和俗童子訓 / 巻之二・総論下
一父母の恩は、高く厚きこと天地に同じ。父母なければ我が身なし。其恩報じ難し。孝を勤めて、せめて萬一の恩を報ゆべし。身の力、財の力を盡すべし、惜むべからず。是父母に事へて、其力を盡すなり。父母死して後は、孝を盡す事成り難きを、兼て能く考へて、後悔なからん事を思ふべし。
新字:一父母の恩は、高く厚きこと天地に同じ。父母なければ我が身なし。其恩報じ難し。孝を勤めて、せめて万一の恩を報ゆべし。身の力、財の力を尽すべし、惜むべからず。是父母に事へて、其力を尽すなり。父母死して後は、孝を尽す事成り難きを、兼て能く考へて、後悔なからん事を思ふべし。
書き下し
一父母の恩は、高く厚きこと天地に同じ。父母なければ我が身なし。其恩報じ難し。孝を勤めて、せめて万一の恩を報ゆべし。身の力、財の力を尽すべし、惜むべからず。是父母に事へて、其力を尽すなり。父母死して後は、孝を尽す事成り難きを、兼て能く考へて、後悔なからん事を思ふべし。
現代語訳
父母の恩は、高く厚いこと天地と同じです。父母がいなければ自分の身はありません。その恩は報いがたいものです。孝を勤めて、せめて万分の一の恩でも報いなさい。身の力、財の力を尽くしなさい。惜しんではなりません。これが父母に仕えて、その力を尽くすということです。父母が亡くなった後は孝を尽くすことができなくなることを、前もってよく考えて、後悔のないようにしようと思いなさい。
解説
父母の恩の大きさと、生きているうちに孝を尽くす大切さを説いた短い条です。父母の恩を天地にたとえるのは儒学の常で、報いきれない恩だからこそ、せめて万分の一でも返せと益軒は言います。身の力と財の力を尽くすという表現は、論語学而篇の「父母に事へて能く其の力を竭す」を受けています。親が亡くなってからでは孝は尽くせない、という指摘は、「孝行のしたい時分に親はなし」ということわざと同じ実感です。忙しさを理由に親との時間を後回しにしがちな現代人にも響く内容です。
この章句が説くこと
孝恩父母家族後悔
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