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名将言行録 / 『名将言行録』長曾我部元親 十五条の国づくり

○天正二年、元親既に土佐を平げて曰く、倩々國家の興亡を考ふるに、上禮あり下義ある時は、其國必ず興り、上禮なく、下義なければ其國必ず亡ぶ、下義ありと雖も、上禮を知らざる時は其國變じ易し、上禮を知れば下義を知らざることなく、其國化し易し、故に良將の國を治むる、能く忠邪を察し、賞罰を明にせりとて、十五條の法令を定む。其一に、神社佛閣破損せば修理を加へ、祭祀古法を濫すべからず。二に、三史五經七書、常に師に就て學ぶべき事。三に、弓馬劍銃等の藝は武士の業なれば、幼より師に就き學ぶべし、面々の力を量かり一藝に熟達すべし、多藝を欲せば術精しからず。四に、亂舞、笛、鼓、蹴鞠、茶會等技藝と雖も、略相嗜むべし。他國に至り赤面せば、恥辱たるべし。五に、衣食住節儉、六に、百姓に憐愍撫育を加へ、專ら清廉を用ふる事。十に、道橋堤等修理し、往還の累を除く事。十二に、海邊の城主、分に應じ兵船を持つ事。十五に、貴賤に寄らず、經濟の才ある者は申出づべしと。右等の條々なり。

新字:○天正二年、元親既に土佐を平げて曰く、倩々国家の興亡を考ふるに、上礼あり下義ある時は、其国必ず興り、上礼なく、下義なければ其国必ず亡ぶ、下義ありと雖も、上礼を知らざる時は其国変じ易し、上礼を知れば下義を知らざることなく、其国化し易し、故に良将の国を治むる、能く忠邪を察し、賞罰を明にせりとて、十五条の法令を定む。其一に、神社仏閣破損せば修理を加へ、祭祀古法を濫すべからず。二に、三史五経七書、常に師に就て学ぶべき事。三に、弓馬剣銃等の芸は武士の業なれば、幼より師に就き学ぶべし、面々の力を量かり一芸に熟達すべし、多芸を欲せば術精しからず。四に、乱舞、笛、鼓、蹴鞠、茶会等技芸と雖も、略相嗜むべし。他国に至り赤面せば、恥辱たるべし。五に、衣食住節倹、六に、百姓に憐愍撫育を加へ、専ら清廉を用ふる事。十に、道橋堤等修理し、往還の累を除く事。十二に、海辺の城主、分に応じ兵船を持つ事。十五に、貴賤に寄らず、経済の才ある者は申出づべしと。右等の条々なり。

書き下し

○天正二年、元親既に土佐を平げて曰く、倩々國家の興亡を考ふるに、上禮あり下義ある時は、其國必ず興り、上禮なく、下義なければ其國必ず亡ぶ、下義ありと雖も、上禮を知らざる時は其國變じ易し、上禮を知れば下義を知らざることなく、其國化し易し、故に良將の國を治むる、能く忠邪を察し、賞罰を明にせりとて、十五條の法令を定む。其一に、神社佛閣破損せば修理を加へ、祭祀古法を濫すべからず。二に、三史五經七書、常に師に就て學ぶべき事。三に、弓馬劍銃等の藝は武士の業なれば、幼より師に就き學ぶべし、面々の力を量かり一藝に熟達すべし、多藝を欲せば術精しからず。四に、亂舞、笛、鼓、蹴鞠、茶會等技藝と雖も、略相嗜むべし。他國に至り赤面せば、恥辱たるべし。五に、衣食住節儉、六に、百姓に憐愍撫育を加へ、專ら清廉を用ふる事。十に、道橋堤等修理し、往還の累を除く事。十二に、海邊の城主、分に應じ兵船を持つ事。十五に、貴賤に寄らず、經濟の才ある者は申出づべしと。右等の條々なり。

現代語訳

天正二年、元親はすでに土佐を平らげて言いました。つくづく国家の興亡を考えるに、上に礼があり下に義がある時は、その国は必ず興り、上に礼がなく下に義がなければ、その国は必ず亡びる。下に義があっても上が礼を知らない時は、その国は変わりやすい。上が礼を知れば、下が義を知らないことはなく、その国は教化しやすい。だから、良将が国を治めるには、よく忠邪を見分け、賞罰を明らかにするものだ、と言って、十五条の法令を定めました。その第一に、神社仏閣が破損したならば修理を加え、祭祀の古い法を乱してはならない。第二に、三史・五経・七書は、いつも師について学ぶこと。第三に、弓・馬・剣・銃などの芸は武士の業であるから、幼いころから師について学び、それぞれの力を量って一芸に熟達せよ。多くの芸を望めば、術は精しくならない。第四に、乱舞・笛・鼓・蹴鞠・茶会などの技芸も、だいたいたしなむべきである。他国へ行って赤面すれば、恥辱となる。第五に、衣食住は節倹にせよ。第六に、百姓にあわれみを加えて撫で育て、もっぱら清廉を用いること。第十に、道・橋・堤などを修理し、往来の障りを除くこと。第十二に、海辺の城主は、分に応じて兵船を持つこと。第十五に、身分の貴賤によらず、経済の才のある者は申し出ること、と。以上のような条々です。

解説

元親が定めたという十五か条の法令のうち、章句に引かれた数か条を記します。国の興亡は、上に礼があり下に義があるかで決まるという前置きが特徴で、続く条文は信仰、学問、一芸への熟達、教養、節倹、民への慈しみ、道や橋の整備、水軍、人材登用と、多方面にわたります。第三条の、多芸を望めば術は精しくならないという戒めは、現代のスキル形成にも通じます。末尾の、身分によらず経済の才ある者は申し出よ、は人材の発掘を促す条です。制度設計の文書として、優先順位の置き方を読むと参考になります。
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この章句が説くこと

長宗我部元親十五条上礼下義一芸に熟達節倹人材登用

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