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日本伝守行矩 / 信疑論・道の真髄は信じるか疑うかで分かれる

○凡そ道の眞粹を得ると不得と、唯信疑のふたつに出でず、人其道を信ずるときは不盡の事なし、事物を盡す時は、見る所障なく、聞ところ滯る事なし、而後泰然として道により、己につく事なし、明將の天を信じて、其命に隨つて行藏す、道の眞粹を得ると謂べし、人其道を疑ふときは、盡すべきを盡さず、盡さゞるときは事物にくらし、故に見る所貞かならず、聞所やすんずる事なし、而後暗然として、己につゐて道に立事あたわず、愚將の讒に傾き、流言に眩して、賢を捨て佞を用ひ、つゐに天命に反して、國おとろへ身苦しむにいたる、道の眞粹を辨へざると可謂、明將は不可及、闇將は不可論、志を立て大道を修するもの、信じて道により、敎を盡す時は、久しからずして其德をなし其才を生ず、其例に隨てひとしく修するに似たるも、心道を不信、敎に力を用ゆる所なき時は、識縮まり氣屈して、却て本性を失するあり、信疑の證、あやまたざる所なり、人人形氣の無量なる、盡すべからずといへども、道に化すると化せざるとは、此二境に不出、

新字:○凡そ道の真粋を得ると不得と、唯信疑のふたつに出でず、人其道を信ずるときは不尽の事なし、事物を尽す時は、見る所障なく、聞ところ滞る事なし、而後泰然として道により、己につく事なし、明将の天を信じて、其命に随つて行蔵す、道の真粋を得ると謂べし、人其道を疑ふときは、尽すべきを尽さず、尽さゞるときは事物にくらし、故に見る所貞かならず、聞所やすんずる事なし、而後暗然として、己につゐて道に立事あたわず、愚将の讒に傾き、流言に眩して、賢を捨て佞を用ひ、つゐに天命に反して、国おとろへ身苦しむにいたる、道の真粋を弁へざると可謂、明将は不可及、闇将は不可論、志を立て大道を修するもの、信じて道により、教を尽す時は、久しからずして其徳をなし其才を生ず、其例に随てひとしく修するに似たるも、心道を不信、教に力を用ゆる所なき時は、識縮まり気屈して、却て本性を失するあり、信疑の証、あやまたざる所なり、人人形気の無量なる、尽すべからずといへども、道に化すると化せざるとは、此二境に不出、

書き下し

○凡そ道の眞粹を得ると不得と、唯信疑のふたつに出でず、人其道を信ずるときは不盡の事なし、事物を盡す時は、見る所障なく、聞ところ滯る事なし、而後泰然として道により、己につく事なし、明將の天を信じて、其命に隨つて行藏す、道の眞粹を得ると謂べし、人其道を疑ふときは、盡すべきを盡さず、盡さゞるときは事物にくらし、故に見る所貞かならず、聞所やすんずる事なし、而後暗然として、己につゐて道に立事あたわず、愚將の讒に傾き、流言に眩して、賢を捨て佞を用ひ、つゐに天命に反して、國おとろへ身苦しむにいたる、道の眞粹を辨へざると可謂、明將は不可及、闇將は不可論、志を立て大道を修するもの、信じて道により、敎を盡す時は、久しからずして其德をなし其才を生ず、其例に隨てひとしく修するに似たるも、心道を不信、敎に力を用ゆる所なき時は、識縮まり氣屈して、却て本性を失するあり、信疑の證、あやまたざる所なり、人人形氣の無量なる、盡すべからずといへども、道に化すると化せざるとは、此二境に不出、

現代語訳

およそ道の真髄を得るか得ないかは、ただ信と疑の二つに尽きます。人がその道を信じるときは、尽くせないことがありません。事物を尽くすときは、見るところに妨げがなく、聞くところに滞りがありません。その後は泰然として道により、自分に執着することがありません。聡明な将が天を信じて、その命に従って出処進退するのは、道の真髄を得たというべきです。人がその道を疑うときは、尽くすべきことを尽くしません。尽くさないときは事物に暗くなります。このため見るところが定まらず、聞くところに安んじることがありません。その後は暗然として、自分について道に立つことができません。愚かな将が讒言に傾き、流言に惑って、賢者を捨てて佞臣を用い、ついに天命に反して国が衰え、わが身も苦しむに至るのは、道の真髄をわきまえなかったと言うべきです。聡明な将には及ぶことができず、暗愚な将は論じるに値しません。志を立てて大道を修める者が、信じて道により、教えを尽くすときは、久しからずしてその徳を成し、その才を生じます。同じように修めているようでも、心が道を信じず、教えに力を用いるところがないときは、識見が縮まり気が屈して、かえって本性を失うことがあります。信疑の証はこの通りで、誤りありません。人々の形気は無量で尽くすことはできませんが、道に化するかしないかは、この二つの境を出ません。

解説

学びが身につくかどうかを、能力ではなく、信じて取り組むか疑って取り組むかの違いに見ています。信じて尽くす人は見聞が広がり、疑って尽くさない人は物事に暗くなる、という対比です。ここでの信は盲信ではなく、取り組むと決めて最後までやり切る姿勢と読めます。管理職は、新しい方針を自分が疑ったまま部下に伝えれば、部下も力を尽くしません。納得できない点は先に確かめ、そのうえで腹を決めて取り組む態度が組織を動かします。
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この章句が説くこと

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