礼記 / 月令
天子居玄堂右個。乘玄路,駕鐵驪,載玄旂,衣黑衣,服玄玉,食黍與彘,其器閎以奄。 命有司大難,旁磔,出土牛,以送寒氣。 征鳥厲疾。乃畢山川之祀,及帝之大臣,天之神祇。
新字:天子居玄堂右個。乗玄路,駕鉄驪,載玄旂,衣黒衣,服玄玉,食黍与彘,其器閎以奄。 命有司大難,旁磔,出土牛,以送寒気。 征鳥厲疾。乃畢山川之祀,及帝之大臣,天之神祇。
書き下し
天子は玄堂の右個(ゆうこ)に居り、玄路に乗り、鉄驪に駕し、玄旂を載せ、黒衣を衣、玄玉を服し、黍と彘とを食らい、其の器は閎くして以て奄し。 有司に命じて大いに難(だ)し、旁(あまね)く磔(たく)し、土牛を出だし、以て寒気を送らしむ。 征鳥(せいちょう)厲疾(れいしつ)なり。乃ち山川の祀、及び帝の大臣、天の神祗を畢(お)う。
現代語訳
天子は玄堂の右個(ゆうこ、北の堂の東寄りの部屋)に居り、黒塗りの車に乗り、鉄色の黒馬に引かせ、黒い旗を立て、黒い衣を着て、黒い玉を帯び、黍と豚を食べ、口が広く深い器を用いる。 役人に命じて大がかりな難(だ、疫鬼を追い払う儀式)を行わせ、四方の門で犠牲を裂いて禍いを祓い、土で作った牛を出して、寒気を送り出させる。 鷹や隼のような猛禽が、鋭く激しく獲物を襲う時節である。そこで山川の祭り、上帝に仕える大臣や天の神々への祭りを締めくくる。
解説
季冬の天子の居所と、年の瀬の祓えを定める段である。冬の三か月、天子は北の玄堂の左個・大廟・右個を順に移り、最後の月は右個に居る。衣服や車馬が黒で統一されているのは前の月と同じである。この月の行事の中心は「大難」で、鄭玄は、陰気を追い払う儺であり、四方の門で牲を裂いて禳うのが旁磔、土の牛を作るのは十二支の丑が牛に当たるからだと注している。一年の終わりに疫病をもたらす寒気と悪気を送り出す儀式で、日本の追儺や節分の豆まきも、この儺の系譜を引く行事とされる。征鳥は鷹の類で、殺気が極まる時期を示す。年の最後に山川と天の神々の祭りを締めくくるのは、一年の恵みに報いて区切りをつけるためである。溜まったものを祓い、けじめをつけて新年を迎えるという習いは、大掃除や仕事納めのかたちでいまも暮らしに残っている。
この章句が説くこと
礼記月令季冬儺祓い
関連する章句
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礼記・月令国に命じて難(だ)し、九門に磔攘(たくじょう)して、以て春気を畢(お)う。 季春に冬の令を行えば、則ち寒気時に発し、草木皆粛(しぼ)み、国に大いなる恐れ有り。夏の令を行えば、則ち民多く疾疫し、時雨降らず、山林収めず。秋の令を行えば、則ち天多く沈陰し、淫雨蚤く降り、兵革並び起こる。
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呂氏春秋・季冬①季冬の月。日は婺女に在り、昏に婁中し、旦氐中す。其の日は壬癸、其の帝は顓頊、其の神は玄冥、其の蟲は介、其の音は羽、律は大呂に中たる。其の數は六、其の味は鹹、其の臭は朽。其の祀は井、祭るには腎を先にす。鴈北に鄉い、鵲始めて巢くい、雉雊き雞乳す。天子、玄堂の右個に居り、玄輅に乘り、鐵驪を駕し、玄旂を載て、黑衣を衣、玄玉を服び、黍と彘とを食らう。其の器は宏にして以て弇なり。有司に命じて大いに儺し、旁く磔し、土牛を出だして、以て寒氣を送る。征鳥厲疾なり。乃ち畢く山川の祀りを行い、帝の大臣、天地の神祇に及ぶ。
