礼記 / 王制
司寇正刑明辟以聽獄訟。必三刺。有旨無簡不聽。附從輕,赦從重。
新字:司寇正刑明辟以聴獄訟。必三刺。有旨無簡不聴。附従軽,赦従重。
書き下し
司寇(しこう)は刑を正し辟(へき)を明らかにして、以て獄訟を聴く。必ず三たび刺(し)す。旨有りて簡(まこと)無きは聴かず。附(ふ)するは軽きに従い、赦すは重きに従う。
現代語訳
司寇(しこう、刑罰を司る長官)は、刑を正し罪を明らかにして、訴訟を裁く。裁くときには必ず三度意見を問う(群臣に問い、群吏に問い、万民に問う)。罪を犯す意図があったように見えても、その実が確かめられなければ、罪として取り上げない。刑を科するときは、できるだけ軽い方に従う。赦すときは、重い罪であっても赦す方に従う。
解説
刑罰を司る司寇が訴訟を裁くときの根本の心得を、短い四句にまとめた段である。鄭玄は、三たび刺すとは、一に群臣に問い、二に群吏に問い、三に万民に問うことで、民の実情を求めて訴訟の中正を得るためだと注する。一人の判断で裁かず、立場の異なる人々に意見を問うのである。「旨有りて簡無きは聴かず」について、鄭玄は簡を誠と読み、その意図はあっても実がなければ罪として論じないと注する。疑いや思惑だけで人を罰してはならないという、今日の推定無罪にも通じる原則である。刑を科するときは軽きに従い、赦すときは重い罪でも赦す方に従う。鄭玄は、罪を免れる道を求めて軽い方に従わせ、重くすべき罪でもなお赦すのだと説く。『尚書』大禹謨の「罪の疑わしきは惟れ軽くす」とも響き合う。人を処分する立場に立ったとき、疑いを事実と取り違えず、迷ったら軽い方を選ぶという構えは、職場の評価や家庭の叱り方にも生きる。
この章句が説くこと
礼記王制裁判刑罰寛恕
関連する章句
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礼記・王制凡そ五刑を制するは、必ず天の論に即(つ)く。郵罰(ゆうばつ)は事に麗(つ)く。凡そ五刑の訟を聴くには、必ず父子の親に原(もと)づき、君臣の義を立てて以てこれを権(はか)る。軽重の序を意論し、浅深の量を慎測して、以てこれを別つ。其の聡明を悉くし、其の忠愛を致して、以てこれを尽くす。疑獄は、氾(ひろ)く衆とこれを共にし、衆疑えばこれを赦す。必ず小大の比(ひ)を察して以てこれを成す。獄辞を成せば、史、獄の成るを以て正に告げ、正これを聴く。正、獄の成るを以て大司寇に告げ、大司寇これを棘木の下に聴く。大司寇、獄の成るを以て王に告げ、王、三公に命じて参(まじ)えてこれを聴かしむ。三公、獄の成るを以て王に告げ、王三たび又(ゆる)して、然る後に刑を制す。凡そ刑罰を作(な)すに、軽きも赦すこと無し。刑は侀(けい)なり、侀は成なり。一たび成れば変ずべからず。故に君子は心を尽くす。言を析(さ)きて律を破り、名を乱して作を改め、左道を執りて以て政を乱すは、殺す。淫声・異服・奇技・奇器を作りて以て衆を疑わすは、殺す。行い偽りにして堅く、言偽りにして辯じ、非を学びて博く、非に順いて沢(たく)にして、以て衆を疑わすは、殺す。鬼神・時日・卜筮に仮りて以て衆を疑わすは、殺す。此の四誅は、以て聴かず。凡そ禁を執りて以て衆を斉うるは、過ちを赦さず。圭璧・金璋有るも市に粥(ひさ)がず。命服・命車は市に粥がず。宗廟の器は市に粥がず。犠牲は市に粥がず。戎器は市に粥がず。用器度に中(あた)らざるは、市に粥がず。兵車度に中らざるは、市に粥がず。布帛精麤(せいそ)数に中らず、幅の広狭量に中らざるは、市に粥がず。姦色の正色を乱すは、市に粥がず。錦文・珠玉の成器は市に粥がず。衣服・飲食は市に粥がず。五穀時ならず、果実未だ孰(じゅく)せざるは、市に粥がず。木伐るに中らざるは、市に粥がず。禽獣魚鼈殺すに中らざるは、市に粥がず。関は禁を執りて以て譏(せ)め、異服を禁じ、異言を識る。
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孔子家語・刑政仲弓曰わく:「獄を聽くに、獄の成るは、何の官に成るか。」孔子曰わく:「獄を成すは吏に成り、吏獄の成るを以て正に告ぐ。正既に之を聽けば、乃ち大司寇に告げて之を聽かしむ。乃ち王に奉じ、王三公卿士をして棘木の下に參聽せしむ。然る後乃ち獄の成るを以て王に疑い、王三たび之を宥して以て命を聽く。而して刑を制す、之を重んずる所以なり。」
