君子訓 / 巻之上
是敎なり。如斯して民政に從はず、敎に入らず、人の害となる者あれば、其罪を正して是を懲す、是刑なり。此三の考は、國を治むるの要なり。後世にも此事なきにはあらず、唯其法古に及ばず、且行ふもの其人にあらざれば、其具ありといへども、其道行はれずして國治まらず。一人の身のはたらきは、一心を主とし、兩手兩足を使ひものとす。身の内少しにても痛む所かゆき所あれば、手行きて是をさすりかく。是我が心吾が身を愛すること切にして、心と身と一體にして通ずる故なり。君の心に仁愛厚くして、萬民を憐む心深ければ、民の愁ひ苦みを知りて、惠を施さざる事なかるべし。
新字:是教なり。如斯して民政に従はず、教に入らず、人の害となる者あれば、其罪を正して是を懲す、是刑なり。此三の考は、国を治むるの要なり。後世にも此事なきにはあらず、唯其法古に及ばず、且行ふもの其人にあらざれば、其具ありといへども、其道行はれずして国治まらず。一人の身のはたらきは、一心を主とし、両手両足を使ひものとす。身の内少しにても痛む所かゆき所あれば、手行きて是をさすりかく。是我が心吾が身を愛すること切にして、心と身と一体にして通ずる故なり。君の心に仁愛厚くして、万民を憐む心深ければ、民の愁ひ苦みを知りて、恵を施さざる事なかるべし。
書き下し
是教なり。如斯して民政に従はず、教に入らず、人の害となる者あれば、其罪を正して是を懲す、是刑なり。此三の考は、国を治むるの要なり。後世にも此事なきにはあらず、唯其法古に及ばず、且行ふもの其人にあらざれば、其具ありといへども、其道行はれずして国治まらず。一人の身のはたらきは、一心を主とし、両手両足を使ひものとす。身の内少しにても痛む所かゆき所あれば、手行きて是をさすりかく。是我が心吾が身を愛すること切にして、心と身と一体にして通ずる故なり。君の心に仁愛厚くして、万民を憐む心深ければ、民の愁ひ苦みを知りて、恵を施さざる事なかるべし。
現代語訳
これが教です。このようにしても政に従わず、教えに入らず、人の害となる者があれば、その罪を正して懲らしめます。これが刑です。この三つの考えは、国を治める要です。後の世にもこうしたことがないわけではありませんが、ただその方法が昔に及ばず、しかも行う者がふさわしい人でないので、道具はあっても道は行われず、国は治まりません。一人の身の働きは、一つの心を主とし、両手両足を使いとします。身の内に少しでも痛い所やかゆい所があれば、手が行ってこれをさすり、かきます。これは自分の心が自分の身を愛することが切実で、心と身が一体となって通じているからです。君の心に仁愛が厚く、万民を憐れむ心が深ければ、民の愁いや苦しみを知って、恵みを施さないことはないでしょう。
解説
この章句が説くこと
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『童子問』卷中王覇の弁を問ふ。曰く、王者は子を以て民を養ひ、覇者は民を以て民を治む。其の心を設くること同じからず、故に民の上に応ずるも、亦従りて異なる。子を以て民を養ふ、故に民も亦君を視ること其の父母のごとく、保護愛戴して、死を效して去らざるなり。民を以て民を治む、故に民は惟役を供し法を奉ずるを知りて、其の上に親しむを知らず、難有れば則ち去る。此れ王覇の弁なり。
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『正法眼蔵随聞記』巻三有る夜示して云く、唐の太宗即位の後、故殿に栖み給へり、破損せる故に、湿気あがり、風霧冷かにして、玉体おかされつべし、臣下等造作すへき由を奏しければ、帝の言く、時き農節なり、民定めて愁ひあるべし、秋を待て造るべし、湿気に侵さるは地にうけられず、風雨に侵さるは天に合はざるなり、天地に背かば身あるべからず、民を煩はさずんば自ら天地に合ふべし、天地に合はゝ身を侵すべからず、と云ふて終に新宮を作らず、故殿に栖み給へり、
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『都鄙問答』卷之一・武士ノ道ヲ問ノ段露塵ほども我が身を顧みざるは、臣の道なり。常に手足が口に使はるると、我が身の君に事ふると、違ふことあらば、此は不忠なりと知るべし。此を法とせば、何国にて仕ふるとも、臣の道を離るることあるべからず。扨て臣は政に従ふものなり。下を使ふは、君の道を以て治むべし。古聖人の御代には、君としては万民を子の如く思し召し、民の心を以て、御心となし玉ふ。伝に云ふ、民の好む所は之を好み、民の悪む所は之を悪む、此を之れ民の父母と謂ふ。此のゆへに、聖人は世を没し玉へども、民思ひ慕ひてわすれずと云へり。此の味を知るべし。忠義の臣は名を後世に残し、天下の人これを愛す。礼に曰く、士四十にして志強く立ち、利害に奪はれず、禍福に怵れずんば、以て出で仕ふべし、と見えたり。士の道は、先づ心を知りて志を定むべし。孟子曰く、志を尚くす。
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