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甲陽軍鑑 / 品第十三

世中に親の子を思ふはめづらしからず、但し男女のあはれむ事各別なり、子細はおさなき者、虫氣なるに、男は炙を仕る、童はなきて父を怖てよりつかず、されども後は藥となり、母は子童なくをいたはりて灸をせず候、よつて當時母にはしみつくといへ共、後は病つのりて眼つぶれ、あしく取まはせば死する時、はゝ後にくゆる、

新字:世中に親の子を思ふはめづらしからず、但し男女のあはれむ事各別なり、子細はおさなき者、虫気なるに、男は炙を仕る、童はなきて父を怖てよりつかず、されども後は薬となり、母は子童なくをいたはりて灸をせず候、よつて当時母にはしみつくといへ共、後は病つのりて眼つぶれ、あしく取まはせば死する時、はゝ後にくゆる、

書き下し

世中に親の子を思ふはめづらしからず、但し男女のあはれむ事各別なり、子細はおさなき者、虫気なるに、男は炙を仕る、童はなきて父を怖てよりつかず、されども後は薬となり、母は子童なくをいたはりて灸をせず候、よつて当時母にはしみつくといへ共、後は病つのりて眼つぶれ、あしく取まはせば死する時、はゝ後にくゆる、

現代語訳

世の中に親が子を思うのは珍しくない。ただし男女の哀れむことは格別である。子細は、幼い者が虫気のあるのに、男は灸をすえる。童は泣いて父を怖れて寄りつかない。けれども後には薬となる。母は子の泣くのをいたわって灸をせずにおく。そのため当座は母になつくけれども、後は病が募って目がつぶれ、悪く取り回せば死ぬ時、母は後に悔やむ。

解説

子を思う心は同じでも、父は泣かれても灸をすえ、母は泣くのをいたわって灸をしない。当座は母になつくが、病が募って取り返しがつかなくなる。高坂はこれを、耳に痛い諫めを嫌い、心地よい言葉を喜ぶ主君の喩えとして引く。今の感覚では役割の割り振りに古さがあるが、痛みを伴う処置を避ける優しさが後で害になるという理は変わらない。厳しい処置を引き受ける人を、組織は大切にしなければならない。長い目で見て何が薬かを考えたい。

この章句が説くこと

諫言育成厳しさ甘さ判断教訓

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