明君家訓 / 第18条
衣食住の外、武士は馬具、武具は用意なくて不叶物にて候、其外は常に用申器物は各別、それも用に立までにて、結構なる物一圓不入事に候、まして無益の物、用意不仕候ても其分に候、たとへば、掛物、茶碗、茶入等の類、多くあつめ持候て何の用に立申儀に候や、世にまじはる習ひに候へば、少しは不苦儀に候へども、それも一向に不搆候はんは、結句心にくき方に可存候、
新字:衣食住の外、武士は馬具、武具は用意なくて不叶物にて候、其外は常に用申器物は各別、それも用に立までにて、結構なる物一円不入事に候、まして無益の物、用意不仕候ても其分に候、たとへば、掛物、茶碗、茶入等の類、多くあつめ持候て何の用に立申儀に候や、世にまじはる習ひに候へば、少しは不苦儀に候へども、それも一向に不搆候はんは、結句心にくき方に可存候、
書き下し
衣食住の外、武士は馬具、武具は用意なくて不叶物にて候、其外は常に用申器物は各別、それも用に立までにて、結構なる物一圓不入事に候、まして無益の物、用意不仕候ても其分に候、たとへば、掛物、茶碗、茶入等の類、多くあつめ持候て何の用に立申儀に候や、世にまじはる習ひに候へば、少しは不苦儀に候へども、それも一向に不搆候はんは、結句心にくき方に可存候、
現代語訳
衣食住のほかに、武士は馬具や武具は用意がなくてはならないものである。そのほか普段使う器物は別のことで、それも役に立つまでのもので、立派な物はまったく必要ない。まして無益な物は、用意しなくてもそのままで済む。たとえば、掛物、茶碗、茶入れなどの類を多く集め持って、何の役に立つというのか。世間と交わる習いであるから、少しはさしつかえないが、それもまったく構わないというのは、かえって奥ゆかしいほうだと考える。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『秘本玉くしげ』上 無益の物の費えおよそ人間の用をなす一切の物は、其本は皆地より生ずる事なるが、其中に無てかなはぬ物と、無益のおごりに用る物とあるを、世上のおごり長じぬれば、その無益の事に多くの物を費す。その無益の物のために田地山林多くつゐへて、有用の物の出る妨となり、又無益の事にさまざま人の手間入事多き故に、有用の業をなすべき者もその無益のわざをなして世を渡る。これ天下の手間の費にして、かの無益の物に土地をつゐやすも同じ事也。然るに世人此子細をわきまへずして、何ごとをしてなりとも人の渡世になる事多く、商事おほければ、世上のにぎはひ繁昌也と心得るはひが事也。平民の身一分のうへにては、いかにも何わざをしてなりとも金銀を得る事の多きが利なれども、上に立て民を治むる人の身にとりては、領内おしならして利益あることならでは損ある也。たとへば、城下はにぎはふて商人は利を得る事多くても、在在百姓のつまりとなりては、本を失ふて末を益する也。但しこれは天下と一国一国との差別あり。
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孫子・作戦篇夫れ兵久しくして国の利ある者は未だこれ有らざるなり。
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『呻吟語』内篇・問學・入耳出口の學上に吐き下に瀉すの疾は、日に飲食を進むと雖も、憔悴に補ふ無し。耳に入り口に出づるの學は、日に講究を事とすと雖も、身心に益無し。
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『呻吟語』外篇・廣喻・皆な揠苗の見なり卜築を問ふ者も亦た然り。天下豈に兒の下迫せざるに強ひて自ら催生するの理有らんや。大抵皆な揠苗の見なり。
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『秘本玉くしげ』上 大切にしすぎる害すべての事を余りに大切に重重敷する時は、只無益の費、無益の扱ひのみ多くして、却て其本意の実をば失ひ、表向計りになり、麁末に取扱ふよりは結句遥に劣る事も多く、又却て手行の甚悪き事多し。譬へば、直に御前へ達してもよき事をも、爰の役人の手を経、かしこの役所へ伺ひ抔、彼此とする故に、無益の人手間かかり、紙筆の費抔のみ有て、却て急ぎの御用の弁じ抔は滞りて、何の益はなし。万の事是に准じて知べし。
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『呻吟語』内篇・問學・強聒雜施は吾が儒の戒め人と善を為すは、真に是れ好き念頭なり。知らず、心に理路無き者は、淡くして覺えず。道相同じからざる者は、拂ひて入らず。強聒雜施は、吾が儒の戒めなり。孔子の憤を啟き悱を發し、三隅を復し、中人以下には上を語らざるは、豈に是れ人に誨ふるに倦めるか。兩つながら益無きを謂ふのみ。
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