古典を学びたいすべての人に 法人向けワークシート法人向けワークシート

名将言行録 / 『名将言行録』黑田孝高 褒賞を辞して逍遙

○孝高、九州を平げて後、大坂へ上りければ、家康、今度の大功を感じ、領地を賜はるべき間、望むべし、其上執奏して官位を進め賜はるべしと内意ありければ、孝高、尊命身に餘り有り難きことながら、年老、殊に病者にて、精力衰へ候ひぬ。愚息甲斐守に、筑前の國を下し賜はりし上は、甲斐守養育を受けて安樂に餘命を送り度、官祿の望は聊か之なく候、願くは身の暇賜はり、煙霞泉石を友とし、逍遙自適仕ること、是亦歸後の賜もの、何事か之に如んと申ければ、家康聞て深く感歎し、今の世に處し、古を行ふ者如水の外、又誰かあらんと言はれしとぞ。

新字:○孝高、九州を平げて後、大坂へ上りければ、家康、今度の大功を感じ、領地を賜はるべき間、望むべし、其上執奏して官位を進め賜はるべしと内意ありければ、孝高、尊命身に余り有り難きことながら、年老、殊に病者にて、精力衰へ候ひぬ。愚息甲斐守に、筑前の国を下し賜はりし上は、甲斐守養育を受けて安楽に余命を送り度、官禄の望は聊か之なく候、願くは身の暇賜はり、煙霞泉石を友とし、逍遥自適仕ること、是亦帰後の賜もの、何事か之に如んと申ければ、家康聞て深く感嘆し、今の世に処し、古を行ふ者如水の外、又誰かあらんと言はれしとぞ。

書き下し

○孝高、九州を平げて後、大坂へ上りければ、家康、今度の大功を感じ、領地を賜はるべき間、望むべし、其上執奏して官位を進め賜はるべしと内意ありければ、孝高、尊命身に餘り有り難きことながら、年老、殊に病者にて、精力衰へ候ひぬ。愚息甲斐守に、筑前の國を下し賜はりし上は、甲斐守養育を受けて安樂に餘命を送り度、官祿の望は聊か之なく候、願くは身の暇賜はり、煙霞泉石を友とし、逍遙自適仕ること、是亦歸後の賜もの、何事か之に如んと申ければ、家康聞て深く感歎し、今の世に處し、古を行ふ者如水の外、又誰かあらんと言はれしとぞ。

現代語訳

孝高が九州を平定した後、大坂へ上ると、家康は、今度の大功に感じて、領地を賜るだろうから望みを言いなさい、そのうえ奏上して官位を進めさせようと、内意を伝えました。孝高は、ありがたい仰せで身に余りますが、年老いて、ことに病人であり、精力も衰えました。愚息の甲斐守に筑前の国を下されたうえは、甲斐守の養いを受けて安楽に余命を送りたく、官位や禄の望みは少しもございません。どうか暇を頂き、煙霞や泉石を友として逍遙自適しますことは、これも帰隠の後に与えられるものであり、何がこれに及ぶでしょうかと申しました。家康は聞いて深く感嘆し、今の世にあって古の行いをする者は、如水のほかに誰がいるだろうかと言ったということです。

解説

功を挙げた孝高が、家康の領地や官位の申し出を断り、息子に与えられた国で余生を静かに送りたいと述べた場面です。功績の絶頂で身を引く判断は、権力の近くで警戒されやすい有能な人物の処世術としても、純粋な隠居の志としても読めます。伝わる話であり、本心がどこにあったかは確かめようがありません。現代でも、功を挙げたとき、役職や報酬を追うか、後進に道を譲るかは悩みどころです。身の引き際をどう設計するかは、管理職の重要な課題です。
『人生の方程式』の表紙

人生を、一行の式にしてみた。

志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。

本の中身を見る

この章句が説くこと

黒田孝高如水辞退引き際家康隠居

関連する章句

本2冊(人生の方程式・人生の教科書)+師導1か月=700円本を見る