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礼記 / 曲礼上

《曲禮》曰:「毋不敬,儼若思,安定辭,安民哉。」 敖不可長,欲不可從,志不可滿,樂不可極。 賢者狎而敬之,畏而愛之。愛而知其惡,憎而知其善。積而能散,安安而能遷。臨財毋苟得,臨難毋苟免。很毋求勝,分毋求多。疑事毋質,直而勿有。

新字:《曲礼》曰:「毋不敬,儼若思,安定辞,安民哉。」 敖不可長,欲不可従,志不可満,楽不可極。 賢者狎而敬之,畏而愛之。愛而知其悪,憎而知其善。積而能散,安安而能遷。臨財毋苟得,臨難毋苟免。很毋求勝,分毋求多。疑事毋質,直而勿有。

書き下し

曲礼に曰く、「敬せざること毋(な)かれ。儼(げん)として思うが若(ごと)くし、辞を安定にせば、民を安んぜんかな」と。 敖(おごり)は長ずべからず、欲は従(ほしいまま)にすべからず、志は満たすべからず、楽しみは極むべからず。 賢者は狎(な)れてこれを敬し、畏れてこれを愛す。愛してその悪を知り、憎みてその善を知る。積みて能く散じ、安きに安んじて能く遷る。財に臨みては苟(いやし)くも得んとすること毋かれ、難に臨みては苟くも免れんとすること毋かれ。很(あらそ)いては勝つを求むること毋かれ、分かつには多きを求むること毋かれ。疑わしき事は質(ただ)すこと毋かれ、直くして有すること勿(な)かれ。

現代語訳

『曲礼』にいう。「何事においても敬(つつしみ)を欠いてはならない。物思うときのように厳かな姿を保ち、ことばを落ち着いて確かなものにせよ。そうすれば民を安んじることができよう」。 驕りを増長させてはならない。欲望をほしいままにしてはならない。志を満ち足りさせてはならない。楽しみを極めてはならない。 賢者に対しては、親しく近づいても敬意を失わず、畏れ敬いながらも親愛の情をもつ。愛する相手であってもその欠点を知り、憎む相手であってもその長所を知る。財を蓄えても人に分け与えることができ、いまの安らかさに落ち着いていても、なすべきことがあれば移ることができる。財を前にしてむやみに手に入れようとせず、危難を前にしてむやみに逃れようとしない。争いごとでは勝つことを求めず、分け合うときには多くを求めない。疑わしいことを自分の判断で決めつけず、正しいと思うことを述べても自分の意見として固執しない。

解説

『礼記』四十九篇の巻頭、曲礼上篇の冒頭である。「曲礼」とは細々とした日常の礼の意で、この篇は立ち居振る舞い、言葉遣い、長幼の交わりなどの細目を集めている。その最初に置かれたのが「敬せざること毋かれ」の一句で、礼の根本は外に現れる作法より先に、心のつつしみにあることを示している。鄭玄はこの冒頭の三句を、民を安んずることのできる言葉として『曲礼』を説く者が讃えたものと注し、孔穎達の疏は人君が国を治める根本をまず述べた一節と読んだ。続く「敖は長ずべからず」の四句は、驕り・欲・志・楽しみのいずれも行き過ぎを戒めるもので、鄭玄は桀・紂が身を滅ぼした道だと注している。三段目は人と交わる心得で、「愛してその悪を知り、憎みてその善を知る」は、好き嫌いで人を見る目を曇らせないことを説く句である。礼を堅苦しい作法の束としてではなく、感情と欲望に節度を与える日々の技術として読めば、いまの職場や家庭にもそのまま通じる。

この章句が説くこと

礼記敬節度人間関係曲礼

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