導師導古典を学びたいすべての人に

君子訓 / 巻之下

一和漢ともに、世末になりては、虛文多くして忠實少なし。誠は日々に衰へ、僞は月々に盛也。道を行はんとならば、當世の飾りて奢りたる風俗を改め、古人の質素淳朴の風俗に立歸るべし。唐の太宗天下を治むるに、奢を去り、費を省き、公役を輕くし、年貢を少くし、正直にして無欲なる者を民のつかさとす。數年の後、民衣食餘ありて、路に落ちたるを拾はず、商人野に宿しても盜の患なし。奢靡の俗をひるがへして、淳朴の風に歸せしは、唯上の政其道を得たればなり。

新字:一和漢ともに、世末になりては、虚文多くして忠実少なし。誠は日々に衰へ、偽は月々に盛也。道を行はんとならば、当世の飾りて奢りたる風俗を改め、古人の質素淳朴の風俗に立帰るべし。唐の太宗天下を治むるに、奢を去り、費を省き、公役を軽くし、年貢を少くし、正直にして無欲なる者を民のつかさとす。数年の後、民衣食余ありて、路に落ちたるを拾はず、商人野に宿しても盗の患なし。奢靡の俗をひるがへして、淳朴の風に帰せしは、唯上の政其道を得たればなり。

書き下し

一和漢ともに、世末になりては、虚文多くして忠実少なし。誠は日々に衰へ、偽は月々に盛也。道を行はんとならば、当世の飾りて奢りたる風俗を改め、古人の質素淳朴の風俗に立帰るべし。唐の太宗天下を治むるに、奢を去り、費を省き、公役を軽くし、年貢を少くし、正直にして無欲なる者を民のつかさとす。数年の後、民衣食余ありて、路に落ちたるを拾はず、商人野に宿しても盗の患なし。奢靡の俗をひるがへして、淳朴の風に帰せしは、唯上の政其道を得たればなり。

現代語訳

日本も中国も、世が末になると、うわべの飾りが多くなって誠実さが少なくなります。誠は日ごとに衰え、偽りは月ごとに盛んになります。道を行おうとするなら、今の世の飾り立てて奢った風俗を改め、古人の質素で飾り気のない風俗に立ち帰るべきです。唐の太宗は天下を治めるにあたり、奢りを去り、費用を省き、公の労役を軽くし、年貢を少なくし、正直で欲のない者を民の役人にしました。数年のうちに民の衣食は余りあるようになり、道に落ちている物を拾う者もなく、商人が野宿しても盗みの心配がなくなりました。奢った風俗をひるがえして素朴な風に帰したのは、ただ上の政治がその道を得たからです。

解説

世が下るほど飾りが増え誠が減る、だから質素で素朴な風俗に帰れ、と説く条です。手本として唐の太宗を挙げ、奢りを去り労役と年貢を軽くし、正直で無欲な人を役人にしたところ、数年で道に落ちた物も拾わないほど治まったと述べます。太宗の治世は『貞観政要』で知られています。益軒が生きた元禄期は華美な風俗が広がった時代で、その戒めでもあります。組織の空気は上の姿勢と人選で変わるという点は、今の経営にもよく当てはまります。

この章句が説くこと

質素風俗誠政太宗

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る