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君子訓 / 巻之中

一宰臣の職は、君を輔佐して其過失を正し救ひ、政の善惡を論じ、賞罰を正し、諸有司を統べて其成功を責め、廣く人才を求めて他日の用に備ふ。細務を自らせず、有司に打まかせ置きて、年限を以て其功過を察し、君に告げて是を進退すべし。有司の勤を一々上より指圖すれば、いかなる良有司にても、其才能を盡す事を得ず。上の意をうかゞひ、上にかゝりて身がまへし、其職にはまる事なし。斯の如くなれば、事立たずして功ならず。初に精しく人を擇び、是に職を授けて後は、打任せ置きて小過をゆるし、年限を以て考察すれば、其能不能明かに知るゝなり。

新字:一宰臣の職は、君を輔佐して其過失を正し救ひ、政の善悪を論じ、賞罰を正し、諸有司を統べて其成功を責め、広く人才を求めて他日の用に備ふ。細務を自らせず、有司に打まかせ置きて、年限を以て其功過を察し、君に告げて是を進退すべし。有司の勤を一々上より指図すれば、いかなる良有司にても、其才能を尽す事を得ず。上の意をうかゞひ、上にかゝりて身がまへし、其職にはまる事なし。斯の如くなれば、事立たずして功ならず。初に精しく人を択び、是に職を授けて後は、打任せ置きて小過をゆるし、年限を以て考察すれば、其能不能明かに知るゝなり。

書き下し

一宰臣の職は、君を輔佐して其過失を正し救ひ、政の善悪を論じ、賞罰を正し、諸有司を統べて其成功を責め、広く人才を求めて他日の用に備ふ。細務を自らせず、有司に打まかせ置きて、年限を以て其功過を察し、君に告げて是を進退すべし。有司の勤を一々上より指図すれば、いかなる良有司にても、其才能を尽す事を得ず。上の意をうかがひ、上にかかりて身がまへし、其職にはまる事なし。斯の如くなれば、事立たずして功ならず。初に精しく人を択び、是に職を授けて後は、打任せ置きて小過をゆるし、年限を以て考察すれば、其能不能明かに知るるなり。

現代語訳

宰臣の職は、君を補佐してその過失を正し救い、政治の善悪を論じ、賞罰を正し、諸役人を統べてその成果を求め、広く人材を求めて後日の用に備えることです。細かい務めを自分でせず、役人に任せておいて、期限を区切ってその功と過ちを察し、君に告げて進退を決めるべきです。役人の勤めを一々上から指図すれば、どんな良い役人でもその才能を尽くすことができません。上の意向をうかがい、上に頼って身構え、その職に打ち込むことがありません。このようであれば、事は立たず、功も成りません。初めに詳しく人を選び、これに職を授けたあとは、任せておいて小さな過ちを許し、期限を区切って考査すれば、その能力があるかないかがはっきりわかります。

解説

家老の職務を示し、部下に任せたら細かく指図するな、と説いています。上がいちいち口を出すと、どんな有能な部下も上の顔色をうかがうばかりで、仕事に打ち込めなくなるという指摘は、まさに今でいうマイクロマネジメントの弊害です。最初に慎重に人を選び、任せたら小さな失敗は許し、一定の期間を置いて成果で評価する、という方法は現代のマネジメント論とほとんど変わりません。三百年以上前に書かれたとは思えないほど、今の管理職に役立つ一節です。

この章句が説くこと

委任宰臣人材評価管理

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