導師導古典を学びたいすべての人に

君子訓 / 巻之下

敎へずして人を罪にいるゝは仁にあらず。古の聖王は、一人を刑して千萬人恐れ愼む。故に刑は無刑を期すといへり。一儀禮曰、父者子之天也、夫者妻之天也。是を以て推すに、君は臣の天なり。凡君父と夫に背くは、則天に背くなり。其咎大なり。此三は天下の大倫にて、五倫の内にて尤重し。故に君父と夫とは、我に對して無道なる事ありとも、恐れて背くべからず。もし背く者あらば、罪に行ひて許すべからず。然らざれば、天地の間人倫の道立たず、法度紀綱敗る。

新字:教へずして人を罪にいるゝは仁にあらず。古の聖王は、一人を刑して千万人恐れ慎む。故に刑は無刑を期すといへり。一儀礼曰、父者子之天也、夫者妻之天也。是を以て推すに、君は臣の天なり。凡君父と夫に背くは、則天に背くなり。其咎大なり。此三は天下の大倫にて、五倫の内にて尤重し。故に君父と夫とは、我に対して無道なる事ありとも、恐れて背くべからず。もし背く者あらば、罪に行ひて許すべからず。然らざれば、天地の間人倫の道立たず、法度紀綱敗る。

書き下し

教へずして人を罪にいるるは仁にあらず。古の聖王は、一人を刑して千万人恐れ慎む。故に刑は無刑を期すといへり。一儀礼に曰く、父は子の天なり、夫は妻の天なり。是を以て推すに、君は臣の天なり。凡君父と夫に背くは、則天に背くなり。其咎大なり。此三は天下の大倫にて、五倫の内にて尤重し。故に君父と夫とは、我に対して無道なる事ありとも、恐れて背くべからず。もし背く者あらば、罪に行ひて許すべからず。然らざれば、天地の間人倫の道立たず、法度紀綱敗る。

現代語訳

教えないで人を罪に落とすのは仁ではありません。昔の聖王は一人を刑すると千万人が恐れ慎みました。だから刑は刑のない世を目指すものだと言われます。儀礼に「父は子の天であり、夫は妻の天である」とあります。これから推せば、君は臣の天です。およそ君・父・夫に背くのは、すなわち天に背くことです。その咎は大きいのです。この三つは天下の大きな人倫で、五倫のうちでも最も重いものです。だから君・父・夫が自分に対して無道なことがあっても、恐れて背いてはなりません。もし背く者があれば罪に処して許してはなりません。そうしなければ天地の間に人倫の道が立たず、法度や紀綱が崩れます。

解説

前半は、教えもせずに罰するのは仁ではなく、刑は刑のいらない世を目指すものだという「刑は無刑を期す」の考えで、『尚書』に由来する言葉です。後半は『儀礼』の「父は子の天、夫は妻の天」を引き、君・父・夫に背くことを最も重い罪とします。これは身分秩序を重んじた江戸時代の朱子学の価値観で、無道でも背くなという主張は今の人権感覚とは大きく異なります。一方、教えてから求めるという前半の原則は、今の職場や子育てでもそのまま通じる教えです。

この章句が説くこと

刑仁教え人倫儀礼

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る