礼記 / 檀弓上
孔子蚤作,負手曳杖,消搖於門,歌曰:「泰山其頹乎,梁木其壞乎,哲人其萎乎?」既歌而入,當戶而坐。子貢聞之,曰:「泰山其頹,則吾將安仰?梁木其壞、哲人其萎,則吾將安放?夫子殆將病也。」遂趨而入。夫子曰:「賜!爾來何遟也?夏后氏殯於東階之上,則猶在阼也;殷人殯於兩楹之間,則與賓主夾之也;周人殯於西階之上,則猶賓之也。而丘也殷人也。予疇昔之夜,夢坐奠於兩楹之間。夫明王不興,而天下其孰能宗予,予殆將死也。」蓋寢疾七日而沒。孔子之喪,門人疑所服。子貢曰:「昔者夫子之喪顏淵,若喪子而無服;喪子路亦然。請喪夫子若喪父而無服。」
新字:孔子蚤作,負手曳杖,消揺於門,歌曰:「泰山其頽乎,梁木其壊乎,哲人其萎乎?」既歌而入,当戸而坐。子貢聞之,曰:「泰山其頽,則吾将安仰?梁木其壊、哲人其萎,則吾将安放?夫子殆将病也。」遂趨而入。夫子曰:「賜!爾来何遟也?夏后氏殯於東階之上,則猶在阼也;殷人殯於両楹之間,則与賓主夾之也;周人殯於西階之上,則猶賓之也。而丘也殷人也。予疇昔之夜,夢坐奠於両楹之間。夫明王不興,而天下其孰能宗予,予殆将死也。」蓋寝疾七日而没。孔子之喪,門人疑所服。子貢曰:「昔者夫子之喪顔淵,若喪子而無服;喪子路亦然。請喪夫子若喪父而無服。」
書き下し
孔子蚤(つと)に作(お)き、手を負い杖を曳き、門に消揺(しょうよう)して、歌いて曰く、「泰山其れ頽(くず)れんか、梁木其れ壊れんか、哲人其れ萎(な)えんか」と。既に歌いて入り、戸に当たりて坐す。子貢これを聞きて曰く、「泰山其れ頽れなば、則ち吾将(はた)安(いずく)にか仰がん。梁木其れ壊れ、哲人其れ萎えなば、則ち吾将安にか放(なら)わん。夫子殆(ほとん)ど将に病まんとするなり」と。遂に趨りて入る。夫子曰く、「賜、爾来ること何ぞ遅きや。夏后氏は東階の上に殯す、則ち猶阼(そ)に在るがごときなり。殷人は両楹(りょうえい)の間に殯す、則ち賓主とこれを夾むなり。周人は西階の上に殯す、則ち猶これを賓とするがごときなり。而して丘や殷人なり。予(われ)疇昔(ちゅうせき)の夜、夢に両楹の間に坐して奠(てん)せらる。夫れ明王興らず、而して天下其れ孰(たれ)か能く予を宗(たっと)ばん。予殆ど将に死せんとするなり」と。蓋し疾に寝ぬること七日にして没す。孔子の喪に、門人服する所を疑う。子貢曰く、「昔者夫子の顔淵を喪するや、子を喪するが若くにして服無し。子路を喪するも亦然り。請う夫子を喪すること父を喪するが若くにして服無からん」と。
現代語訳
孔子は朝早く起き、手を後ろに組んで杖を引きずり、門のあたりをゆったりと歩きながら歌った。「泰山が崩れようとしているのか。梁(はり)が折れようとしているのか。哲人が萎れようとしているのか」。歌い終えると部屋に入り、戸口に向かって坐った。子貢はそれを聞いて言った。「泰山が崩れたなら、私たちは何を仰げばよいのか。梁が折れ、哲人が萎れたなら、私たちは何を手本とすればよいのか。先生はきっと病に伏されるのだろう」。そして小走りに入っていった。孔子は言った。「賜(子貢)よ、なぜ来るのがこんなに遅かったのか。夏の人は東の階段の上に殯した。それは死者がなお主人の位置にいるかのように扱うのである。殷の人は堂の二本の柱の間に殯した。それは賓客と主人の間にはさんで置くのである。周の人は西の階段の上に殯した。それは死者を賓客として扱うのである。そして丘(私)は殷の人の子孫である。私は昨夜、二本の柱の間に坐って供え物を受ける夢を見た。そもそも明王が現れない今の世に、天下の誰が私を尊んで用いようか。私はおそらくもうすぐ死ぬのだろう」。孔子は病に伏して七日目に亡くなった。孔子の喪に際し、門人たちはどのような喪服を着るべきか迷った。子貢が言った。「かつて先生は顔淵を亡くされたとき、わが子を亡くしたように悲しまれたが喪服は着けられなかった。子路を亡くされたときも同じだった。私たちは、父を亡くしたように先生の死を悲しみ、喪服は着けずに服することにしよう」。