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礼記・月令冰(こおり)益々壮(さか)んにして、地始めて坼(さ)く。鶡旦(かつたん)鳴かず、虎始めて交わる。 天子は玄堂の大廟に居り、玄路(げんろ)に乗り、鉄驪(てつり)に駕し、玄旂(げんき)を載せ、黒衣を衣(き)、玄玉を服す。黍(きび)と彘(ぶた)とを食らい、其の器は閎(ひろ)くして以て奄(ふか)し。 死事を飭(ととの)う。有司に命じて曰く、「土事は作(おこ)すこと毋(な)かれ、慎みて蓋(おお)いを発(ひら)くこと毋かれ、室屋を発き及び大衆を起こすこと毋かれ、以て固くして閉ざせ。地気沮泄(そせつ)すれば、是れを天地の房を発くと謂い、諸蟄(しょちつ)は則ち死し、民は必ず疾疫あり、又随うに喪を以てす。之に命じて暢月(ちょうげつ)と曰う」と。
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礼記・月令天子は玄堂(げんどう)の左個に居り、玄路(げんろ)に乗り、鉄驪(てつり)に駕し、玄旂を載せ、黒衣を衣、玄玉を服ぶ。黍(きび)と彘(ぶた)とを食らう。其の器は閎(ひろ)くして以て奄(ふか)し。 是の月や、以て冬を立つ。立冬に先だつこと三日、太史之を天子に謁げて曰く、「某日立冬なり、盛徳は水に在り」と。天子乃ち斉す。立冬の日、天子親ら三公・九卿・大夫を帥いて以て冬を北郊に迎え、還り反りて、死事を賞し、孤寡を恤(あわ)れむ。
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『淮南子』時則訓季冬の月、招搖は丑を指し、昏に婁中し、旦に氐中す。其の位は北方、其の日は壬癸、其の蟲は介、其の音は羽、律は大呂に中たり、其の數は六、其の味は鹹、其の臭は腐、其の祀は井、祭には腎を先にす。鴈北に鄉い、鵲巢を加え、雉雊き、雞卵を呼ぶ。天子は黑衣を衣、鐵驪に乘り、玄玉を服し、玄旗を建て、麥と彘とを食らい、八風の水を服し、松を爨き火を燧り、北宮の御女は黑色、黑采を衣、磬石を擊ち、其の兵は鎩、其の畜は彘、玄堂の右丢に朝す。有司に命じ、大いに儺し旁く磔し、土牛を出ださしむ。漁師に命じて始めて漁せしめ、天子親ら往きて漁を射、先ず寢廟に薦む。民をして五種を出ださしめ、農をして耦耕の事を計り、耒耜を修め、田器を具えしむ。樂師に命じて大いに合吹して罷めしむ。乃ち四監に命じ、秩薪を收め、以て寢廟及び百祀の薪燎に供せしむ。是の月や、日は次に窮まり、月は紀に窮まり、星は天を周り、歲將に更め始まらんとす。農民を靜かならしめ、使う所有る無かれ。天子乃ち公卿大夫と國典を飾り、時令を論じ、以て嗣歲の宜しきを待つ。乃ち太史に命じ、諸侯の列を次で、之に犧牲を賦し、以て皇天上帝社稷の芻享に供せしむ。乃ち同姓の國に命じ、寢廟の芻豢を供せしめ、卿士大夫より庶民に至るまで、山林名川の祀を供せしむ。季冬に秋令を行えば、則ち白露早く降り、介蟲䄏を為し、四鄙保に入る。春令を行えば、則ち胎夭傷れ、國に痼疾多し。之を命じて逆と曰う。夏令を行えば、則ち水潦國を敗り、時雪降らず、冰凍消釋す。十二月は獄を官とし、其の樹は櫟なり。
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礼記・月令季冬の月は、日は婺女(ぶじょ)に在り、昏(くれ)に婁(ろう)中し、旦(あした)に氐(てい)中す。其の日は壬癸(じんき)。其の帝は顓頊(せんぎょく)、其の神は玄冥(げんめい)。其の虫は介。其の音は羽、律は大呂(たいりょ)に中(あた)る。其の数は六。其の味は鹹(かん)、其の臭(におい)は朽。其の祀は行(こう)、祭るに腎を先にす。 鴈(かり)北に郷(むか)い、鵲(かささぎ)始めて巣くう。雉(きじ)雊(な)き、雞(にわとり)乳す。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
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