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甲陽軍鑑 / 品第十三

無穿鑿にてあしき上原兵庫·すがの大膳次第にし給ふ故かくのごとし、三略に曰、內貪外廉、詐譽取名、竊公爲恩、令上下昏、飾躬正顏、以獲高官、是謂盜端、又曰、賢臣內則邪臣外、邪臣內則賢臣斃、內外失宜、禍亂傳世、大臣疑主、衆姦集聚、とあるに、いげん入道意見をきかず、時の輕薄によきやうに申す者の事を用ひ給ふほどに、此本を命期の卷と名づく依て如件天正三乙亥年六月吉日高坂彈正書之長坂長閑老跡部大炊助殿參跡部大炊助殿參

新字:無穿鑿にてあしき上原兵庫·すがの大膳次第にし給ふ故かくのごとし、三略に曰、内貪外廉、詐誉取名、窃公為恩、令上下昏、飾躬正顔、以獲高官、是謂盗端、又曰、賢臣内則邪臣外、邪臣内則賢臣斃、内外失宜、禍乱伝世、大臣疑主、衆姦集聚、とあるに、いげん入道意見をきかず、時の軽薄によきやうに申す者の事を用ひ給ふほどに、此本を命期の巻と名づく依て如件天正三乙亥年六月吉日高坂弾正書之長坂長閑老跡部大炊助殿参跡部大炊助殿参

書き下し

無穿鑿にてあしき上原兵庫·すがの大膳次第にし給ふ故かくのごとし、三略に曰、内貪外廉、詐誉取名、竊公為恩、令上下昏、飾躬正顏、以獲高官、是謂盗端、又曰、賢臣内則邪臣外、邪臣内則賢臣斃、内外失宜、禍乱伝世、大臣疑主、衆姦集聚、とあるに、いげん入道意見をきかず、時の軽薄によきやうに申す者の事を用ひ給ふほどに、此本を命期の巻と名づく依て如件天正三乙亥年六月吉日高坂弾正書之長坂長閑老跡部大炊助殿参跡部大炊助殿参

現代語訳

三略に曰く、内に貪り外に廉なるふりをし、誉れを詐って名を取り、公を盗んで恩とし、上下を暗くし、身を飾り顔を正して高官を得る、これを盗端という。また曰く、賢臣が内にあれば邪臣は外にあり、邪臣が内にあれば賢臣は斃れる。内外が宜しきを失えば、禍乱は世に伝わる。大臣が主を疑えば衆姦が集まる、とあるのに、いげん入道の意見を聞かず、時の軽薄によいように申す者の事を用いなさるので、この本を命期の巻と名づける。よって件のごとし。天正三乙亥年六月吉日、高坂弾正これを書す。長坂長閑老・跡部大炊助殿参る。

解説

品の結びに、高坂は三略の二つの言葉を引く。内に欲を持ち外に清廉を装い、公のものを自分の恩として配る者を盗端と呼び、邪臣が内にいれば賢臣は斃れると説く。則政がいげん入道の意見を退けて軽薄な者を用いたことが、この言葉どおりの結果を招いた。高坂はこの書を命期の巻と名づけ、勝頼の重臣である長坂と跡部に宛てている。身近な者の選び方が、家の命運を決めるのである。

この章句が説くこと

三略諫言側近大将命運讒言

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