明君家訓 / 第19条
家中の士勝手つゞき申やうに、諸事分限相應にいたし、所納の分量をつもり候て、金銀のつかひやうを加減いたし尤にて候、若又親族等に貧窮成ものの候か、又は他人にても存寄の者の内に、迷惑いたすもの候て難見捨候故、さやうの儀にて自分の勝手あしく成候は、結句奇特に存候、左樣のところ不届にて、勝手よく候ても、士の本意にて無之候、右のをもむきにて勝手不調候はゞ、樣子うけたまはりとゞけ、いく度も續樣にいたすべく候、其外不慮の不仕合にて勝手損申は、これまた各別にて候、其時に當て相談いたすべく候、此心得は頭分の者よく〱承知仕、自然右兩樣にて勝手めいわくいたし候もの有之候はゞ、早速申きかすべく候、延引仕候はゞ可爲不届候、
新字:家中の士勝手つゞき申やうに、諸事分限相応にいたし、所納の分量をつもり候て、金銀のつかひやうを加減いたし尤にて候、若又親族等に貧窮成ものの候か、又は他人にても存寄の者の内に、迷惑いたすもの候て難見捨候故、さやうの儀にて自分の勝手あしく成候は、結句奇特に存候、左様のところ不届にて、勝手よく候ても、士の本意にて無之候、右のをもむきにて勝手不調候はゞ、様子うけたまはりとゞけ、いく度も続様にいたすべく候、其外不慮の不仕合にて勝手損申は、これまた各別にて候、其時に当て相談いたすべく候、此心得は頭分の者よく〱承知仕、自然右両様にて勝手めいわくいたし候もの有之候はゞ、早速申きかすべく候、延引仕候はゞ可為不届候、
書き下し
家中の士勝手つゞき申やうに、諸事分限相應にいたし、所納の分量をつもり候て、金銀のつかひやうを加減いたし尤にて候、若又親族等に貧窮成ものの候か、又は他人にても存寄の者の内に、迷惑いたすもの候て難見捨候故、さやうの儀にて自分の勝手あしく成候は、結句奇特に存候、左樣のところ不届にて、勝手よく候ても、士の本意にて無之候、右のをもむきにて勝手不調候はゞ、樣子うけたまはりとゞけ、いく度も續樣にいたすべく候、其外不慮の不仕合にて勝手損申は、これまた各別にて候、其時に當て相談いたすべく候、此心得は頭分の者よく〱承知仕、自然右兩樣にて勝手めいわくいたし候もの有之候はゞ、早速申きかすべく候、延引仕候はゞ可爲不届候、
現代語訳
家中の士は、暮らし向きが続くように、諸事分限に相応して行い、収入の分量を見積もって、金銀の使い方を加減するのが尤もである。もし親族に貧しい者がいるか、あるいは他人であっても、縁のある者のうちに難儀している者がいて、見捨てがたいので、そのような事情から自分の暮らし向きが悪くなったのなら、かえって奇特なことと思う。そのような所を不届きとして、暮らし向きがよくても、士の本意ではない。右のような趣で暮らし向きが整わない場合は、様子を聞き届けて、何度でも続くように計らう。そのほか不慮の不運で暮らし向きを損なったのは、これもまた別のことである。その時にあたって相談する。この心得は、頭分の者がよくよく承知し、自然、右の両様で暮らし向きに難儀する者があれば、早速申し聞かせるように。遅れたら不届きである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『明君家訓』第16条家中の士、綺羅を好むべからず、馬、武具、太刀かたなも用に立を尊と可仕候、拵仕立も成程麁相に可仕候、まして常躰の衣裳いかやうにても不苦候、とかく麁相に越たる儀は無之候、但し貴賤により衣裳の式は、別紙に定置候、
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『明君家訓』第18条衣食住の外、武士は馬具、武具は用意なくて不叶物にて候、其外は常に用申器物は各別、それも用に立までにて、結構なる物一圓不入事に候、まして無益の物、用意不仕候ても其分に候、たとへば、掛物、茶碗、茶入等の類、多くあつめ持候て何の用に立申儀に候や、世にまじはる習ひに候へば、少しは不苦儀に候へども、それも一向に不搆候はんは、結句心にくき方に可存候、
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『明君家訓』第14条自今以後、父母、妻子、兄弟、其外親族のうち、國法を背き罪科有之候をよく〱承知仕候とも、したしきものとして申出候はゞ、士の法とは存まじく候、且又一門の身に非ず、平生別してはなし申友だちの内にても申出儀、是又同心に不存候、但さやうに國法を背く不忠のものを、しゐて隱置才覺を以て、罪をのがれ候樣にいたし候はゞ、樣子承りとゞけ可申付候、若又叛逆の巧いたし候か、何とぞ國のさはぎにもなり、某が大事にも成程の儀は、國にもかまはず、それがしにもおもひかへ、見のがしをかるゝ儀は不可然候、其段は某が申付候にをよばず、各々可有了簡候、その程の儀にても、子として父を申出候はゞ同心に不存候、君父は義理のをもき事いづれもおとらぬものにて、忠孝は偏闕しがたき事に候、其事の品により時の首尾により、子たるものゝ了簡有べき儀に候、一筋に申がたく候、たとへ父子兄弟たりといふとも、罪人をば申出候樣に相定め候てこそ、某がためにはよろしく候へども、士の風儀は左樣の仕形はあしく候、惣じて某が心底、をの〱のたてらるゝ義理をもまげ候ても、某一人に忠節いたされ候へとは努々不存候、某に背かれ候ても、をの〱の義理さへたがへられず候へば、於某珍重存候、
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『明君家訓』第20条(三)さて申候、やうは、士たるもの、家に衣食をつくりなば、それを業とする人の、いかゞしてその利を得て、すぎはひとせんやといへり、その身魯國の執權をも仕けるが、惣じて祿を食むものは下民と利を爭ことをかたくいましめけるとなり、今某が家臣の面々、日來それ〱に相應の祿をあたへ置候て、國中の百姓町人等、かりそめにも慮外いたさゞるやうに申付候、しかるうへは、利欲のこゝろざしを捨て、廉耻の行をはげまし、百姓町人に對して、いさゝかはづかしきふるまひなく、公儀休がむかしをしたはるべく候、猶更くはしく穿鑿いたし候はゞ、惣じて利欲と申ときは、金銀にかぎらず、所詮をのれが手よりもとむるは皆利欲にて候、たとへば同樣の事をとり行ひ候ても、私の手よりを以てすると、おほやけの義理を見て行ふとは、一念の上にては毫釐のたがひにて候へども、畢竟君子、小人、王覇、治亂のさかひもこれよりわかれ候へば、末は千里の謬にも成申候、去によつて義利の辨とて、先賢もくはしく議論をあらはし、これを簡要の事に沙汰しおかれ候、をの〱其書をよみて其義をさとり、ゆだんなく工夫いたさるべく候、事ながく候間今度爰に令省略候、
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『武家家訓集』武田信繁家訓九十九箇条「第19〜21条」一、家中の郎從に對し、慈悲肝要の事。三略に曰く、民を使ふこと四支の如くす、と。 一、家來の者、冠落の時、縱ひ造作入り候と雖も、一途に下知を加ふべき事。軍識に曰く、士を思ふこと渴するが如し、と。 一、忠節の臣忘るべからざる事。三略に曰く、善惡同じければ則ち功臣倦む、と。
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『明君家訓』第17条家の作事不好、畢竟風雨をさへおほひ候へば、これまた麁相に越たる事は無之候、但し分限により、家の大小は各別にて候、
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
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