解説
この章句が説くこと
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孔子家語・終記解孔子、蚤晨(早朝)に作(お)き、手を負い杖を曳きて、門に逍遙し、歌いて曰く、「泰山其れ頽れんか。梁木其れ壞れんか。人其れ萎えんか。」既に歌いて入り、戶に當たりて坐す。子貢之を聞きて曰く、「泰山其れ頽れなば、則ち吾將に安にか仰がん。梁木其れ壞れなば、吾將に安にか杖(たの)まん。人其れ萎えなば、吾將に安にか放(なら)わん。夫子殆ど將に病まんとするなり。」遂に趨りて入る。夫子嘆じて言いて曰く、「賜よ、汝來ること何ぞ遲きや。予疇昔(ちゅうせき)夢に兩楹の間に坐して奠せらる。夏後氏は東階の上に殯す、則ち猶お阼に在るなり。殷人は兩楹の間に殯す、即ち賓主之を夾むなり。殯を西階の上にすれば、則ち猶お之を賓とするなり。而して丘や、即ち殷人なり。夫れ明王興らざれば、則ち天下其れ孰か能く余を宗とせん。余逮(まさ)に將に死せんとす。」遂に寢して病み、七日にして終わる。時に年七十二。
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史記 孔子世家故に呉楚の君自ら王と称するも、春秋之を貶して「子」と曰ふ。践土の会は実は周の天子を召せるも、春秋之を諱みて「天王河陽に狩す」と曰ふ。此の類を推して以て当世を縄す。貶損の義は、後に王者有りて挙げて之を開かん。春秋の義行はるれば、則ち天下の乱臣賊子懼る。孔子位に在りて訟を聴くに、文辞の人と共にすべき者有れば、独り有せざるなり。春秋を為るに至りては、筆すべきは則ち筆し、削るべきは則ち削る、子夏の徒も一辞を賛する能はず。弟子春秋を受く、孔子曰く、「後世丘を知る者は春秋を以てし、而して丘を罪する者も亦た春秋を以てせん」と。明歳、子路衛に死す。孔子病む、子貢見えんことを請ふ。孔子方に杖を負ひて門に逍遥し、曰く、「賜、汝来たること何ぞ其れ晩きや」と。孔子因りて歎じ、歌ひて曰く、「太山壊れんか、梁柱摧けんか、哲人萎まんか」と。因りて以て涕下る。子貢に謂ひて曰く、「天下道無きこと久し、能く予を宗とする莫し。夏人は東階に殯し、周人は西階に於てし、殷人は両柱の間にす。昨暮予夢に両柱の間に坐奠せらる、予は始め殷人なり」と。後七日にして卒す。孔子年七十三、四月己丑を以て卒す。哀公之を誄して曰く、「旻天弔まず、一老を愸遺せず、余一人を屏けて以て位に在らしめ、煢煢として余疚に在り。嗚呼哀しいかな、尼父、自ら律すること毋し」と。子貢曰く、「君其れ魯に没せざらんか。夫子の言に曰く、『礼失へば則ち昬く、名失へば則ち愆る。志を失ふを昬と為し、所を失ふを愆と為す』と。生きては用ふる能はず、死して之を誄するは、礼に非ざるなり。『余一人』と称するは、名に非ざるなり」と。孔子魯城の北の泗上に葬らる、弟子皆服すること三年。三年心喪畢はり、相訣れて去る、則ち哭し、各々復た哀しみを尽くす。或いは復た留まる。唯子貢のみ冢上に廬すること、凡そ六年、然る後に去る。弟子及び魯人の往きて冢に従ひて家する者百有余室、因りて命じて孔里と曰ふ。
