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名将言行録 / 『名将言行録』小早川隆景 驕りの敗れを見る

○隆景、松永彈正少弼久秀が、信長に反するを聞き、久秀が謀反時節少し早し、思ふに本意を遂げずして自亡せんと言ひしが、果して然り。又賤ケ嶽の役、佐久間盛政、中川清秀を討取り、其儘其場を取敷たりと言を聞きて、盛政重ねての合戰は、必ず打負べし、此合戰勝て引取り陣を据なば、秀吉假令勝利を得るとも、五度も十度も、手を碎き汗を握り合戰を遂ぐべし、盛政若く盛なるが故に、大に驕りて、彼我の勢を計りて終の勝を全くする謀を知らず、今見よ、今見よ、盛政敗績すと告て來るべしと言ひしが、果して然かありき。

新字:○隆景、松永弾正少弼久秀が、信長に反するを聞き、久秀が謀反時節少し早し、思ふに本意を遂げずして自亡せんと言ひしが、果して然り。又賤ケ嶽の役、佐久間盛政、中川清秀を討取り、其儘其場を取敷たりと言を聞きて、盛政重ねての合戦は、必ず打負べし、此合戦勝て引取り陣を据なば、秀吉仮令勝利を得るとも、五度も十度も、手を砕き汗を握り合戦を遂ぐべし、盛政若く盛なるが故に、大に驕りて、彼我の勢を計りて終の勝を全くする謀を知らず、今見よ、今見よ、盛政敗績すと告て来るべしと言ひしが、果して然かありき。

書き下し

○隆景、松永彈正少弼久秀が、信長に反するを聞き、久秀が謀反時節少し早し、思ふに本意を遂げずして自亡せんと言ひしが、果して然り。又賤ケ嶽の役、佐久間盛政、中川清秀を討取り、其儘其場を取敷たりと言を聞きて、盛政重ねての合戰は、必ず打負べし、此合戰勝て引取り陣を据なば、秀吉假令勝利を得るとも、五度も十度も、手を碎き汗を握り合戰を遂ぐべし、盛政若く盛なるが故に、大に驕りて、彼我の勢を計りて終の勝を全くする謀を知らず、今見よ、今見よ、盛政敗績すと告て來るべしと言ひしが、果して然かありき。

現代語訳

○隆景は、松永弾正少弼久秀が信長に背いたと聞いて、久秀の謀反は時節が少し早い、思うに本意を遂げずして自滅するだろうと言いましたが、果たしてそのとおりになりました。また、賤ケ嶽の戦いで、佐久間盛政が中川清秀を討ち取り、そのままその場を占領したと聞いて、こう言いました。盛政は次の合戦でも必ず負けるだろう。この合戦に勝って兵を引き、陣を据えたならば、秀吉がたとえ勝利を得るとしても、五度も十度も、手を砕き汗を握る戦いを遂げねばならないだろう。盛政は若く血気盛んなゆえに大いに驕り、彼我の勢いを計って最後の勝ちを全うする謀を知らない。今に見よ、今に見よ、盛政が敗れたと告げてくるであろう、と。果たしてそのとおりになりました。

解説

隆景が、遠くから戦況を聞いただけで、松永久秀の謀反と佐久間盛政の勝利後の動きを見通したと伝わる二つの短い話です。共通する見立ては、勝ちに驕って全体の勢いを計らない者は、最後に勝てないという点にあります。盛政については、勝って引き上げて陣を固めれば秀吉も苦戦したはずだと、実際に取り得た最善手まで述べています。目先の成功の後こそ、どこで止めて固めるかが問われるという読みです。ただし、結果が出てからの記述なので、事後の脚色の可能性は残ります。
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この章句が説くこと

小早川隆景松永久秀佐久間盛政驕り引き際見立て

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