古典を学びたいすべての人に 法人向けワークシート法人向けワークシート

名将言行録 / 『名将言行録』上杉輝虎 貝一声で整う陣列

○輝虎、嘗て村上義淸を伴ひ廣野に出て鷹狩せしに、義淸、此野へ御人數を召寄せ、備を立させられ列伍の整ひたるを見申度と言ふ。輝虎、安き程の御所望なり、只今見せ申さんとて。螺を一聲吹きけるに、四十騎計りの甲士、二隊馬塵を立てゝ馳來り、彼野に陣を布きたり。輝虎義淸に向ひ、此次には貝に連れて卽時に來る兼約なれども、先づ此二隊を見給へと申ければ、義淸倩々之を見て、斯く陣列正きことは天下に希なるべしと挨拶せり。輝虎戰に臨みて、俄に人衆を分けんと思ふ時は、馬を部隊の中に乘入り、八字十字に分くるに、其馬の行くなりに左右に分れて、自ら又部隊と爲る如し。槍持紛れ入てそこにありとは相見ゆれども、主人も來れと言ふこと能はず、槍持も行んとすること能はず。其法の嚴肅なること、概ね斯の如し。

新字:○輝虎、嘗て村上義清を伴ひ広野に出て鷹狩せしに、義清、此野へ御人数を召寄せ、備を立させられ列伍の整ひたるを見申度と言ふ。輝虎、安き程の御所望なり、只今見せ申さんとて。螺を一声吹きけるに、四十騎計りの甲士、二隊馬塵を立てゝ馳来り、彼野に陣を布きたり。輝虎義清に向ひ、此次には貝に連れて即時に来る兼約なれども、先づ此二隊を見給へと申ければ、義清倩々之を見て、斯く陣列正きことは天下に希なるべしと挨拶せり。輝虎戦に臨みて、俄に人衆を分けんと思ふ時は、馬を部隊の中に乗入り、八字十字に分くるに、其馬の行くなりに左右に分れて、自ら又部隊と為る如し。槍持紛れ入てそこにありとは相見ゆれども、主人も来れと言ふこと能はず、槍持も行んとすること能はず。其法の厳粛なること、概ね斯の如し。

書き下し

○輝虎、嘗て村上義淸を伴ひ廣野に出て鷹狩せしに、義淸、此野へ御人數を召寄せ、備を立させられ列伍の整ひたるを見申度と言ふ。輝虎、安き程の御所望なり、只今見せ申さんとて。螺を一聲吹きけるに、四十騎計りの甲士、二隊馬塵を立てゝ馳來り、彼野に陣を布きたり。輝虎義淸に向ひ、此次には貝に連れて卽時に來る兼約なれども、先づ此二隊を見給へと申ければ、義淸倩々之を見て、斯く陣列正きことは天下に希なるべしと挨拶せり。輝虎戰に臨みて、俄に人衆を分けんと思ふ時は、馬を部隊の中に乘入り、八字十字に分くるに、其馬の行くなりに左右に分れて、自ら又部隊と爲る如し。槍持紛れ入てそこにありとは相見ゆれども、主人も來れと言ふこと能はず、槍持も行んとすること能はず。其法の嚴肅なること、概ね斯の如し。

現代語訳

輝虎は、かつて村上義清を伴って広野に出て鷹狩りをしたところ、義清が、「この野へご人数を召し寄せ、備えを立てさせ、列伍の整ったところを拝見したい」と言いました。輝虎は、「たやすい所望です。ただいまお見せしよう」と、法螺貝を一声吹くと、四十騎ばかりの甲士が二隊、馬塵を立てて駆けて来て、その野に陣を布きました。輝虎は義清に向かい、「この次は貝に連れて即座に来る約束ですが、まずこの二隊をご覧あれ」と申しました。義清はつくづくこれを見て、「このように陣列が正しいのは、天下に稀でしょう」と挨拶しました。輝虎は、戦に臨んで急に人数を分けようと思うとき、馬を部隊の中に乗り入れ、八の字や十字に分けますが、その馬の行くままに左右に分かれて、自然にまた部隊となるようでした。槍持ちが紛れ込んでそこにいるとは見えるのですが、主人も「来い」と言うことができず、槍持ちも行こうとすることができません。その法の厳粛なことは、おおむねこのとおりです。

解説

村上義清に求められて、輝虎が法螺貝一つで二隊の甲士を野に整列させ、陣列の整い方を義清に感嘆させた話です。さらに、部隊を分けるときは馬を乗り入れるだけで左右に自然に分かれ、主人も槍持ちも勝手に動けないほど規律が厳しかったと伝わります。命令の合図と動き方が全員に共有されていれば、少人数でも組織は機能します。現代では、役割分担と合図の簡素さ、日頃の訓練が、緊急時の動きを決めるという点を考える材料になります。
『人生の方程式』の表紙

人生を、一行の式にしてみた。

志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。

本の中身を見る

この章句が説くこと

法螺貝陣列規律村上義清部隊合図

関連する章句

本2冊(人生の方程式・人生の教科書)+師導1か月=700円本を見る