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夢中問答集 / 『夢中問答集』疑うべきか疑わざるべきか

問公案を看について、疑と不疑との兩論あり。何れをか本とすべきや。 答宗師の手段はすべて定まれる途轍なし。擊石火のごとく、閃電光に似たり。有る時はうたがひて看よとしめし、有る時はうたがふことなかれといふ。皆な是れ學者に對する時に直下に垂示する語なり。知識の胸の中にかねてたくはへ置きたる法門にあらず。是の故にこれを觀面提持となづけたり。石火電光のあとをとめて定論すべからず。若し是れ明眼の宗師ならば疑としめし、不疑といふもすべて妨げなし。若し是れ明眼ならずば、疑不疑ともに學者の眼をくらますべし。

新字:問公案を看について、疑と不疑との両論あり。何れをか本とすべきや。 答宗師の手段はすべて定まれる途轍なし。撃石火のごとく、閃電光に似たり。有る時はうたがひて看よとしめし、有る時はうたがふことなかれといふ。皆な是れ学者に対する時に直下に垂示する語なり。知識の胸の中にかねてたくはへ置きたる法門にあらず。是の故にこれを観面提持となづけたり。石火電光のあとをとめて定論すべからず。若し是れ明眼の宗師ならば疑としめし、不疑といふもすべて妨げなし。若し是れ明眼ならずば、疑不疑ともに学者の眼をくらますべし。

書き下し

問公案を看について、疑と不疑との兩論あり。何れをか本とすべきや。 答宗師の手段はすべて定まれる途轍なし。擊石火のごとく、閃電光に似たり。有る時はうたがひて看よとしめし、有る時はうたがふことなかれといふ。皆な是れ學者に對する時に直下に垂示する語なり。知識の胸の中にかねてたくはへ置きたる法門にあらず。是の故にこれを觀面提持となづけたり。石火電光のあとをとめて定論すべからず。若し是れ明眼の宗師ならば疑としめし、不疑といふもすべて妨げなし。若し是れ明眼ならずば、疑不疑ともに學者の眼をくらますべし。

現代語訳

問:公案を看るについて、疑う、疑わないの両説がある。どちらを根本とすべきか。 答:宗師の手だてには、すべて定まった筋道がない。火打ち石の火のようであり、稲妻の光に似ている。あるときは疑って看よと示し、あるときは疑ってはならないと言う。これらはみな学人に対したとき、その場で直下に垂示する語である。師の胸の中にあらかじめ蓄えておいた教えではない。だからこれを、面と向かって提示する観面提持と名づけた。石火電光のあとを追って、定まった論にしてはならない。もし明眼の宗師であれば、疑えと示し、疑うなと言うのも、すべて妨げがない。もし明眼でなければ、疑うも疑わないも、ともに学人の眼をくらますだろう。

解説

公案は疑って看るべきか、疑わずに看るべきかという二つの説のどちらが正しいかを問う一節です。夢窓は、どちらかに決めることを退けます。宗師は、そのとき目の前の学人に対して語る。ある時は疑えと言い、ある時は疑うなと言い、その言葉を一般論にしてはならないというのです。ただし、明眼の師なら疑わせても疑うなと言っても妨げはなく、そうでなければどちらも学人の眼をくらますと添えます。現代の仕事でも、助言は相手と状況に応じて変わります。他人の成功法則を一般則にせず、今の自分に当てはまるかを見極める大切さを教えます。
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この章句が説くこと

公案疑と不疑観面提持宗師石火電光明眼

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