礼記 / 月令
孟春之月,日在營室,昏參中,旦尾中。其日甲乙。其帝大皞,其神句芒。其蟲鱗。其音角。律中大蔟。其數八。其味酸,其臭羶。其祀戶,祭先脾。 東風解凍,蟄蟲始振,魚上冰,獺祭魚,鴻鴈來。
新字:孟春之月,日在営室,昏参中,旦尾中。其日甲乙。其帝大皞,其神句芒。其虫鱗。其音角。律中大蔟。其数八。其味酸,其臭羶。其祀戸,祭先脾。 東風解凍,蟄虫始振,魚上冰,獺祭魚,鴻鴈来。
書き下し
孟春の月、日は営室(えいしつ)に在り、昏(くれ)に参(しん)中し、旦(あした)に尾(び)中す。其の日は甲乙(こうおつ)。其の帝は大皞(たいこう)、其の神は句芒(こうぼう)。其の虫は鱗。其の音は角。律は大蔟(たいそう)に中(あた)る。其の数は八。其の味は酸(さん)、其の臭(におい)は羶(せん)。其の祀りは戸、祭るに脾(ひ)を先にす。 東風凍(こおり)を解き、蟄虫(ちっちゅう)始めて振(うご)き、魚冰(こおり)に上り、獺(かわうそ)魚を祭り、鴻鴈(こうがん)来たる。
現代語訳
春の初めの月(旧暦正月)には、太陽は営室(二十八宿の一つ)の位置にあり、日暮れには参宿が南中し、夜明けには尾宿が南中する。この月の日は十干の甲と乙(五行の木に当たる)。この季節をつかさどる帝は大皞(伏羲とされる古の帝王)、神は句芒(木をつかさどる神)である。この季節を代表する動物は鱗のあるもの。音は五音の角。十二律では大蔟に当たる。数は八。味は酸っぱさ、においは羶(羊のような生臭さ)。祀るのは戸口の神で、供物では脾臓を先にする。 東風が吹いて氷を解かし、冬ごもりしていた虫がはじめて動き出し、魚は氷の下から浮かび上がり、獺は捕った魚を並べて祭るようにし、雁がやって来る。
解説
「月令」篇の冒頭、孟春(旧暦正月)の天象と五行の配当を述べる段である。月令は一年十二か月ごとに、天子が何を着て何を食べ、どの政令を出すべきかを定めた篇で、鄭玄は『呂氏春秋』十二月紀の各紀の首章をもとにしたものと見ている。まず太陽の位置と南中する星で季節を確かめ、次に日・帝・神・虫・音・律・数・味・臭・祀を木の気に配して並べる。春は木、方位は東、色は青という五行の枠組みが、暦と政治を一つに結びつけているのである。後半の「獺魚を祭る」「鴻鴈来たる」は、鳥や獣や虫の小さな変化を見て季節の到来を知る物候の記述で、後の七十二候の源の一つとなった。人の営みを天地の巡りに合わせるという発想は、忙しさに季節を忘れがちな今の暮らしに、ときに立ち止まって外の自然を見る習いを思い出させてくれる。
この章句が説くこと
礼記月令五行季節暦
関連する章句
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呂氏春秋・孟春①孟春の月、日は營室に在り、昏に參中し、旦に尾中す。其の日は甲乙、其の帝は太皞、其の神は句芒、其の蟲は鱗、其の音は角、律は太蔟に中る。其の數は八、其の味は酸、其の臭は羶。其の祀は戸、祭るには脾を先にす。東風、凍を解き、蟄蟲始めて振るう。魚、冰に上り、獺、魚を祭り、候雁北す。天子、青陽の左个に居り、鸞輅に乘り蒼龍を駕し、青旂を載せ、青衣を衣、青玉を服び、麥と羊とを食らう。其の器は疏にして以て達す。
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礼記・月令孟春に夏の令を行えば、則ち雨水時ならず、草木蚤(はや)く落ち、国時に恐れ有り。秋の令を行えば、則ち其の民大いに疫(えき)し、猋風(ひょうふう)暴雨総(すべ)て至り、藜(あかざ)・莠(はぐさ)・蓬(よもぎ)・蒿(よもぎ)並び興る。冬の令を行えば、則ち水潦(すいろう)敗を為し、雪霜大いに摯(いた)り、首種(しゅしゅ)入らず。 仲春の月、日は奎(けい)に在り、昏に弧(こ)中し、旦に建星中す。其の日は甲乙、其の帝は大皞、其の神は句芒。其の虫は鱗。其の音は角、律は夾鍾(きょうしょう)に中る。其の数は八。其の味は酸、其の臭は羶、其の祀りは戸、祭るに脾を先にす。
