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君子訓 / 巻之下

一民の飢を救ふに、早く救はゞ費少くして施廣し。遲ければ費多くして施狹し。又飢人を救ふに、朝夕兩食の内一食を與ふれば死なず。其飢の甚敷と甚しからざるを選びなくして、妄に多く與ふべからず。一日に一食を與ふれば、米多からずして人を救ふ事多し。一處には飢ゑ疲れて弱き者には、わきて朝夕薄き粥を與ふべし。食に飽かしむれば死す。氣力出來て後は食を與ふべし。一處には未だ疲れざる者を集めて、一日に一度食をあたふべし。

新字:一民の飢を救ふに、早く救はゞ費少くして施広し。遅ければ費多くして施狭し。又飢人を救ふに、朝夕両食の内一食を与ふれば死なず。其飢の甚敷と甚しからざるを選びなくして、妄に多く与ふべからず。一日に一食を与ふれば、米多からずして人を救ふ事多し。一処には飢ゑ疲れて弱き者には、わきて朝夕薄き粥を与ふべし。食に飽かしむれば死す。気力出来て後は食を与ふべし。一処には未だ疲れざる者を集めて、一日に一度食をあたふべし。

書き下し

一民の飢を救ふに、早く救はば費少くして施広し。遅ければ費多くして施狭し。又飢人を救ふに、朝夕両食の内一食を与ふれば死なず。其飢の甚敷と甚しからざるを選びなくして、妄に多く与ふべからず。一日に一食を与ふれば、米多からずして人を救ふ事多し。一処には飢ゑ疲れて弱き者には、わきて朝夕薄き粥を与ふべし。食に飽かしむれば死す。気力出来て後は食を与ふべし。一処には未だ疲れざる者を集めて、一日に一度食をあたふべし。

現代語訳

民の飢えを救うには、早く救えば費用が少なくて施しが広く行き渡ります。遅ければ費用が多くかかって施しが狭くなります。また飢えた人を救うには、朝夕二食のうち一食を与えれば死にません。飢えのひどい者とそうでない者を選び分けずに、むやみに多く与えてはいけません。一日に一食を与えれば、米が多くなくても多くの人を救えます。一か所には飢えて疲れ弱った者を集め、とくに朝夕に薄い粥を与えなさい。腹いっぱい食べさせると死んでしまいます。気力が出てから食事を与えなさい。もう一か所には、まだ疲れていない者を集めて、一日に一度食事を与えなさい。

解説

飢饉のときの救済の実際を、具体的に指示した条です。早く動くほど費用が少なく効果が広いこと、一日一食を配れば限られた米で多くを救えること、弱った者と元気な者を分けて扱い、衰弱した人にはまず薄い粥を与えて急に満腹にさせないことを説きます。極度の飢餓のあとに急に食べさせる危険にまで触れているのは、医術に通じた益軒ならではです。初動の速さ、対象の選別、限られた資源の配分という考え方は、今の災害支援にもそのまま役立ちます。

この章句が説くこと

救済飢え初動民仁

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