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君子訓 / 巻之下

我が身兵亂を起さざるは言ふに及ばず。歳を以ていはゞ、民の土貢を輕く取り、民を多く使はず、三年耕して一年の食あらしめ、飢うる者を助け救へば、凶年に逢ひても餓死の愁なし。病を以ていはゞ、民に情ありて飢寒の愁なからしめ、病の本を防ぎ、醫藥を施して病ある者を救へば、病死の災少し。是人に係るものゝ憂を去るのみならず、天に係るものといへども、人力を以てうれひを防ぐなり。

新字:我が身兵乱を起さざるは言ふに及ばず。歳を以ていはゞ、民の土貢を軽く取り、民を多く使はず、三年耕して一年の食あらしめ、飢うる者を助け救へば、凶年に逢ひても餓死の愁なし。病を以ていはゞ、民に情ありて飢寒の愁なからしめ、病の本を防ぎ、医薬を施して病ある者を救へば、病死の災少し。是人に係るものゝ憂を去るのみならず、天に係るものといへども、人力を以てうれひを防ぐなり。

書き下し

我が身兵乱を起さざるは言ふに及ばず。歳を以ていはば、民の土貢を軽く取り、民を多く使はず、三年耕して一年の食あらしめ、飢うる者を助け救へば、凶年に逢ひても餓死の愁なし。病を以ていはば、民に情ありて飢寒の愁なからしめ、病の本を防ぎ、医薬を施して病ある者を救へば、病死の災少し。是人に係るものの憂を去るのみならず、天に係るものといへども、人力を以てうれひを防ぐなり。

現代語訳

自分から兵乱を起こさないのは言うまでもありません。凶作について言えば、民の年貢を軽く取り、民を多く使役せず、三年耕して一年分の蓄えができるようにし、飢えた者を助け救えば、凶年に出会っても餓死の心配はありません。病について言えば、民に情けをかけて飢えや寒さの心配をなくし、病のもとを防ぎ、医薬を施して病人を救えば、病死の災いは少なくなります。これは人に関わるものの憂いを除くだけでなく、天に関わるものであっても、人の力でその憂いを防ぐのです。

解説

前の条の続きで、天に関わる凶作と病も人の力で防げると結びます。凶作には年貢を軽くし労役を減らし、三年耕して一年の蓄えを持たせる古法で備え、病には飢えや寒さをなくして病のもとを断ち、医薬で救うというのです。本草学者であり『養生訓』の著者でもある益軒らしく、病の予防を統治の務めに数えています。災害への備蓄や予防医療は天任せにせず人の力で打てる手だという考え方で、現代の防災や保健政策にもそのまま通じるものです。

この章句が説くこと

備え凶年医薬民予防

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