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君子訓 / 巻之上

一身を修むるには、天理と人欲との勝負を試むべし。身を養ふも亦然り。民を治むるには、君子と小人の進むと退くとを以て、治亂を知るべし。一上より利欲を行ひて、下に見せしむれば、臣下も民も皆小人となる。上より禮を好みて下に交れば、臣下も民も君子となる。凡風俗は、皆上よりおこる。上の好む事は、必下にも好んで風俗となる。風とは導き行ふ所なり、俗とは下に習ひて行ふ所なり。

新字:一身を修むるには、天理と人欲との勝負を試むべし。身を養ふも亦然り。民を治むるには、君子と小人の進むと退くとを以て、治乱を知るべし。一上より利欲を行ひて、下に見せしむれば、臣下も民も皆小人となる。上より礼を好みて下に交れば、臣下も民も君子となる。凡風俗は、皆上よりおこる。上の好む事は、必下にも好んで風俗となる。風とは導き行ふ所なり、俗とは下に習ひて行ふ所なり。

書き下し

一身を修むるには、天理と人欲との勝負を試むべし。身を養ふも亦然り。民を治むるには、君子と小人の進むと退くとを以て、治乱を知るべし。一上より利欲を行ひて、下に見せしむれば、臣下も民も皆小人となる。上より礼を好みて下に交れば、臣下も民も君子となる。凡風俗は、皆上よりおこる。上の好む事は、必下にも好んで風俗となる。風とは導き行ふ所なり、俗とは下に習ひて行ふ所なり。

現代語訳

身を修めるには、天理と人欲の勝ち負けを試みるべきです。身を養うのもまた同じです。民を治めるには、君子と小人のどちらが進みどちらが退くかによって、治まるか乱れるかを知るべきです。上から利欲を行って下に見せれば、臣下も民も皆小人になります。上から礼を好んで下と交われば、臣下も民も君子になります。およそ風俗は皆上から起こります。上の好むことは、必ず下も好んで風俗となります。風とは導いて行わせるところで、俗とは下が習って行うところです。

解説

身を修めるには天理と人欲のせめぎ合いを見よ、という朱子学の基本と、風俗は上から起こるという統治の原則を述べています。天理と人欲の対比は朱子学の中心的な考えで、養生も同じだという一言には、後に養生訓を書く益軒の関心がのぞきます。上が利を好めば下も利を好み、上が礼を好めば下も礼を好むという指摘は、論語顔淵篇の「君子の徳は風、小人の徳は草」にも通じます。組織の文化はトップの振る舞いで決まる、という今の経営論とまったく同じ洞察です。

この章句が説くこと

風俗天理人欲君子小人

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