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君子訓 / 巻之下

凡政をするには、下情に通ずるをよしとす。王公大人といへども、自ら聞かず、自ら見ざれば、萬事昧くして明ならず、人民の愁ひ悅び、苦み樂み、姦惡私曲を知る事なり難し。善惡利害を知らず、國の豐饒凶荒、家の費侈を知らず、祿位の高く多きにほこりて下情に通ぜず。如斯にしては、臣民いかやうの惡を行ひ、善を行ひても知らず。自ら聞かず見ざれば、下情に通じ知るべきやうなし。昧しといふべし。

新字:凡政をするには、下情に通ずるをよしとす。王公大人といへども、自ら聞かず、自ら見ざれば、万事昧くして明ならず、人民の愁ひ悦び、苦み楽み、姦悪私曲を知る事なり難し。善悪利害を知らず、国の豊饒凶荒、家の費侈を知らず、禄位の高く多きにほこりて下情に通ぜず。如斯にしては、臣民いかやうの悪を行ひ、善を行ひても知らず。自ら聞かず見ざれば、下情に通じ知るべきやうなし。昧しといふべし。

書き下し

凡政をするには、下情に通ずるをよしとす。王公大人といへども、自ら聞かず、自ら見ざれば、万事昧くして明ならず、人民の愁ひ悦び、苦み楽み、姦悪私曲を知る事なり難し。善悪利害を知らず、国の豊饒凶荒、家の費侈を知らず、禄位の高く多きにほこりて下情に通ぜず。如斯にしては、臣民いかやうの悪を行ひ、善を行ひても知らず。自ら聞かず見ざれば、下情に通じ知るべきやうなし。昧しといふべし。

現代語訳

およそ政治をするには、下の実情に通じるのがよいのです。王公や大人であっても、自分で聞かず自分で見なければ、万事に暗くて明らかでなく、人民の愁いや喜び、苦しみや楽しみ、悪事や不正を知ることができません。善悪や利害を知らず、国の豊作や凶作、家の出費や奢りを知らず、禄や位の高く多いことを誇って下の実情に通じません。こうしては、臣民がどのような悪を行っても善を行っても知りません。自ら聞かず見なければ、下の実情に通じ知る方法はありません。暗いと言うべきです。

解説

上に立つ人は自分の耳と目で下の実情を知れ、と説く条です。人任せにして自ら見聞きしなければ、民の喜びや苦しみ、不正、豊凶、家計の実態まで何も分からず、地位の高さを誇るだけの暗君になると戒めています。前の条の、下が物を言いやすい雰囲気づくりと対になる教えで、益軒は情報が上に届く仕組みと上から見に行く姿勢の両方を求めています。報告書だけで判断せず現場に足を運ぶことの大切さは、今の経営でも繰り返し言われることです。

この章句が説くこと

下情現場政君主明

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