甲陽軍鑑 / 品第十三
三番によく平なる大將の慈悲ふかうして、しかも度々軍にかち、佛法に立入り文武二道をあそばすを心のいたらぬ大將の眞似給へば、物よみ坊主の如くにて其下の奉公人公家衆の形義になり、男道無嗜にて武邊無案内なり、四番によく手がるき大將の度々の軍にかち、人のほむるを心のいたらぬ大將まね給ふ人は、異相になり敵の國などへ深入をし、敵かさめば大きに噪ぎくちあきてにげ給ふ其下の奉公人善惡もしらず、ふせんさくにて、少しの喧嘩口論にもとばつく物なり、
新字:三番によく平なる大将の慈悲ふかうして、しかも度々軍にかち、仏法に立入り文武二道をあそばすを心のいたらぬ大将の真似給へば、物よみ坊主の如くにて其下の奉公人公家衆の形義になり、男道無嗜にて武辺無案内なり、四番によく手がるき大将の度々の軍にかち、人のほむるを心のいたらぬ大将まね給ふ人は、異相になり敵の国などへ深入をし、敵かさめば大きに噪ぎくちあきてにげ給ふ其下の奉公人善悪もしらず、ふせんさくにて、少しの喧嘩口論にもとばつく物なり、
書き下し
三番によく平なる大将の慈悲ふかうして、しかも度々軍にかち、仏法に立入り文武二道をあそばすを心のいたらぬ大将の真似給へば、物よみ坊主の如くにて其下の奉公人公家衆の形義になり、男道無嗜にて武辺無案内なり、四番によく手がるき大将の度々の軍にかち、人のほむるを心のいたらぬ大将まね給ふ人は、異相になり敵の国などへ深入をし、敵かさめば大きに噪ぎくちあきてにげ給ふ其下の奉公人善悪もしらず、ふせんさくにて、少しの喧嘩口論にもとばつく物なり、
現代語訳
第三に、よく平らかな大将が慈悲深く、しかも度々の戦に勝ち、仏法に立ち入り文武二道をなさるのを、心の至らない大将が真似なさると、物読み坊主のようになり、その下の奉公人は公家衆の風儀になって、男の道に嗜みがなく武辺に不案内になる。第四に、よく手軽い大将が度々の戦に勝ち、人が褒めるのを、心の至らない大将が真似なさると、異相になって敵の国などへ深入りをし、敵が勢いづけば大いに騒ぎ、口をあけて逃げなさる。その下の奉公人は善悪も知らず無穿鑿で、少しの喧嘩口論にも飛びつくものである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
孫子・九地篇人の地に入ること深く、背にする城邑多き者を、重地と為す。
-
『呻吟語』外篇・聖賢・入る所無き故に入らざる所無し物の物に入る者は物を染め、物に入らるる者は物に染めらる。惟だ聖人のみ入る所無く、萬物も亦た得て之に入らず。惟だ入る所無し、故に入らざる所無し。惟だ物の入る所と為らず、故に物も亦た得て之を離れず。
-
『文武訓』武訓下一敵と戦ふに、勝ち過しては、敵取つて返してつよく戦ふものなれば、必ずはじめの勝にて早くやめて、少し手ぬるきやうなるが後の禍なし。匹夫の寄合ひ口論するも、悪口をしすごし、人に勝ち過せば、其人堪忍せずして、つよくしかへせば、おくれを取ることあり。古の良将の兵法、大に勝たず又大に負くることなし。是良将の兵法なり。兵を知らざる将は、幸にして大に勝つことあり、又大に負くること多し。是、良将の兵を用ふる法にあらず。さきがけをするも此心得あるべし。我一人深入すれば、幸にして手がらをすることあり。又やみやみと敵にうたるること多し。
-
『甲陽軍鑑』品第四十美濃殿程公事の理篇·批判致す人なきとの儀は、信玄公御工夫あさからず候へばこそ如此、さる間何方へ御馬を向られ、然も敵国へふかく働き有時も諸々の武士大小共に侍衆の事は不及申候、誠に雑人迄定て是はかつ事にてこそ御座あらめと思ひ、少もまくべきと存ぜざるは信玄公の智略賢くまします故如此、
-
『甲陽軍鑑』品第十三二番によくつよき大将の度々軍にかち、賞罰天地のごとく明らかなるは、異相に見へて人の怖るを心のいたらざる大将のまね給へば、短気に成り給ひ科もなき家老をねめしり、其外の侍衆をば少しの儀に誅し給ふ、明暮機嫌わろく老の異見も聞ず、むざと宮社頭の木などをきり、或はあら馬にすいて落てはあやまちをし、久敷煩ひ親類·家老·各内衆に機遣させ、蛇のすむ池などゝきゝては、かへてみたがり、又人にくゞらせ、我もくゞりて詮なきうでだてなされ候へば、其下の奉公人朝夕いひ事をして、少のことにもはらを立て近付き知音に、はをぬきて勝負もつかぬ喧嘩ずきいたし、せいで叶はぬ武辺などの時は人なみよりは内にして、それを苦にせぬ奉公人多し、
-
『甲陽軍鑑』品第十三右の静かなる大将を心のいたらざるあしき大将のまね給へば一段と遅怠候、此遅怠の大将の下にては、侍大小共に分別なくして分別だてを仕り、万事長々敷て埓あかず、又諸侍老若共に大事なきことを深く取成し、耳談合などをして、やうが鼻ましき人の分別をはなへ出すは無分別のみの時なり、
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る