礼記 / 月令
季春之月,日在胃,昏七星中,旦牽牛中。其日甲乙。其帝大皞,其神句芒。其蟲鱗。其音角,律中姑洗。其數八。其味酸,其臭羶,其祀戶,祭先脾。 桐始華,田鼠化為鴽,虹始見,萍始生。
新字:季春之月,日在胃,昏七星中,旦牽牛中。其日甲乙。其帝大皞,其神句芒。其虫鱗。其音角,律中姑洗。其数八。其味酸,其臭羶,其祀戸,祭先脾。 桐始華,田鼠化為鴽,虹始見,萍始生。
書き下し
季春の月、日は胃(い)に在り、昏に七星中し、旦に牽牛(けんぎゅう)中す。其の日は甲乙。其の帝は大皞、其の神は句芒。其の虫は鱗。其の音は角、律は姑洗(こせん)に中る。其の数は八。其の味は酸、其の臭は羶、其の祀りは戸、祭るに脾を先にす。 桐始めて華さき、田鼠(でんそ)化して鴽(じょ)と為り、虹始めて見(あらわ)れ、萍(うきくさ)始めて生ず。
現代語訳
春の終わりの月(旧暦三月)には、太陽は胃宿の位置にあり、日暮れには七星(星宿)が南中し、夜明けには牽牛宿が南中する。日は甲乙。帝は大皞、神は句芒。動物は鱗のあるもの。音は角、律は姑洗に当たる。数は八。味は酸っぱさ、においは羶、祀るのは戸口の神で、供物は脾臓を先にする。 桐の花が咲きはじめ、野のねずみが姿を変えて鴽(うずらの類)となり、虹がはじめて現れ、浮き草が生えはじめる。
解説
季春(旧暦三月)の天象と五行の配当、そして物候を述べる段である。太陽の位置と南中する星が改まり、律は姑洗に移るが、日・帝・神・虫・音・数・味・臭・祀は春の木の配当のままである。後半の四つの物候のうち、桐の花・虹・浮き草は目に見える春の深まりを示し、「田鼠化して鴽と為る」は、鷹が鳩に化すという仲春の記述と同じく、季節によって姿を見せる生き物が入れ替わることを変化と捉えた古人の見方である。虹が現れるのは、陰と陽の気が交わる時節になったしるしとされた。これらの句は、中国の七十二候で清明の三候として受け継がれ、日本の暦でも「虹始めて見る」が清明の候に置かれている。空の虹や道端の草花に季節を読む習いは、今も暮らしを豊かにしてくれる。
この章句が説くこと
礼記月令季春物候七十二候
関連する章句
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呂氏春秋・季春①季春の月。日は胃に在り、昏に七星中し、旦に牽牛中す。其の日は甲乙、其の帝は太皞、其の神は句芒、其の蟲は鱗、其の音は角、律は姑洗に中る。其の數は八、其の味は酸、其の臭は羶、其の祀は戶、祭るには脾を先にす。桐始めて華さき、田鼠化して鴽と為り、虹始めて見われ、萍始めて生ず。天子は青陽の右个に居り、鸞輅に乘り、蒼龍を駕し、青旂を載て、青衣を衣、青玉を服び、麥と羊とを食らう。其の器は疏にして以て達す。
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『淮南子』時則訓季春の月、招搖は辰を指し、昏に七星中し、旦に牽牛中す。其の位は東方、其の日は甲乙、其の蟲は鱗、其の音は角、律は姑洗に中たり、其の數は八、其の味は酸、其の臭は羶、其の祀は戶、祭には脾を先にす。桐始めて華さき、田鼠化して鴽と為り、虹始めて見れ、萍始めて生ず。天子は青衣を衣、蒼龍に乘り、蒼玉を服し、青旗を建て、麥と羊とを食らい、八風の水を服し、萁を爨き火を燧り、東宮の御女は青色、青采を衣、琴瑟を鼓し、其の兵は矛、其の畜は羊、青陽の右丢に朝す。舟牧は舟を覆すこと、五たび覆し五たび反し、乃ち天子に具を言う。天子烏めて始めて舟に乘り、鮪を寢廟に薦め、乃ち麥の為に實を祈る。是の月や、生氣方に盛んに、陽氣發泄し、句なる者は畢く出で、萌す者は盡く達す。以て内る可からず。