明訓一班抄抄録 / 夷狄を近付べからざる事・一度の妥協が続く難題を生むと考える
萬一姑息の御沙汰にて、其中一ケ條たりとも許容し給はゞ、其尾に取つき年々歳々難題申上、其中には御許容成がたくしてこれをこばみ給はゞ、是機會に乘じて戰爭を起し、彼が十分の欲をとげんとの企なるべければ、一切當路の有司少しも臆せずして、日本の武勇を示し度事也、兵法にも我領分へ入て不案內なる中に打結ぶ如き奸人あるも測りがたければ、以前のごとく見懸次第無二念打拂べきむね號令し給ふ事、國家の上策にて、たとへ打拂ひて、其節一戰有りとも、其後になり、度々來し上案內をも詳にし、又內通の者等出來て、邪宗門をも自分行れ、彼へ付添奸人多く成たる上にて、戰爭起りなば、天下の大變なるべし、昔は兎も角も○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○皆一つ穴の狐と見通し、無二念打拂ひぬる事、肝要なるべし、只今にて千万歳萬國に孤立して武勇を奮ひたる神妙、德川家の御代に至り、塵芥ばかりも蠻夷へ贈り物等有之樣成行ては、決て不相濟事なれば、篤と心を用ひ給ふべき事なり、凡制度法令のたぐひに、萬世動すべからざるものと、又時勢によりて變通すべきものあり、武勇を尊び夷狄を近付くべからざるは、神代より大道にて、しかも三代將軍御始精々戒め給ふ所にて、萬世の大法なり、荷船の外大船を禁じ給ふたぐひは、時によつて定め給ふ事にて、後世の變通を得處也、然るに今の有司一時の法令をば堅くとりて動さず、萬世の大法をも手易く動して、異船の打拂を止め給ふなど、如何にも齊昭が苦心する所也、何卒本文東照宮大猷公の尊意能く〱御服膺あらまほしき御事也、
新字:万一姑息の御沙汰にて、其中一ケ条たりとも許容し給はゞ、其尾に取つき年々歳々難題申上、其中には御許容成がたくしてこれをこばみ給はゞ、是機会に乗じて戦争を起し、彼が十分の欲をとげんとの企なるべければ、一切当路の有司少しも臆せずして、日本の武勇を示し度事也、兵法にも我領分へ入て不案内なる中に打結ぶ如き奸人あるも測りがたければ、以前のごとく見懸次第無二念打払べきむね号令し給ふ事、国家の上策にて、たとへ打払ひて、其節一戦有りとも、其後になり、度々来し上案内をも詳にし、又内通の者等出来て、邪宗門をも自分行れ、彼へ付添奸人多く成たる上にて、戦争起りなば、天下の大変なるべし、昔は兎も角も○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○皆一つ穴の狐と見通し、無二念打払ひぬる事、肝要なるべし、只今にて千万歳万国に孤立して武勇を奮ひたる神妙、徳川家の御代に至り、塵芥ばかりも蠻夷へ贈り物等有之様成行ては、決て不相済事なれば、篤と心を用ひ給ふべき事なり、凡制度法令のたぐひに、万世動すべからざるものと、又時勢によりて変通すべきものあり、武勇を尊び夷狄を近付くべからざるは、神代より大道にて、しかも三代将軍御始精々戒め給ふ所にて、万世の大法なり、荷船の外大船を禁じ給ふたぐひは、時によつて定め給ふ事にて、後世の変通を得処也、然るに今の有司一時の法令をば堅くとりて動さず、万世の大法をも手易く動して、異船の打払を止め給ふなど、如何にも斉昭が苦心する所也、何卒本文東照宮大猷公の尊意能く〱御服膺あらまほしき御事也、
書き下し
萬一姑息の御沙汰にて、其中一ケ條たりとも許容し給はゞ、其尾に取つき年々歳々難題申上、其中には御許容成がたくしてこれをこばみ給はゞ、是機會に乘じて戰爭を起し、彼が十分の欲をとげんとの企なるべければ、一切當路の有司少しも臆せずして、日本の武勇を示し度事也、兵法にも我領分へ入て不案內なる中に打結ぶ如き奸人あるも測りがたければ、以前のごとく見懸次第無二念打拂べきむね號令し給ふ事、國家の上策にて、たとへ打拂ひて、其節一戰有りとも、其後になり、度々來し上案內をも詳にし、又內通の者等出來て、邪宗門をも自分行れ、彼へ付添奸人多く成たる上にて、戰爭起りなば、天下の大變なるべし、昔は兎も角も○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○皆一つ穴の狐と見通し、無二念打拂ひぬる事、肝要なるべし、只今にて千万歳萬國に孤立して武勇を奮ひたる神妙、德川家の御代に至り、塵芥ばかりも蠻夷へ贈り物等有之樣成行ては、決て不相濟事なれば、篤と心を用ひ給ふべき事なり、凡制度法令のたぐひに、萬世動すべからざるものと、又時勢によりて變通すべきものあり、武勇を尊び夷狄を近付くべからざるは、神代より大道にて、しかも三代將軍御始精々戒め給ふ所にて、萬世の大法なり、荷船の外大船を禁じ給ふたぐひは、時によつて定め給ふ事にて、後世の變通を得處也、然るに今の有司一時の法令をば堅くとりて動さず、萬世の大法をも手易く動して、異船の打拂を止め給ふなど、如何にも齊昭が苦心する所也、何卒本文東照宮大猷公の尊意能く〱御服膺あらまほしき御事也、
現代語訳
万一、姑息な御沙汰で、そのうち一箇条でも許容されれば、その尾に取り付いて年々歳々難題を申し上げ、その中には許容しがたくて断られた場合、これを機会に乗じて戦争を起こし、彼の十分な欲を遂げようという企てでしょうから、当路の有司は少しも臆せず、日本の武勇を示したいものです。兵法にも、自分の領分に入って不案内なうちに打ち結ぶような奸人もいるかもしれないので、以前のように見かけ次第、無二念に打ち払うべき旨を号令なさることが国家の上策で、たとえ打ち払って、その節に一戦があっても、その後になって、たびたび来たうえに案内をも詳しく知り、また内通の者などが出てき、邪宗門をも自分が行い、彼に付き添う奸人が多くなったうえで戦争が起これば、天下の大変となるでしょう。昔はともかく、(底本で伏せられた箇所)皆一つ穴の狐と見通し、無二念に打ち払うことが肝要でしょう。ただ今まで千万歳、万国に孤立して武勇を奮った神妙(立派さ)があり、徳川家の御代に至って、塵や芥ほどでも蛮夷へ贈り物などをするような成り行きになっては、決して済まないことなので、じっくりと心を用いられるべきです。およそ制度や法令の類に、万世動かすべからざるものと、時勢によって変通すべきものがあります。武勇を尊び夷狄を近づけないのは、神代からの大道で、しかも三代将軍をはじめ精々戒められたところで、万世の大法です。荷船のほかの大船を禁じられたような類は、時によって定められたことで、後世の変通を得るべきところです。ところが、今の有司は一時の法令を堅く取って動かさず、万世の大法を手軽に動かして、異船の打ち払いを止めなさるなど、いかにも斉昭が苦心するところです。何とぞ本文の東照宮・大猷公の尊意をよくよくご服膺(心に留めること)なさってほしいことです。
解説
この章句が説くこと
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論語・八佾篇王孫賈問う、『其の奥に媚ぶるよりは寧ろ竈に媚ぶと。何の謂いぞ。』子曰く、『然らず。天に罪を獲ば、祷る所無し。』
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