名将言行録 / 『名将言行録』島津家久 評・敵味方の佳話
谷川大膳も家久も、鎭種も日本武士の精華であらう。濟々しき一場の佳話である
新字:谷川大膳も家久も、鎮種も日本武士の精華であらう。済々しき一場の佳話である
書き下し
谷川大膳も家久も、鎭種も日本武士の精華であらう。濟々しき一場の佳話である
現代語訳
谷川大膳も家久も鎮種も、日本の武士の精華であろう。美しく整った一場の佳い話である。
解説
前の章句を受けた、菊池寛の短い評です。使者の谷川大膳、敵将の高橋鎮種、そして双方を敬った島津家久の三人を、そろって日本の武士の精華と呼びます。菊池寛は評で、戦時下の1943年に、武士の美しさを称えるかたちで書いています。敵味方を超えて互いの義を認め合う話を、美談として受け取った評価です。現代の目では武士道の理想化と見ることもできますが、ここで注目できるのは、立場の違う者同士が互いに誠実さを認め合う関係の価値です。仕事の場でも、競い合う相手への敬意が信頼の基礎になることがあります。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
菊池寛の評武士の精華佳話敵味方義敬意
関連する章句
-
『初学訓』巻之二一およそ、人となりては、常に愛敬の心をたもちて、少時も失ふべからず。愛とは、人を憐むをいふ。人をにくみ疎んぜざるなり。其交の親しき疎きによりて、愛の厚薄品はかはれども、すべて疎きも親しきも、愛せずといふこと無かるべし。敬とは、人をうやまふをいふ。人を侮り軽んぜざるなり。其位の尊き卑き品によりて、敬の浅深はかはれども、すべて、敬ひ侮るべからず。愛はしたしきより生じ、敬は貴きより生ずれども、うときをも愛し、いやしきをも敬するは、真の愛敬なり。親疎貴賤、すべて愛敬するは仁なり。親疎貴賤の品によりて、厚薄浅深あるは義なり。愛敬の二は、善心なり。善を行ふとは、愛敬を行ふなり。是、人倫を親むの道、即ち、天地につかへ奉る道なり。
-
名将言行録・『名将言行録』上杉輝虎 敵将が守った血脈○輝虎、既に中澤を誅して後、河田豐前守、長尾小四郞、上村甚右衞門以下五十餘人をして、中澤が城を攻めしむ。城には中澤が弟右衞門督及び、板持美濃守三百餘人にて籠りしが、終に叶はず城を火にして自害しける時、美濃守自分の女童を手に掛け、長兵衞が妻及び、九歳の女子を始め、二十人計りありける女を、庭の植込の中に立ち忍ばせ、館の燃る煙を避けしめ、事平ぐの後に至らば、大和國多武峰に行て、某が親き行脚僧都を頼み給ひ、責めては殿の血脈を遺させられんこそ、本意なれと言ければ、皆敎の儘に隱れたり。然る後今は心易しとて、腹を切れば、城は忽ち落にけり。頓て河田が手の者、此女子共を生捕り春日山へ將て行き、輝虎に斯と告ぐ。輝虎聞て、板持美濃は智勇全備の士なることは、汝等も知る所なり、今度宮野の落城女童まで殘らず取仕廻たる其中に、何故に此者計り助けて置きぬらんと案ずるに、長兵衞、淸和の家流として、世に志願ある者なれば、血脈を此度絶さんこと是非に及ばずと思ふ所にぞあらん。妻女は定めて、懷胎にてもあるか、若し男子抔產せば、猶故ある志なり、誠に美濃が所爲義に當れり。然るを輝虎、心なく之を絶つこと無道なり。殊更女の身なれば、何の科ありてか之を誅すべき、唯助けて何方へも便ある所へ送るべしと言はれければ、三將別て痛はり、多武峰にぞ送りける。
-
論語・子張篇子張曰く、士は危うきを見ては命を致し、得るを見ては義を思い、祭には敬を思い、喪には哀を思う。其れ可なるのみ。
-
『講孟余話』盡心上 第三十四章是れ上章「其の有に非ずして之を取るは義に非ず」と云ふに因りて、陳仲子の義、大義とするに足らず、只是れ簞食豆羹を舎つるの義なるを云ふ。陳仲子の事は、滕文公下篇末章に詳らかなり。仲子兄を避け母を離れ、吾が禄を食はず、これ親戚・君臣・上下を亡みするなり。已に人の大倫を外したる人なれば、他の小義は復た云ふに足る者なし。今斉国大なる如しと云へども、畢竟簞食豆羹と異なることなし。孟子論ずる所は物の大小に非ず、乃ち義の大小なり。是れを以て知るべし、聖人は人倫の至りにて、聖人の道は又人倫を以て大綱とす。受与の際に至りては、特に其の細目のみ。夷・斉の餓死する如くにして君臣の義あり、匡章の養はれざる如くにして、却つて父子の親ありと知るべし。
-
『武士訓』卷三・第6段たとえば。人ありて。命を千貫萬貫にかへんかといふとも。かゆるものあるべからず。さほど大切なる命なれども。義によつて拋こと。塵よりも輕し。しかるときは。義ほどにおもきもの。世にあるべからず。源致雄歌に「いのちをばかろきになしてものゝふの道よりおもき道やらめやは(風雅集に見えたり。)
-
呂氏春秋・髙義①君子の自ら行うや、動けば必ず義に縁る。行うこと必ず義に誠なれば、俗、之を窮せりと謂うと雖も、通ずるなり。行うこと義に誠ならず、動くこと義に縁らざれば、俗、之を通ぜりと謂うと雖も、窮せるなり。然らば則ち君子の窮通は、俗に異なる者有るなり。故に功に當りて以て賞を受け、罪に當りて以て罰を受く。賞當たらざれば、之に與うと雖も必ず辭す。罰誠に當たれば、之を赦すと雖も外けず。之を國に度れば、必ず利長久ならん。長久の主に於ける、必ず宜しく內は心に反して慚ぢずして然る後動くべし。