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名将言行録 / 『名将言行録』鍋島直茂 城より人、人より心

○又曰く、城郭抔は入りて、入らぬものなり。能き大將、能き人持ちたるは、城郭如何にも入るべし、惡き大將の人持ちたるは、城郭堅固なりとも、無益なりと。 ○又曰く、大將の人を持つことは情なり、但し情深く掛けても、心持惡ければ無益なり、大將は無慾に慈悲深く、如何にも直にすべし、左樣なる人には、人集まる、自づと集たる人は、一騎當千たるべしと。 ○又曰く、如何に知音を持つとも、頼まずに只我身一つと心得べしと。 ○又曰く、惣て俸祿は勝軍の時に用に立てども、負軍になりては、一言の情を掛たる者ならでは、用に立たずと。

新字:○又曰く、城郭抔は入りて、入らぬものなり。能き大将、能き人持ちたるは、城郭如何にも入るべし、悪き大将の人持ちたるは、城郭堅固なりとも、無益なりと。 ○又曰く、大将の人を持つことは情なり、但し情深く掛けても、心持悪ければ無益なり、大将は無慾に慈悲深く、如何にも直にすべし、左様なる人には、人集まる、自づと集たる人は、一騎当千たるべしと。 ○又曰く、如何に知音を持つとも、頼まずに只我身一つと心得べしと。 ○又曰く、惣て俸禄は勝軍の時に用に立てども、負軍になりては、一言の情を掛たる者ならでは、用に立たずと。

書き下し

○又曰く、城郭抔は入りて、入らぬものなり。能き大將、能き人持ちたるは、城郭如何にも入るべし、惡き大將の人持ちたるは、城郭堅固なりとも、無益なりと。 ○又曰く、大將の人を持つことは情なり、但し情深く掛けても、心持惡ければ無益なり、大將は無慾に慈悲深く、如何にも直にすべし、左樣なる人には、人集まる、自づと集たる人は、一騎當千たるべしと。 ○又曰く、如何に知音を持つとも、頼まずに只我身一つと心得べしと。 ○又曰く、惣て俸祿は勝軍の時に用に立てども、負軍になりては、一言の情を掛たる者ならでは、用に立たずと。

現代語訳

また言った。「城郭などは、入るようで入らないものだ。よい大将が優れた人を抱えているなら、城郭はいかにも必要だ。悪い大将が人を抱えているなら、城郭がいかに堅固でも無益である」。 また言った。「大将が人を持つ基本は情である。ただし情を深くかけても、心の持ち方が悪ければ無益である。大将は無欲で慈悲深く、実直にすべきである。そういう人のもとには人が集まる。自然に集まった人は、一騎当千の者となるだろう」。 また言った。「たとえどれほど知り合いを持っても、頼らずに、ただ我が身一つと心得よ」。 また言った。「総じて俸禄は勝ち戦の時には役に立つが、負け戦になった時には、一言の情をかけた者でなければ役に立たない」。

解説

直茂のことばは、人を集める力の本質を問います。どれほど堅固な城や高い俸禄があっても、大将の心が悪ければ人はついてこない、むしろ無欲で慈悲深く、実直な人のもとに自然と人が集まる、という指摘です。現代の企業でも、設備や報酬の条件が良いだけでは、苦境に人は残りません。順境の時だけでなく、不調の時にこそ、一言の情をかけた経験が効いてくるという教えは、経営者や管理職への示唆になります。なお、これらは直茂の言葉として伝わるものです。
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この章句が説くこと

直茂城郭人望無欲慈悲俸禄と情

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