君子訓 / 巻之下
一貧賤なる者、或は獨身なる者、老人小兒など、人に言ひかすめられ、或は飢ゑ凍えて苦しむを、上に訟ふれども、奉行人取擧げざれば、其奉行人を罪に行ふ。是周禮の法なり。一五穀と木の實と、未だ實のらざるを取らず。又市に賣らず。小なる木を伐らず。小さき魚を取らず。凡萬物の成就せざるをそこなはざるは、仁愛の一ッなり。其上、物の長大になりて取用ふれば、民用國用のためになるなり。
新字:一貧賤なる者、或は独身なる者、老人小児など、人に言ひかすめられ、或は飢ゑ凍えて苦しむを、上に訟ふれども、奉行人取挙げざれば、其奉行人を罪に行ふ。是周礼の法なり。一五穀と木の実と、未だ実のらざるを取らず。又市に売らず。小なる木を伐らず。小さき魚を取らず。凡万物の成就せざるをそこなはざるは、仁愛の一ッなり。其上、物の長大になりて取用ふれば、民用国用のためになるなり。
書き下し
一貧賤なる者、或は独身なる者、老人小児など、人に言ひかすめられ、或は飢ゑ凍えて苦しむを、上に訟ふれども、奉行人取挙げざれば、其奉行人を罪に行ふ。是周礼の法なり。一五穀と木の実と、未だ実のらざるを取らず。又市に売らず。小なる木を伐らず。小さき魚を取らず。凡万物の成就せざるをそこなはざるは、仁愛の一ッなり。其上、物の長大になりて取用ふれば、民用国用のためになるなり。
現代語訳
貧しい者、身寄りのない者、老人や子どもなどが、人にだまし取られたり、飢えや寒さに苦しんだりして、お上に訴えたのに、奉行が取り上げなければ、その奉行を罪に問います。これは周礼の法です。五穀や木の実は、まだ実らないうちに取りません。また市場で売りません。小さな木を伐らず、小さな魚を取りません。およそ万物のまだ育ちきらないものを損なわないのは、仁愛の一つです。そのうえ、物が大きく育ってから取って用いれば、民の用にも国の用にもなるのです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『君子訓』巻之上一国土に一年生ずる所の五穀の惣数をかぞへ、国土の人民一年の間食する所の粮の数をかぞへくらぶるに、一年生ずる所の五穀にては、一年の糧足らず。是貧民は雑穀菜根を食して、飢を助くる故なり。商人の酒を造り、菓子を拵へ、士の奢侈をなして、朝夕定まれる食の外に穀食を費すは、皆是民の食を奪ひてなせるなり。
-
『君子訓』巻之中一農の田を頼むは、魚の水に住み、木の土に生ずるが如し。魚水無ければ死し、木は土なければ枯る。民に田なければ業を失ふ故、農の田に離るるは憐むべし。一聖人民の力は国の基なる事を知り給へり。故に公役をば省き、民の隙を惜み給ふ。周礼には、民を使ふこと豊年には一夫三日、中年には二日、凶年には一日、至りて年悪しく民痛めば一日も使はずといへり。
-
孫子・作戦篇夫れ兵を鈍らせ鋭を挫き、力を屈し貨を殫くせば、則ち諸侯其の弊に乗じて起こり、智者有りと雖も、其の後を善くすること能わず。
-
『墨子』明鬼下故に鬼神の眀は、幽間・廣澤・山林・深谷と為す可からず。鬼神の眀、必ず之を知る。鬼神の罰は、富貴衆強・勇力强武・堅甲利兵と為す可からず。鬼神の罰、必ず之に勝つ。若し以て然らずと為さば、昔者、夏王桀、貴きこと天子と為り、富は天下を有ちながら、上は天を詬り鬼を侮り、下は天下の萬民を殃い傲る。上帝を祥かにして元山帝行を伐つ。故に此に於て天、乃ち湯をして眀罰に至らしむ。湯、車九兩、鳥陣雁行を以てす。湯、大贊に乗り、遂に下衆人の遂を犯し、王、手ずから推哆・大戲を禽らう。故に昔、夏王桀、貴きこと天子と為り、富は天下を有ち、勇有るの推哆・大戲、主として兕虎を别ち、指し畫きて人を殺す有り。人民の衆きこと兆億、侯として厥の澤陵に盈つ。然れども此を以て鬼神の誅を圉ぐ能わず。此れ吾が謂う所の鬼神の罰は、富貴衆强・勇力强武・堅甲利兵と為す可からずとは、此れなり。
-
『正法眼蔵随聞記』巻三有る夜示して云く、唐の太宗即位の後、故殿に栖み給へり、破損せる故に、湿気あがり、風霧冷かにして、玉体おかされつべし、臣下等造作すへき由を奏しければ、帝の言く、時き農節なり、民定めて愁ひあるべし、秋を待て造るべし、湿気に侵さるは地にうけられず、風雨に侵さるは天に合はざるなり、天地に背かば身あるべからず、民を煩はさずんば自ら天地に合ふべし、天地に合はゝ身を侵すべからず、と云ふて終に新宮を作らず、故殿に栖み給へり、
-
『呻吟語』外篇・治道・民と安の二つ天下を取り、天下を守るは、只だ一種の人の上に意念を加へ、一個の字の上に工夫を做すに在り。一種の人は是れ那個ぞ。曰く民。一個の字は是れ甚麼ぞ。曰く安。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る