日本伝治乱要決 / 治基卷・治基巻・通塞、国相、国俗の三条
通塞第六國家のつねに治て亂れざるは上下人情の通ずるによれり、人情よく通ずるときは萬物從つてよく流通す、亂れん事を欲するとも得んや、國家の常に騷忙として治まらざるは、上下人情の塞するによれり、人情塞する時は、萬物從つて弊塞す、治まらん事を欲するとも得んや、國家治亂の大事尤通塞の二つにあり、上其位を失はず、下其業を勤むる時は、不期して人情通ず、上其位に立と能はず、下その業を廢する時は、忽然として人情塞す、道によると私につくと、斷ぜずんばあるべからず、國相第七國に大小あり、險夷あり、寒暖あり、通塞あり、肥瘠あり、地脈のわかるゝ所一樣ならざる所あり、人間の厚薄、五穀の乾熟、魚鹽麻桑の有無、樹木金鐵の用、ことく〱國相によつて國益をなす、治術の大なるまた爰を辨知するに出る事なし、國俗第八國を治るには人を治むるを主となす、人を治るは其質を知るにあり、其質を知るは國俗を辨ずるにあり、人間は萬物の靈なり、諸國人々ことなるとなしといへども、其生ずる所の國相によつて氣禀ひとしからず、習慣性となつて所長所短各異なり、その異なるをよく辨じて長ずる所を用ひ、短なる所を攻めざる時は、人國用をなさずといふ事なし、短をにくんて長を失するときは人却て國害をなす、國俗を辨ずる人を治むるの樞要なり、其質また五の外に出ず、其本に委しければなんぞ人を失ふ事あらむ、
新字:通塞第六国家のつねに治て乱れざるは上下人情の通ずるによれり、人情よく通ずるときは万物従つてよく流通す、乱れん事を欲するとも得んや、国家の常に騷忙として治まらざるは、上下人情の塞するによれり、人情塞する時は、万物従つて弊塞す、治まらん事を欲するとも得んや、国家治乱の大事尤通塞の二つにあり、上其位を失はず、下其業を勤むる時は、不期して人情通ず、上其位に立と能はず、下その業を廃する時は、忽然として人情塞す、道によると私につくと、断ぜずんばあるべからず、国相第七国に大小あり、険夷あり、寒暖あり、通塞あり、肥瘠あり、地脈のわかるゝ所一様ならざる所あり、人間の厚薄、五穀の乾熟、魚塩麻桑の有無、樹木金鉄の用、ことく〱国相によつて国益をなす、治術の大なるまた爰を弁知するに出る事なし、国俗第八国を治るには人を治むるを主となす、人を治るは其質を知るにあり、其質を知るは国俗を弁ずるにあり、人間は万物の霊なり、諸国人々ことなるとなしといへども、其生ずる所の国相によつて気禀ひとしからず、習慣性となつて所長所短各異なり、その異なるをよく弁じて長ずる所を用ひ、短なる所を攻めざる時は、人国用をなさずといふ事なし、短をにくんて長を失するときは人却て国害をなす、国俗を弁ずる人を治むるの枢要なり、其質また五の外に出ず、其本に委しければなんぞ人を失ふ事あらむ、
書き下し
通塞第六國家のつねに治て亂れざるは上下人情の通ずるによれり、人情よく通ずるときは萬物從つてよく流通す、亂れん事を欲するとも得んや、國家の常に騷忙として治まらざるは、上下人情の塞するによれり、人情塞する時は、萬物從つて弊塞す、治まらん事を欲するとも得んや、國家治亂の大事尤通塞の二つにあり、上其位を失はず、下其業を勤むる時は、不期して人情通ず、上其位に立と能はず、下その業を廢する時は、忽然として人情塞す、道によると私につくと、斷ぜずんばあるべからず、國相第七國に大小あり、險夷あり、寒暖あり、通塞あり、肥瘠あり、地脈のわかるゝ所一樣ならざる所あり、人間の厚薄、五穀の乾熟、魚鹽麻桑の有無、樹木金鐵の用、ことく〱國相によつて國益をなす、治術の大なるまた爰を辨知するに出る事なし、國俗第八國を治るには人を治むるを主となす、人を治るは其質を知るにあり、其質を知るは國俗を辨ずるにあり、人間は萬物の靈なり、諸國人々ことなるとなしといへども、其生ずる所の國相によつて氣禀ひとしからず、習慣性となつて所長所短各異なり、その異なるをよく辨じて長ずる所を用ひ、短なる所を攻めざる時は、人國用をなさずといふ事なし、短をにくんて長を失するときは人却て國害をなす、國俗を辨ずる人を治むるの樞要なり、其質また五の外に出ず、其本に委しければなんぞ人を失ふ事あらむ、
現代語訳
通塞第六。国家がいつも治まって乱れないのは、上下の人情が通じ合うことによります。人情がよく通じるときは、万物もしたがってよく流通します。乱れようとしても乱れることができましょうか。国家がいつも騒がしく慌ただしくて治まらないのは、上下の人情がふさがることによります。人情がふさがるときは、万物もしたがって弊害にふさがれます。治まろうとしても治まることができましょうか。国家の治乱の大事は、もっとも通塞の二つにあります。上がその位を失わず、下がその業を勤めるときは、期せずして人情が通じます。上がその位に立つことができず、下がその業を廃するときは、たちまち人情がふさがります。道によるか私につくかは、断じなければなりません。国相第七。国には大小があり、険しいところと平らなところがあり、寒暖があり、通じるところとふさがるところがあり、肥えたところと痩せたところがあります。地脈の分かれるところは一様ではありません。人間の厚薄、五穀の乾きと実り、魚・塩・麻・桑の有無、樹木・金・鉄の用など、ことごとく国相によって国の益をなします。治術の大なるものもまた、ここを弁え知ることから出ないのです。国俗第八。国を治めるには人を治めることを主とします。人を治めるには、その質を知ることです。その質を知るには、国俗を弁えることです。人間は万物の霊です。諸国の人々は異なることはないといっても、その生まれる国相によって気稟(生まれつきの気質)は同じではありません。習慣が性となって、長所と短所はそれぞれ異なります。その異なりをよく弁えて長所を用い、短所を攻めないときは、人が国の用にならないことはありません。短所を憎んで長所を失うときは、人はかえって国の害となります。国俗を弁えることは、人を治める枢要です。その質もまた五つの外に出ません。その本に詳しければ、どうして人を失うことがありましょうか。
解説

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