君子訓 / 巻之上
一世俗の廻り遠しとて行はざる事は、却て其驗近くして、其益大なる事あり。其驗するどにして近きと思へる事に、却て驗なくして害になることあり。道を行ひ、儉約を守り、與ふべきを與へ、取るまじきを取らず、廉直なれば富む。儉約ならず、與ふべき物をも與へず、財を用ふべきにも用ひざれば、道に背きて財たらず。國郡を治むるに、民の年貢工役を輕くして民を愛すれば、國郡の財滿て餘あり。君の國用も不足なく、凶年もまれなり。もしかく有れば、廻り遠くて今の世には用ひ難しといひて、法をするどにして民をきびしく使ひ、年貢を過分に取れば、民貧しく力盡きて、國の財足らず。然れば廻り遠きが、するどなるより其益大なり。
新字:一世俗の廻り遠しとて行はざる事は、却て其験近くして、其益大なる事あり。其験するどにして近きと思へる事に、却て験なくして害になることあり。道を行ひ、倹約を守り、与ふべきを与へ、取るまじきを取らず、廉直なれば富む。倹約ならず、与ふべき物をも与へず、財を用ふべきにも用ひざれば、道に背きて財たらず。国郡を治むるに、民の年貢工役を軽くして民を愛すれば、国郡の財満て余あり。君の国用も不足なく、凶年もまれなり。もしかく有れば、廻り遠くて今の世には用ひ難しといひて、法をするどにして民をきびしく使ひ、年貢を過分に取れば、民貧しく力尽きて、国の財足らず。然れば廻り遠きが、するどなるより其益大なり。
書き下し
一世俗の廻り遠しとて行はざる事は、却て其験近くして、其益大なる事あり。其験するどにして近きと思へる事に、却て験なくして害になることあり。道を行ひ、倹約を守り、与ふべきを与へ、取るまじきを取らず、廉直なれば富む。倹約ならず、与ふべき物をも与へず、財を用ふべきにも用ひざれば、道に背きて財たらず。国郡を治むるに、民の年貢工役を軽くして民を愛すれば、国郡の財満て余あり。君の国用も不足なく、凶年もまれなり。もしかく有れば、廻り遠くて今の世には用ひ難しといひて、法をするどにして民をきびしく使ひ、年貢を過分に取れば、民貧しく力尽きて、国の財足らず。然れば廻り遠きが、するどなるより其益大なり。
現代語訳
世間の人が回り遠いといって行わないことが、かえってその効き目が早く、その益が大きいことがあります。効き目が鋭く早いと思うことが、かえって効き目がなく害になることがあります。道を行い、倹約を守り、与えるべきを与え、取るべきでないものを取らず、清廉で正直であれば富みます。倹約でなく、与えるべきものも与えず、財を用いるべきところにも用いなければ、道に背いて財は足りません。国や郡を治めるのに、民の年貢や労役を軽くして民を愛すれば、国や郡の財は満ちて余りがあります。君の国の費用も不足がなく、凶年もまれです。もしこのようにしても、回り遠くて今の世には用いがたいと言って、法を厳しく鋭くして民を厳しく使い、年貢を過分に取れば、民は貧しく力尽きて、国の財は足りなくなります。ですから、回り遠いほうが、鋭いやり方よりもその益は大きいのです。
解説
この章句が説くこと
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