導師導古典を学びたいすべての人に

翁問答 / 上卷之末

體充曰、大勇小勇にも、用やう御座候や。師の曰、大勇は用ひて惡しき所なく、又用ひて惡しき時なし、行住座臥五倫のまじはり、大勇なくては道を行ふ事能はず、軍陣にては大將にしても、はむしやにしても宜しく候、小勇の人は武用ばかりの役にたつまでにて、はむしやには好く候へども、大將にはよろしからず、昔より倭漢ともに小勇の大將勝利をうしなふ事、あげて數ふべからず愼むべき事なり。

新字:体充曰、大勇小勇にも、用やう御座候や。師の曰、大勇は用ひて悪しき所なく、又用ひて悪しき時なし、行住座臥五倫のまじはり、大勇なくては道を行ふ事能はず、軍陣にては大将にしても、はむしやにしても宜しく候、小勇の人は武用ばかりの役にたつまでにて、はむしやには好く候へども、大将にはよろしからず、昔より倭漢ともに小勇の大将勝利をうしなふ事、あげて数ふべからず慎むべき事なり。

書き下し

体充曰、大勇小勇にも、用やう御座候や。師の曰、大勇は用ひて悪しき所なく、又用ひて悪しき時なし、行住座臥五倫のまじはり、大勇なくては道を行ふ事能はず、軍陣にては大将にしても、はむしやにしても宜しく候、小勇の人は武用ばかりの役にたつまでにて、はむしやには好く候へども、大将にはよろしからず、昔より倭漢ともに小勇の大将勝利をうしなふ事、あげて数ふべからず慎むべき事なり。

現代語訳

體充が言った。「大勇と小勇にも用い方がございますか。」師は言った。「大勇は用いて悪い所はなく、また用いて悪い時もない。日常の行住坐臥においても五倫の交わりにおいても、大勇がなければ道を行うことはできない。戦陣においては大将としても、葉武者としてもよい。小勇の人は武用の役に立つだけで、葉武者にはよいけれども、大将にはよくない。昔から日本でも中国でも、小勇の大将が勝利を失った例は数えきれない。慎むべきことである。」

解説

大勇と小勇の使いどころを問う短い問答である。大勇は戦場に限らず、日常の立ち居振る舞いや五倫の交わりのすべてに必要とされ、どの立場に置いても役に立つという。これに対し小勇は一兵卒としては使えても、全体を率いる大将には向かない。勇ましさだけで指揮官を選ぶ危うさを、和漢の歴史が繰り返し示してきたというのである。現場で活躍する優秀な担当者が、そのまま優れた管理職になるとは限らない。人を率いる立場には、欲に動かされない大きな勇気が求められるのである。

この章句が説くこと

大勇小勇勇大将五倫リーダー

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る