天子有司に命じて、囷倉を發き、貧窮を助け、乏絕を振わし、府庫を開き、幣帛を出だし、諸侯を使わし、名士を聘し、賢者を禮せしむ。司空に命ず、時雨將に降らんとし、下水上騰す。國邑を循行し、原野を周視し、隄防を修利し、溝瀆を導通し、路を達し道を除くこと、國より始めて、境に至りて止む。田獵畢弋、罝罘羅𦉾、餧毒の藥、九門を出だす毋かれ。乃ち野虞を禁じ、桑柘を伐る毋からしむ。鳴鳩其の羽を奮い、戴鵀桑に降る。撲曲筥筐を具え、后妃齋戒し、東に鄉いて親ら桑し、婦の使を省き、蠶事を勸む。五庫に命じ、百工をして金鐵皮革・筋角箭榦・脂膠丹漆を審らかにし、不良有る無からしむ。下旬の吉日を擇びて、大いに樂を合し、歡欣を致す。乃ち㹎牛騰馬を合し、牝を牧に游ばしむ。國に儺せしめ、九門に磔攘して、以て春氣を畢う。是の月令を行えば、甘雨至ること三旬。季春に冬令を行えば、則ち寒氣時に發し、草木皆な肅み、國に大恐有り。夏令を行えば、則ち民多く疾疫し、時雨降らず、山陵登らず。秋令を行えば、則ち天多く沈陰し、淫雨早く降り、兵革並び起こる。三月は鄉を官とし、其の樹は李なり。
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礼記・月令孟春の月、日は営室(えいしつ)に在り、昏(くれ)に参(しん)中し、旦(あした)に尾(び)中す。其の日は甲乙(こうおつ)。其の帝は大皞(たいこう)、其の神は句芒(こうぼう)。其の虫は鱗。其の音は角。律は大蔟(たいそう)に中(あた)る。其の数は八。其の味は酸(さん)、其の臭(におい)は羶(せん)。其の祀りは戸、祭るに脾(ひ)を先にす。 東風凍(こおり)を解き、蟄虫(ちっちゅう)始めて振(うご)き、魚冰(こおり)に上り、獺(かわうそ)魚を祭り、鴻鴈(こうがん)来たる。
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礼記・月令孟春に夏の令を行えば、則ち雨水時ならず、草木蚤(はや)く落ち、国時に恐れ有り。秋の令を行えば、則ち其の民大いに疫(えき)し、猋風(ひょうふう)暴雨総(すべ)て至り、藜(あかざ)・莠(はぐさ)・蓬(よもぎ)・蒿(よもぎ)並び興る。冬の令を行えば、則ち水潦(すいろう)敗を為し、雪霜大いに摯(いた)り、首種(しゅしゅ)入らず。 仲春の月、日は奎(けい)に在り、昏に弧(こ)中し、旦に建星中す。其の日は甲乙、其の帝は大皞、其の神は句芒。其の虫は鱗。其の音は角、律は夾鍾(きょうしょう)に中る。其の数は八。其の味は酸、其の臭は羶、其の祀りは戸、祭るに脾を先にす。
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礼記・月令季秋の月、日は房(ぼう)に在り、昏に虚(きょ)中し、旦に柳中す。其の日は庚辛。其の帝は少暭、其の神は蓐収。其の虫は毛、其の音は商、律は無射(ぶえき)に中る。其の数は九。其の味は辛、其の臭は腥。其の祀りは門、祭るに肝を先にす。 鴻鴈来賓(らいひん)す。爵(すずめ)大水に入りて蛤(はまぐり)と為る。鞠(きく)に黄華有り、豺(さい)乃ち獣を祭り禽を戮(ころ)す。
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礼記・月令季夏の月、日は柳(りゅう)に在り、昏に火中し、旦に奎中す。其の日は丙丁。其の帝は炎帝、其の神は祝融。其の虫は羽。其の音は徴、律は林鍾(りんしょう)に中る。其の数は七。其の味は苦、其の臭は焦。其の祀りは竈、祭るに肺を先にす。温風始めて至り、蟋蟀(しつしゅつ)壁に居り、鷹乃ち学習し、腐草(ふそう)螢と為る。
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