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日本伝治乱要決 / 應亂卷・応乱の始まり:乱機・時世・物定

舊典曰、日月を旗とし雷龍を兵とすれば、賊師千軍頭を延て刃を待と云へり、邪正死活を辨ぜざれば、神武の兵に達する事あるべからず、我邦の兵極陽を尊んで陰微を禁ず、雜兵家の企て及ばざる所なり、陽なるが故によく正し、正くしてよく動く、故に邪兵姦謀をなすものに逢て勝負をかくる事、磐石の鷄卵を推すが如し、彼よりして摧け、かれよりして破る、千里縱橫とゞめらるゝ所なし、神軍の妙察せずんばあるべからず、亂機第一機に急寬あり、東風起て雨降るは、機の急なるものなり、炎暑前年の冬至に萌す、機の寬なるものなり、寬急ことなりといへども、其機違ふ事なし、治中の亂あり、亂中の亂あり、其機に達せずんば、亂に應じて社稷を全ふする事あるべからず、時世第二古を知てみだりに今を謀るときは其事行はるべからず、今を知て古にくらき時は其功空虛となる、天に代つて民を救ふの心あらば、覇を取て功のすみやかなるあり、自立して現功をなす事あり、守て機を見るの時あり、時世に達するを良將とし、時世にくらきを暗將といふ、應亂の要柄なり、物定第三戰場非常の地といへども、其物今日の物にあらずといふ事なし、つねに物をよく定めて其節を違へざれば、其物の動て用をなす所も現然たり、國家の物悉く定て、變に應ずる所正しければ、萬敵恐るゝにたる事なし、

新字:旧典曰、日月を旗とし雷竜を兵とすれば、賊師千軍頭を延て刃を待と云へり、邪正死活を弁ぜざれば、神武の兵に達する事あるべからず、我邦の兵極陽を尊んで陰微を禁ず、雑兵家の企て及ばざる所なり、陽なるが故によく正し、正くしてよく動く、故に邪兵姦謀をなすものに逢て勝負をかくる事、磐石の鶏卵を推すが如し、彼よりして摧け、かれよりして破る、千里縦横とゞめらるゝ所なし、神軍の妙察せずんばあるべからず、乱機第一機に急寛あり、東風起て雨降るは、機の急なるものなり、炎暑前年の冬至に萌す、機の寛なるものなり、寛急ことなりといへども、其機違ふ事なし、治中の乱あり、乱中の乱あり、其機に達せずんば、乱に応じて社稷を全ふする事あるべからず、時世第二古を知てみだりに今を謀るときは其事行はるべからず、今を知て古にくらき時は其功空虚となる、天に代つて民を救ふの心あらば、覇を取て功のすみやかなるあり、自立して現功をなす事あり、守て機を見るの時あり、時世に達するを良将とし、時世にくらきを暗将といふ、応乱の要柄なり、物定第三戦場非常の地といへども、其物今日の物にあらずといふ事なし、つねに物をよく定めて其節を違へざれば、其物の動て用をなす所も現然たり、国家の物悉く定て、変に応ずる所正しければ、万敵恐るゝにたる事なし、

書き下し

舊典曰、日月を旗とし雷龍を兵とすれば、賊師千軍頭を延て刃を待と云へり、邪正死活を辨ぜざれば、神武の兵に達する事あるべからず、我邦の兵極陽を尊んで陰微を禁ず、雜兵家の企て及ばざる所なり、陽なるが故によく正し、正くしてよく動く、故に邪兵姦謀をなすものに逢て勝負をかくる事、磐石の鷄卵を推すが如し、彼よりして摧け、かれよりして破る、千里縱橫とゞめらるゝ所なし、神軍の妙察せずんばあるべからず、亂機第一機に急寬あり、東風起て雨降るは、機の急なるものなり、炎暑前年の冬至に萌す、機の寬なるものなり、寬急ことなりといへども、其機違ふ事なし、治中の亂あり、亂中の亂あり、其機に達せずんば、亂に應じて社稷を全ふする事あるべからず、時世第二古を知てみだりに今を謀るときは其事行はるべからず、今を知て古にくらき時は其功空虛となる、天に代つて民を救ふの心あらば、覇を取て功のすみやかなるあり、自立して現功をなす事あり、守て機を見るの時あり、時世に達するを良將とし、時世にくらきを暗將といふ、應亂の要柄なり、物定第三戰場非常の地といへども、其物今日の物にあらずといふ事なし、つねに物をよく定めて其節を違へざれば、其物の動て用をなす所も現然たり、國家の物悉く定て、變に應ずる所正しければ、萬敵恐るゝにたる事なし、

現代語訳

旧典に、日月を旗とし雷龍を兵とすれば、賊師は千の軍が頭を延ばして刃を待つ、といいます。邪正や死活を弁えなければ、神武の兵に達することはできません。我が国の兵は極陽を尊んで陰微を禁じます。雑兵家(雑多な兵法家)の企ても及ばないところです。陽であるからよく正しく、正しくてよく動きます。ゆえに邪兵や姦謀をなす者に逢って勝負をかけるのは、磐石が鶏卵を押しつぶすようなものです。彼のほうから砕け、彼のほうから破れます。千里縦横に止められる所がありません。神軍の妙は察しなければなりません。乱機第一 機には急と寛があります。東風が起こって雨が降るのは、機の急なものです。炎暑が前年の冬至に萌すのは、機の寛なものです。寛急は異なっても、その機は違うことがありません。治の中の乱があり、乱の中の乱があります。その機に達しなければ、乱に応じて社稷(国家)を全うすることはできません。時世第二 古を知って妄りに今を謀るときは、その事は行われません。今を知って古に暗いときは、その功は空虚になります。天に代わって民を救う心があるならば、覇(力による道)を取って功の速やかなものがあり、自立して現実の功をなすことがあり、守って機を見る時があります。時世に達する者を良将とし、時世に暗い者を暗将といいます。応乱の要の柄です。物定第三 戦場の非常の地といっても、その物は今日の物でないということはありません。常に物をよく定めて、その節を違えなければ、その物が動いて用をなす所も明らかです。国家の物がことごとく定まって、変に応じる所が正しければ、万の敵も恐れるに足りません。

解説

応乱巻の冒頭は、日月を旗とする正しい兵は邪な兵に勝つという旧典の言葉から始まります。乱機の章は、変化の兆しには急と緩の二つがあると述べ、時世の章は、古と今の両方を知る将を良将と呼びます。物定の章は、備えを平時から定めておけば変に応じられると説きます。原文の戦いの言葉は歴史的な文脈として読み、現代の管理職は、急変と緩やかな変化の両方を見抜き、平時に役割や備えを決めておく実践として受け取れます。
『人生の方程式』の表紙

人生を、一行の式にしてみた。

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この章句が説くこと

『日本伝治乱要決』高山健貞応乱乱機時世物定

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