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名将言行録 / 『名将言行録』豐臣秀吉 早めの遺言と正邪

これは、德川の天下になつてから後の作り話ならん ○秀吉曰く、世人死に臨み遺言すれども病甚だ重き時は、精神昏昧して、言ふこと能はざるに至るものなり。我は之に反し、平安無事の時遺言すべしとありて、言はれけるは、古より正しき時は、初め弱くとも、末に至りて必ず强し、邪なる時は、初め善しと雖も、末に至りて必ず害あり、愼まずんばあるべからずと。

新字:これは、徳川の天下になつてから後の作り話ならん ○秀吉曰く、世人死に臨み遺言すれども病甚だ重き時は、精神昏昧して、言ふこと能はざるに至るものなり。我は之に反し、平安無事の時遺言すべしとありて、言はれけるは、古より正しき時は、初め弱くとも、末に至りて必ず強し、邪なる時は、初め善しと雖も、末に至りて必ず害あり、慎まずんばあるべからずと。

書き下し

これは、德川の天下になつてから後の作り話ならん ○秀吉曰く、世人死に臨み遺言すれども病甚だ重き時は、精神昏昧して、言ふこと能はざるに至るものなり。我は之に反し、平安無事の時遺言すべしとありて、言はれけるは、古より正しき時は、初め弱くとも、末に至りて必ず强し、邪なる時は、初め善しと雖も、末に至りて必ず害あり、愼まずんばあるべからずと。

現代語訳

これは、徳川の天下になってから後の作り話だろう。 秀吉が言いました。世の人は死に臨んで遺言するが、病が重い時は精神が朦朧として、言うことができないほどになるものだ。私はそれと反対に、平安無事の時に遺言する、と言って、次のように語りました。昔から、正しいものは、初めは弱くても、終わりには必ず強くなる。邪なものは、初めはよく見えても、終わりには必ず害がある。慎まなければならない、と。

解説

頁をまたぐ形で入った注記として、菊池寛が前の遺言を、徳川の世になってからの作り話だろうと述べる一行が付いています。そのうえで、秀吉の言葉として、遺言は病が重くなる前の平穏な時に残すべきだ、という話が続きます。人が弱ってから大事を決めるのは遅い、という考え方は、事業承継や後継者への引き継ぎにも通じます。後半の、正しいものは初めは弱くとも終わりに強い、という言葉は、短期の見栄えより長期の筋を重んじる姿勢と読めます。
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この章句が説くこと

秀吉遺言作り話事業承継正邪慎み

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