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名将言行録 / 『名将言行録』上杉景勝 笑顔を見せた猿の一件

○景勝沈毅にして斷あり、喜慍色に形はさず、假すに溫顏を以てせず。威を以て常に人の恐る所となれり。家に愛する所の猿あり、能く人の意を解せり。嘗て景勝脫する所の巾帽を取り、自ら戴き、景勝の常に座する所に上りて、叉手點頭群下を指令する者の如し。景勝之を覘て、始て莞然たり。左右近臣景勝の笑顏を見しこと、唯此一事なりとぞ。 ○

新字:○景勝沈毅にして断あり、喜慍色に形はさず、仮すに温顔を以てせず。威を以て常に人の恐る所となれり。家に愛する所の猿あり、能く人の意を解せり。嘗て景勝脱する所の巾帽を取り、自ら戴き、景勝の常に座する所に上りて、叉手点頭群下を指令する者の如し。景勝之を覘て、始て莞然たり。左右近臣景勝の笑顔を見しこと、唯此一事なりとぞ。 ○

書き下し

○景勝沈毅にして斷あり、喜慍色に形はさず、假すに溫顏を以てせず。威を以て常に人の恐る所となれり。家に愛する所の猿あり、能く人の意を解せり。嘗て景勝脫する所の巾帽を取り、自ら戴き、景勝の常に座する所に上りて、叉手點頭群下を指令する者の如し。景勝之を覘て、始て莞然たり。左右近臣景勝の笑顏を見しこと、唯此一事なりとぞ。 ○

現代語訳

○景勝は落ち着いて強く、決断力があり、喜びも怒りも顔に出さず、温かい顔を人に見せなかった。威厳によって常に人に恐れられていた。家に愛する猿がいて、よく人の意を解した。かつて景勝が脱いだ頭巾や帽子を取り、自分でかぶり、景勝がいつも座る所に上って、手を組み頭を下げ、群下に指図する者のようにした。景勝はこれを見て、初めてにっこり笑った。左右の近臣が景勝の笑顔を見たのは、ただこの一度だけだったという。 ○

解説

景勝が常に感情を表さず、威厳で恐れられていた人物として描かれる、有名な逸話です。飼っていた猿が主人の帽子をかぶり、上座で指図の真似をしたとき、初めて近臣が主人の笑顔を見たと語られます。冷徹な印象の人物に人間味の一面を添える話ですが、実際の景勝がそうであったかは確かではありません。現代の職場でも、厳しい上司が見せる意外な一面に、周囲は安心を覚えることがあります。威厳と親しみやすさのバランスを、リーダーがどう取るかを考える材料になります。末尾の○には続く文がなく、原文の版面のままです。
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この章句が説くこと

景勝猿威厳沈毅笑顔近臣

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