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『淮南子』時則訓孟春の月、招搖は寅を指し、昏に參中し、旦に尾中す。其の位は東方、其の日は甲乙、盛德は木に在り、其の蟲は鱗、其の音は角、律は太蔟に中たり、其の數は八、其の味は酸、其の臭は羶、其の祀は戶、祭には脾を先にす。東風凍を解き、蟄蟲始めて振蘇し、魚は上りて冰を負い、獺は魚を祭り、候鴈北す。天子は青衣を衣、蒼龍に乘り、蒼玉を服し、青旗を建て、麥と羊とを食らい、八風の水を服し、萁を爨き火を燧り、東宮の御女は青色、青采を衣、琴瑟を鼓し、其の兵は矛、其の畜は羊、青陽の左丢に朝し、以て春令を出だす。德を布き惠を施し、慶賞を行い、徭賦を省く。立春の日、天子親ら三公九卿大夫を率いて以て歲を東郊に迎え、祠位を修除し、幣もて鬼神に禱り、犧牲は牡を用う。木を伐るを禁じ、巢を覆し胎夭を殺す毋かれ、麛する毋かれ、卵する毋かれ、眾を聚め城郭を置く毋かれ、骼を掩い骴を薶む。孟春に夏令を行えば、則ち風雨時ならず、草木旱に落ち、國乃ち恐有り。秋令を行えば、則ち其の民大いに疫し、飄風暴雨總て至り、黎莠蓬蒿並び興る。冬令を行えば、則ち水潦敗を為し、雨霜大雹あり、首稼入らず。正月は司空を官とし、其の樹は楊なり。
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呂氏春秋・仲春①仲春の月。日は奎に在り。昏に弧中し、旦に建星中す。其の日は甲乙、其の帝は太暤、其の神は句芒、其の蟲は麟、其の音は角、律は夾鐘に中る。其の數は八、其の味は酸、其の臭は羶。其の祀は戸、祭るには脾を先にす。初めて雨水し、桃李華さく。蒼庚鳴き、鷹化して鳩と為る。天子は青陽の太廟に居り、鸞輅に乘り蒼龍を駕し、青旂を載て、青衣を衣、青玉を服び、麥と羊とを食らう。其の器は疏にして以て達す。
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礼記・月令季春の月、日は胃(い)に在り、昏に七星中し、旦に牽牛(けんぎゅう)中す。其の日は甲乙。其の帝は大皞、其の神は句芒。其の虫は鱗。其の音は角、律は姑洗(こせん)に中る。其の数は八。其の味は酸、其の臭は羶、其の祀りは戸、祭るに脾を先にす。 桐始めて華さき、田鼠(でんそ)化して鴽(じょ)と為り、虹始めて見(あらわ)れ、萍(うきくさ)始めて生ず。
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礼記・月令天子は青陽(せいよう)の左个(さこ)に居り、鸞路(らんろ)に乗り、倉龍(そうりょう)に駕し、青旂(せいき)を載せ、青衣を衣(き)、倉玉を服(お)ぶ。麦と羊とを食らい、其の器は疏(そ)にして以て達す。 是の月や、以て春を立つ。立春に先だつこと三日、大史(たいし)之を天子に謁(つ)げて曰く、「某日立春なり、盛徳は木に在り」と。天子乃ち斉(さい)す。立春の日、天子親ら三公・九卿・諸侯・大夫を帥(ひき)いて以て春を東郊に迎う。還り反りて、公卿・諸侯・大夫を朝に賞す。
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