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尚書・呂刑王曰く、「吁(ああ)!来たれ、有邦有土よ、爾に祥刑を告ぐ。今に在りて爾百姓を安んずるに、何をか択ぶ、人に非ずや。何をか敬む、刑に非ずや。何をか度る、及に非ずや。両造具備すれば、師五辞を聴く。五辞簡孚なれば、五刑に正す。五刑簡ならざれば、五罰に正す。五罰服せざれば、五過に正す。五過の疵は、惟れ官、惟れ反、惟れ内、惟れ貨、惟れ来なり。其の罪惟れ均し、其れ審らかに之を克くせよ。五刑の疑はしきは赦す有り、五罰の疑はしきは赦す有り、其れ審らかに之を克くせよ。簡孚衆有るも、惟れ貌に稽ふる有り。簡無ければ聴かず、具に天威を厳れよ。墨辟の疑はしきは赦し、其の罰百鍰、其の罪を閲実せよ。劓辟の疑はしきは赦し、其の罰惟れ倍、其の罪を閲実せよ。剕辟の疑はしきは赦し、其の罰倍差、其の罪を閲実せよ。宮辟の疑はしきは赦し、其の罰六百鍰、其の罪を閲実せよ。大辟の疑はしきは赦し、其の罰千鍰、其の罪を閲実せよ。墨罰の属千、劓罰の属千、剕罰の属五百、宮罰の属三百、大辟の罰、其の属二百。五刑の属三千。上下罪を比し、僭乱の辞無かれ。行はれざるを用ふる勿く、惟れ察し惟れ法とし、其れ審らかに之を克くせよ。上刑も適に軽ければ、下に服す。下刑も適に重ければ、上に服す。軽重の諸罰に権有り。
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孔子家語・刑政仲弓曰わく:「古の訟を聽くや、尤罰は事に麗け、其の心を以てせずと。得て聞く可きか。」孔子曰わく:「凡そ五刑の訟を聽くには:必ず父子の情に原づき、君臣の義を立てて以て之を權り、輕重の序を意論し、淺深の量を慎測して以て之を別ち、其の聰明を悉くし、其の忠愛を正して以て之を盡くす。大司寇刑を正し辟を明らかにして以て獄を察す、獄は必ず三訊す。指有りて簡無ければ、則ち聽かず。附くるは輕きに從い、赦すは重きに從う。疑獄は則ち泛く眾と之を共にし、疑わしければ則ち之を赦す、皆小大の比を以て成すなり。是の故に人を爵するには必ず朝にす、眾と之を共にすればなり。人を刑するには必ず市にす、眾と之を棄つればなり。古は公家刑人を畜わず、大夫養わざるなり。士之に塗に遇うも、以て之と言わず。之を四方に屏け、唯だ其の之く所のままにす。政に與るに及ばず、之を生かさんと欲せざるなり。」
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礼記・王制大国の卿は三命を過ぎず、下卿は再命、小国の卿と下大夫とは一命なり。 凡そ民の材を官にするには、必ず先ずこれを論ず。論辨して然る後にこれを使い、事に任じて然る後にこれに爵し、位定まりて然る後にこれに禄す。 人に朝に爵するは、士とこれを共にす。人を市に刑するは、衆とこれを棄つ。是の故に公家は刑人を畜(やしな)わず、大夫も養わず、士は塗(みち)にこれに遇うもともに言わず。これを四方に屏(しりぞ)け、唯其の之(ゆ)く所のままにし、及ぼすに政を以てせず、亦故(ことさら)に生かさざるなり。
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尚書・呂刑惟れ斉しきも斉しからず、倫有り要有り。罰の懲らしむるは死に非ざるも、人は病に極まる。佞は獄を折むるに非ず、惟れ良は獄を折む。中に在らざる罔し。辞を差に察し、従はざるも惟れ従ふ。哀敬して獄を折め、明らかに刑書を啓きて胥占り、咸く中正に庶からしめよ。其の刑其の罰、其れ審らかに之を克くせよ。獄成りて孚あり、輸して孚あり。其の刑は上に備へ、両刑を并する有り。」王曰く、「嗚呼(ああ)!之を敬めや。官伯族姓よ、朕が言は懼るること多し。朕は刑を敬む、徳有るもの惟れ刑す。今天民を相け、配と作して下に在り、単辞を明清にせよ。民の乱るるは、獄の両辞を中聴せざるに罔し。或いは獄の両辞に私家すること無かれ。
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