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孔子家語・終記解孔子の喪、公西(公西赤)殯葬を掌る。唅(がん)するに疏米三具を以てし、襲衣十有一稱、朝服一を加え、章甫の冠を冠らしめ、象環を佩びしむ、徑五寸にして綦組の綬。桐棺四寸、柏棺五寸、廟を飭(ととの)え翣(さつ)を置き、披を設くるは周なり。崇を設くるは殷なり。綢練して旐(ちょう)を設くるは夏なり。三王の禮を兼ね用うるは、師を尊ぶ所以にして、且つ古を備うるなり。魯城の北、泗水の上に葬る。藏を地に入れ、泉に及ばずして封じ、偃斧の形を為す、高さ四尺、松柏を樹てて誌と為す。弟子皆墓に家し、心喪の禮を行う。既に葬るや、燕自り來たりて觀る者有り、子夏氏に舍る。子貢之に謂いて曰く、「吾も亦人の葬、聖人は聖人の葬に非ず、人子奚ぞ觀んや。昔、夫子言えること有り、曰く、『吾が封を見て夏屋の若き者は、斧の若きを見ん。斧の若きに從う者なり、馬鬣とは、封の謂いなり。』今徒(た)だ一日に三たび板を斬りて以て封ず、尚お夫子の志を行うのみ、何ぞ觀んや。」
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孔子家語・終記解既に卒するや、門人夫子に服する所以を疑う。子貢曰く、「昔、夫子の顏回を喪するや、其の子を喪うが若くして服無し。子路を喪するも亦然り。今請う、夫子を喪すること父を喪うが如くして、服無からんことを。」是に於て弟子皆吊服して麻を加う。出でて之く所有れば、則ち绖(てつ)に由る。子夏曰く、「入りては、宜しく绖すべきなり。出づれば、則ち绖せず。」子遊曰く、「吾諸(これ)を夫子に聞く、朋友を喪するには、居りては則ち绖し、出づれば則ち否らず。尊ぶ所を喪するには、绖すと雖も出づるも、可なり。」
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礼記・檀弓上孔子の喪に、燕より来たりて観る者有り、子夏氏に舎(やど)る。子夏曰く、「聖人の人を葬るか、人の聖人を葬るなり。子何をか観ん。昔者(むかし)夫子これを言いて曰く、『吾封(ほう)の堂の若き者を見たり、坊の若き者を見たり、夏屋(かおく)を覆うが若き者を見たり、斧の若き者を見たり』と。斧の若き者に従う。馬鬣封(ばりょうほう)の謂いなり。今一日にして三たび板を斬りて、已に封ず、尚(こいねが)わくは夫子の志を行えるかな」と。
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礼記・檀弓上衰(さい)は、其の物に当たらざらんよりは、寧ろ衰無かれ。斉衰には辺坐せず、大功には服勤せず。 孔子衛に之(ゆ)き、旧館人の喪に遇う。入りてこれを哭して哀し。出でて、子貢をして驂(さん)を説(と)きてこれに賻(ふ)せしむ。子貢曰く、「門人の喪に於いて、未だ驂を説く所有らず。驂を旧館に説くは、乃ち已に重きこと無からんや」と。夫子曰く、「予(われ)郷(さき)に入りてこれを哭し、一哀に遇いて涕(なみだ)を出だす。予夫の涕の従う無きを悪(にく)む。小子これを行え」と。
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