君子訓 / 巻之上
一貧賤なる人、富貴なる人の財を貪るにすら、猶いやしむべし。少しく義理を忘れる者は、是を恥とせず。況や富貴にして郡邑を領する程の人、貧民の財を貪り取ること、いと不仁にして、其心尤惡むべし。人の財を貪らざれども、わが財を亂りに費さず、奢らず、我が欲を忍びて人に借らざれば、財延びて不足なし。
新字:一貧賤なる人、富貴なる人の財を貪るにすら、猶いやしむべし。少しく義理を忘れる者は、是を恥とせず。況や富貴にして郡邑を領する程の人、貧民の財を貪り取ること、いと不仁にして、其心尤悪むべし。人の財を貪らざれども、わが財を乱りに費さず、奢らず、我が欲を忍びて人に借らざれば、財延びて不足なし。
書き下し
一貧賤なる人、富貴なる人の財を貪るにすら、猶いやしむべし。少しく義理を忘れる者は、是を恥とせず。況や富貴にして郡邑を領する程の人、貧民の財を貪り取ること、いと不仁にして、其心尤悪むべし。人の財を貪らざれども、わが財を乱りに費さず、奢らず、我が欲を忍びて人に借らざれば、財延びて不足なし。
現代語訳
貧しく身分の低い人が、富貴な人の財を貪ることでさえ、なお卑しむべきことです。少しでも義理を忘れた者は、これを恥としません。まして富貴で郡や村を領するほどの人が、貧しい民の財を貪り取るのは、はなはだ不仁で、その心はもっとも憎むべきものです。人の財を貪らなくても、自分の財をみだりに費やさず、奢らず、自分の欲を忍んで人から借りなければ、財は伸びて不足しません。
解説
貧しい者が富者の財を欲しがるのでさえ卑しいのに、富貴な領主が貧民の財を貪るのはなおさら不仁だ、と立場による責任の重さを説いています。そのうえで、財を増やす方法は人から取ることではなく、自分の費えを抑え、欲を忍び、借金をしないことだと述べます。これは家訓の財の教えとも一致する益軒の一貫した考えです。力のある者が弱い者から取ることの醜さと、支出を慎めば財は自然と足りるという教えは、今の経営や家計にもそのまま通じます。
この章句が説くこと
不仁財倹約欲義理
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