為筑倉廩,予牛羊。瞽叟尚復欲殺之,使舜上塗廩,瞽叟従下縦火焚廩。舜乃以両笠自扞而下,去,得不死。後瞽叟又使舜穿井,舜穿井為匿空旁出。舜既入深,瞽叟与象共下土実井,舜従匿空出,去。瞽叟、象喜,以舜為已死。
書き下し
堯乃ち舜に絺衣と琴とを賜ひ、為に倉廩を築き、牛羊を予ふ。瞽叟尚ほ復た之を殺さんと欲し、舜をして上りて廩を塗らしめ、瞽叟下より火を縦ちて廩を焚く。舜乃ち両笠を以て自ら扞ぎて下り、去りて、死せざるを得たり。後に瞽叟又舜をして井を穿たしむ。舜井を穿ちて匿空を為り旁らに出づ。舜既に入りて深きに、瞽叟・象共に土を下して井を実む。舜匿空より出でて、去る。瞽叟・象喜び、舜を以て已に死せりと為す。
現代語訳
堯はそこで舜に細い葛布の衣と琴を与え、舜のために倉を築き、牛や羊を与えた。それでも瞽叟はなおも舜を殺そうとし、舜を倉の屋根に上らせて壁土を塗らせ、下から火を放って倉を焼いた。舜は二つの笠で身を守りながら飛び降りて逃げ去り、死なずにすんだ。その後、瞽叟はまた舜に井戸を掘らせた。舜は井戸を掘りながら、横へ抜ける隠し穴を作っておいた。舜が深く入ったところで、瞽叟と象は一緒に土を投げ入れて井戸を埋めた。舜は隠し穴から抜け出して去った。瞽叟と象は喜び、舜はもう死んだものと思った。
解説
舜が父の瞽叟と異母弟の象に二度も殺されかける有名な場面です。堯から衣や琴、倉や家畜を与えられ、舜が婿として重んじられるようになっても、父と弟の殺意はやみませんでした。倉の屋根に上らせて火を放つ、井戸を掘らせて土で埋める。舜は笠を翼のように使って飛び降り、また前もって横穴を掘っておいて抜け出します。ここで舜は父に逆らわず、言われた仕事は引き受けながら、身を守る備えだけは怠りませんでした。この後、舜は何事もなかったように父に仕え、弟を慈しみ続けます。理不尽な相手に対して正面から争うのでもなく、ただ耐えて命を落とすのでもない。務めは果たしつつ、逃げ道を用意しておく。職場で理不尽な上司や難しい関係者と付き合わざるを得ないとき、舜の身の処し方は一つの手本になります。関係を壊さないことと、自分を守ることは両立できるのです。
この章句が説くこと
孝忍耐逆境の孝皆欲殺舜危機管理肉親の悪意に恨まず
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