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君子訓 / 巻之下

一漢の宣帝、諸國に倉を建て、米やすき時は價を增して高く買ひて入れ置き、米貴き時には價を減じて賤く賣る。名づけて常平倉といふ。夫米甚やすければ、士農の爲あしく、甚貴ければ工商くるしむ。貴きと賤きとは其害同じ。此ゆゑに、常平倉の法を行へば、此害なくして四民ともに困窮に至らず。我が邦にも、古は是に效ひて常平倉あり。義倉あり。義倉は水旱等の災ある時、飢民を救はんために設く。これ良法なり。但し此法、上に財乏しくては行はれず。

新字:一漢の宣帝、諸国に倉を建て、米やすき時は価を增して高く買ひて入れ置き、米貴き時には価を減じて賤く売る。名づけて常平倉といふ。夫米甚やすければ、士農の為あしく、甚貴ければ工商くるしむ。貴きと賤きとは其害同じ。此ゆゑに、常平倉の法を行へば、此害なくして四民ともに困窮に至らず。我が邦にも、古は是に効ひて常平倉あり。義倉あり。義倉は水旱等の災ある時、飢民を救はんために設く。これ良法なり。但し此法、上に財乏しくては行はれず。

書き下し

一漢の宣帝、諸国に倉を建て、米やすき時は価を增して高く買ひて入れ置き、米貴き時には価を減じて賤く売る。名づけて常平倉といふ。夫米甚やすければ、士農の為あしく、甚貴ければ工商くるしむ。貴きと賤きとは其害同じ。此ゆゑに、常平倉の法を行へば、此害なくして四民ともに困窮に至らず。我が邦にも、古は是に効ひて常平倉あり。義倉あり。義倉は水旱等の災ある時、飢民を救はんために設く。これ良法なり。但し此法、上に財乏しくては行はれず。

現代語訳

漢の宣帝は諸国に倉を建て、米の安いときは値を上げて高く買い入れておき、米の高いときは値を下げて安く売りました。これを常平倉と名づけます。そもそも米がひどく安ければ武士と農民のためにならず、ひどく高ければ職人と商人が苦しみます。高いのも安いのも害は同じです。そのため常平倉の法を行えば、この害がなくなって四民ともに困窮に至りません。わが国にも昔はこれにならって常平倉がありました。義倉もありました。義倉は洪水や日照りなどの災いのときに、飢えた民を救うために設けたものです。これは良い法です。ただしこの法は、お上に財が乏しくては行えません。

解説

米価を安定させる常平倉と、災害時に備える義倉を紹介した条です。米価が安すぎれば年貢米で暮らす武士と農民が困り、高すぎれば米を買う職人と商人が困るので、国が安いときに買い高いときに売って平らにする、という仕組みです。常平倉は漢の宣帝の時代に始まったとされ、日本でも古代に置かれました。益軒は、それを行うには上に財の蓄えが要ると念を押します。価格の安定と備蓄は、今の食料政策や金融政策の考え方の原型と言えます。

この章句が説くこと

常平倉米価備え財四民

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